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自殺を業務上と認定する基準と参考になる資料

 精神障害、自殺の業務上(公務上)認定に取り組むにあたって、認定基準とそれに関連する資料はどのようなものがありますか。

 過労自殺については、従来労災認定されることがきわめて難しく、行政の基準も明確な方針がありませんでした。しかし、ここ数年の過労自殺と労災申請の件数の増加により、行政もようやく真剣に取り組み、平成11年になって、認定基準が作成、公表されました。

◆認定基準としての行政通達

 民間労働者については、労働省労働基準局長(当時)の「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」(平成11年9月14日基発第544号。以下、「判断指針」という)の通達があります(巻末・参考資料②)。公務員のうち、国家公務員については人事院事務総局職員局長の「精神疾患等の公務上災害の認定について」(平成11年7月16日職補第237号)、地方公務員については地方公務員災害補償基金理事長の「精神疾患に起因する自殺の公務災害の認定について」(平成11年9月14日地基補第173号)の各通達があります。
 この三つの通達の基本的な考え方は類似しています。しかし、判断指針は、精神障害発症について具体的な出来事による心理的負荷の強度を問題にするのに対し、公務員の通達は、日常業務に比較して特に過重な業務に従事したこと等による精神的または肉体的負荷を問題にするなど、多くの点で相違があります。この本では判断指針を中心に解説しますが、公務上認定を取り組むにあたっては、人事院や地方公務員災害補償基金の通達を理解することが不可欠です。

◆認定基準の参考資料

 判断指針に関連して、労働省労働基準局補償課長(当時)の「判断指針の運用に関しての留意点等について」(平成11年9月14日事務連絡第9号)と、「判断指針の概要」の文書があります。前者は判断指針の留意点について解説しており、後者は業務上判断の手順についてフローチャートを添付するなどして具体的に述べられています。
 また「精神障害等の労災認定に係る専門検討会報告書」(平成11年7月29日。以下、「専門検討会報告書」という)は、判断指針を定めるに先立ち、労働省(当時)が精神医学、心理学、法律学の研究者に専門的見地からの検討を依頼し、報告書としてまとめられたものです。判断指針の基礎になる考え方が述べられており、その正確な理解のためにも必読のものです。
 この報告書の「参考三、ストレス強度の客観的評価に関する研究」にあげられたストレスについての点数評価は、判断指針以上に具体的なストレス評価をしています。

◆ICD―10「精神および行動の障害」について

 判断指針等の通達は、業務上の判断の対象にする疾病は、原則として国際疾病分類第10回修正(ICD―10といわれています)第Ⅴ章「精神および行動の障害」に分類される精神障害としています。被災者の精神障害がどの疾病名に該当するかを考えるにあたっては、ICD―10についての理解も大切です。『ICD―10 精神および行動の障害(臨床記述と診断ガイドライン)』(医学書院刊)が参考になります。

2011/10/01