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脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会 第3回議事録 01/02/05

第3回「脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会」議事録

日時 平成13年2月5日(月)
   10:00~      
場所 別館12会議室   

  

○座長
 「脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会」第3回を開催する。まず、事務局から提出書類について確認、説明をお願いする。

○事務局
 提出資料について確認、説明。

○座長
 検討に入る前に医学文献の収集状況について事務局から説明をお願いする。

○事務局
 文献については、約800を超える件数のうち、現在のところ、約450件収集したところであり、整理が終わり次第参集者にお渡しする。

○座長
 次に前回検討会の議事録について確認したい。

○参集者全員
 議事録承認。

○座長
 検討に入る。ドラフト作成に当たっての基本的な考え方などについて、検討しておきたい。
 まず脳・心臓疾患の認定の全体的な流れ、あるいは考え方については、労災補償の基本である業務起因性が明らかであることを前提にする。
 2つ目は、相当因果関係が必要であり、特に相対的有力原因と共働原因説ということで、いろいろ論議されているようであるが、相対的有力原因で判断する。その際、最大限努力してすべての業務上、あるいは業務外のリスクファクターを、医学的な思考過程で検討する。
 また、事業主の過失責任については考慮しない。
 過重性の評価をどういうように考えるかであるが、基本的に日常生活もそうであるが、普通の業務においても、当然血圧の上がることもあるであろうし、脳・心臓疾患に何らかの影響を与えるものではあり、これは一般の反応、自然歴というように考える。
 過重性による自然経過との関係については、基本的に2つの段階があるだろうと考える。1つは長期にわたって慢性、急性反復性の過重ストレスが加わることによる基礎的な疾患の形成過程があるだろうということ、もう1つはその発症のすぐ前に、何らかの異常な出来事があって、それによって発症してくるだろうということで、このような2つの過程を考えてはどうか。異常な出来事というのは、「急性のストレス」という表現ができるが、いわば発症の誘因という考え方になるのではないかと考える。長期の過重ストレスなどによる基礎的な疾病の形成で、それが積み重なってきたところへ、発症の誘因が加わって発症してくるという過程が、基本的な発症の病態的な流れではないかと考える。
 基本形は長期の過重ストレスなどによる基礎疾患の形成と、急性ストレスによる誘発によって発症する。場合によっては長期の過重ストレスなどがほとんどなく、急性ストレスが非常に強く働いて、自然過程を著しく超えて発症してくる場合もあるだろうと考える。また、長期の過重ストレスなどが非常に大きく、特にはっきりした誘因がなくても、発症してくる場合もあると考えられるが、基本は長期の過重ストレスなどプラス急性ストレスというように考えられ、これが業務起因性の基本的な考え方になるのではないか。非業務起因性の疾病に関しては、長期の過重ストレスなどが自然経過を著しく超えないように経過してきた場合、あるいは急性ストレスも一般に経験するような急性のストレスであれば、検討しなくてもいいだろうと考えられる。
 次に業務やストレスの量に関して、基本的にどのようにとらえるかということであるが、特に長期の過重ストレスなどの過程においては、疲労の蓄積があるかないかを、やはり基本に考えてはどうかということである。通常であれば睡眠を大体6、7時間取れば、その日の急性疲労は一応取れるだろうと考えられる。それよりもっと短いと疲労の蓄積を生じて、それが積み重なることによって、基礎疾患の形成をなしてくるのではないかという考え方である。これも当然、普通の範囲を著しく超えていることが、基本的な考え方として存在するし、肉体的、あるいは心理的の両方を考えるべきであろうというのが、基本的な考え方である。
 労働時間については、いままでの判例を見ても、まず労働時間というものを重視し次に修飾する因子が掲げられている。例えば拘束性があるとか、環境が非常に寒い所であったとか、そういう因子で時間を修飾しているような考え方で、全体的に判断していくという感じである。労働時間に関しては、これから文献をいろいろ調べて、基本的な時間をどの程度と考えたらいいかを、提示できればと考えている。いままで見た文献では細川や上畑らが提示しているものでは、週60時間以上の労働、あるいは週40ないし50時間以上の残業があると、非常に疲れるという訴えが多いなどという統計が、かなり出ているようである。
 もちろんILOの153号の条約や自動車の運転手の改善基準というものもあるので一応参考にできたらと考える。労働時間の目安を基本とし、詳しい就労態様や業務環境要因を具体的に考慮し、修飾していくという形を取ってはどうかと考える。
 特に慢性、急性反復性の疲労に関する期間については、3か月ないし6か月ぐらいを見て、そこを重視して、もしデータがあるようであれば、もっと長く1年ぐらい見てもいいだろうと考える。ただしこの期間を限定的に取り扱うものではなく、基本的にこういった考えでみてはどうかという考え方である。
 報告書の内容については、医学がベースになるが、それを一般の人にもわかるように解説するという形を取りたいと考える。
 対象疾患については、いままでは疾病列挙式ということで、疾病が列挙されているが、多くの法律や外国の法律でも、大体こういうようになってるが、できれば、脳・心臓疾患で、業務の過重性によって発症することが証明されている疾患のすべてを対象にするという基本的な考え方を取ったらどうかと考えている。
 平均的労働者については、日常勤務が可能な状態の基礎疾患を有する者を含めた、平均的労働者という考え方を導入するが、その際、基礎疾患の重症度のとらえ方というものが、非常に重要になるので、具体的に示すことを考えたい。
 また、最近では、労働者の自主的な健康管理ということが、非常に強く言われている。したがって、労働者の自己管理が十分でなかったことを、どう考えるかということが、非常に重要な問題として上がってくるが、基本的には、これを怠ったことによって、直接的に業務外にするということではなく、基礎疾患の程度として評価してはどうかという考え方である。
 医学的検討に当たっては、EBM(エビデンス・ベースド・メディシン)というものを基本にするが、現段階では、すべてを医学で判定できないものについては社会通念的、総合的な医学的思考過程で検討する。
 提言的な部分については、予防を重視し、健診の充実とか、事後措置の充実とか、産業医活動やその助言の受入れといったものを考えたい。以上、基本的な考え方などについて提言したが、検討をお願いする。質問があれば御発言いただきたい。

○参集者
 長期にわたる過重ストレスと異常な出来事がないと、業務上とはならないという考えか。

○座長
 基本的にはそうであるが異常な出来事となる急性ストレスが強い場合で、長期にわたる過重ストレスがほとんどない場合もあり得るという考えである。

○参集者
 長期間にわたる過重ストレスのみの場合も認める考え方か。

○座長
 そのような場合もあり得るということである。

○参集者
 考え方はわかったが、これまで何回か改定されてきた基準は、最初は当日でなくては駄目だとか、1週間以内ということだったのが、時間をだんだんだんだん延ばしてきた経緯については、どう理解するのか。

○座長
 いままでの考え方は、災害説を中心に考えていた。しかしながら、最高裁の判決その他を見ても、むしろ長い経過における過重性で、動脈硬化や高血圧といった基礎的な疾患が、どんどんどんどん悪くなって発症したものも認めている。医学的に言えば、それも当然のことであり、長い間の基礎的な疾患の形成というものも、これからはみていかなければならないと考える。
 また、どこまでの期間をみるかについては、実際にデータがある程度存在したり、もちろん長期にわたる過重性があって、少しずつ形成されると思うが、やはり最後の発症に関しては、6か月ぐらいのものを見れば、それがかなり強く寄与するのではないか、また、基本的にはそのぐらいの期間で考えて、場合によってはもっと長く考える必要が出てくることがある。発症の半年ぐらいの間のいろいろな過重が非常に重要になってくるのではないかということで、大体の目安として半年ぐらいを考えてはどうかというだけのことで、限定するものではない。

○参集者
 従来の考え方と違うのは、異常な出来事というものがなくても良いとすることだと思う。そう考えるのか。

○座長
 この辺の考え方をどうするかは先生、あるいは臨床家に心筋梗塞の発症や、脳卒中の発症の例を検討していただき、異常な出来事がなくても発症するものがあるかどうか、発症するということであれば、やはりそういうものも入れなければいけないのではないかと考える。

○参集者
 この検討会の趣旨も十分わかっているが、具体的な出来事がなくても良いとなると歯止めがなくなってしまうのではないかという感じがするが。

○座長
 あくまでも業務過重性ということが明らかに認められ、それが有力原因と判定された場合、認めてもいいのではないかと考えている。

○参集者
 6か月ぐらいで判断できるものと、6か月では判断できないけれど、もっと長くなれば、そのぐらいのこともあり得るということも考えるのか。

○座長
 6か月を超えるものも証拠があれば是非入れて、判断するという考えであり、限定するものではない。

○参集者
 以前は普通の健康な人のナチュラルヒストリーを基準に考えていたが、今後はやはり例えば高血圧症を持った人のナチュラルヒストリーと言うか、普通に就労していれば、この程度の経過だという大体の基本を決めなければいけないというのは、非常に難しいことである。いままでの判例を見ると、きちんとした治療をしている人を含めることを基準とすると理解してよいか。

○座長
 そうである。基礎的な疾患を有する人のナチュラルヒストリーを含めた過重性である。

○参集者
 現行の認定基準は、例えば最初は突発的な出来事、そこだけのことだったのが、少し前まで遡りましょう、1週間前まで遡りましょう、それがさらにということになって、ある程度決められた範囲を設定して、それ以内というように見ていたわけであるが、今後はこれ以内ではなく、それよりもっと長い範囲をみることになるが、ファクターも広くということで受けとめてよいということか。

○座長
 そうである。

○参集者
 極端に言うと、およそその業務に就いてから全部見るぐらい必要が出てくるのでない
か。

○座長
 そういうことにもなる。実際にそれを判定する人々に、ものすごく負担のかかることになると思う。したがって半年ぐらいでデータのあるところで見れば、大体推測できるのではないかとも考えられる。
 基本的な考えなどについて提言したが、いずれにしても前提としては、業務過重性が明らかに証明されたもので、有力な原因であったものが前提になるので、それだけは外さないでということである。

○参集者
 大きく拡大方向へ変わられたというニュアンスは理解できたが、臨床家から見ても慢性と急性の過重負荷は、非常に重要である。慢性がどちらかというとセッティングの状態で、急性がトリガーという考え方にするという考え方でよいか。

○座長
 概ねそういう考えである。

○参集者
 そうすると自然経過というものは、基礎的疾患の重症度に、大きく依存する。自然経過のところで判断をするときに、自主的な健康管理というものが、非常に重要になってくるのである。

○座長
 報告書のドラフトには、「脳・心臓疾患の自然経過と重症度の評価」という項目を、入れることとしているのは、そういったことを見て欲しいということであるが、労働者の自主管理に関しては、自主管理が十分でない場合は、かなりマイナスのほうに働いてもいいのではないかという考えを持っている。しかし、そこまでドラスティックにやるのは、非常に難しいのではないかとも考えている。自主管理を十分やっていなくて病気になってしまったら、それはもう労働者の責任と考えていいのではないかという考えについては、どう考えるか。

○参集者
 臨床家として考えると、まず重症度を判定して、その人の治療について、ライフスタイルの改善とか、薬の問題とか、あるいは非薬物療法を考える。その治療を怠り、予想される心筋梗塞などを起こしたということを想定すると、医者の指示を守らなかったことにより、労災になるということになる。

○座長
 薬を飲まなかったことによって血圧が上がったら、生活習慣と同じレベルで考えてはどううかと考えたが。ネガティブに考えてしまうと、非常に語弊を招く恐れがある。
 血圧が高くなってきたら、やはり生活習慣によって高くなってきたのと同じように考えてはどうかということである。判決を見ると、例えば薬を飲んで血圧が安定していたということだと、むしろそれを有利に取っている。業務の過重性があって血圧が上がって死んでしまったという表現がしてあり、ドラフトを書かれる時には、これでは齟齬が生じるということがあるようであれば、今後検討していただき、基本的な考え方を統一させていこうと思う。事務局から何かコメントはあるか。

○事務局
 補足的なことを申し上げると、治療をちゃんとやっていない、怠っていたというケースの話が、いま出ていたが、病気の問題とは違う話で、けがをしたというケースを考えると、わかりやすいかと思う。例えば建築現場において、労働者自身が非常に危険な行動を取ったために、業務上のけがをしたというケースは、それにより業務外という扱いをしているわけではない。
 法律上は労働者の重過失があった場合、支給制限をすることができるというケースがある。基本的に脳・心臓疾患について、業務上外を議論するときには、治療を怠ったことにより基礎疾患を悪くした、つまり業務外の原因の一部というようにマイナス要因として評価はするが、それだけで直ちに業務外というのではなく、それなりの評価をするという考え方である。

○参集者
 これは非常に大切な問題である。昭和36年の脳・心疾患の認定基準で認めるものは、災害であったが、その後の62年の改定では、「災害」というのは日本語の語感として、一般の風水害や地震といったものもあるから、変えたほうがいいのではないかということで、「過重負荷」に変わった。この過重負荷というのは、ある閾値以下の刺激では反応しないけれど、ある刺激が一定以上になったときに、初めて反応すると。そのピークに相当したときに、発症したものを認めようということであった。
 最初の36年の認定基準の24時間以内というものから、62年改正では1週間以内まで見たほうがよかろうということになり、平成7年の改正では、もし1週間以内に業務が相当程度過重であれば、それ以前の業務についても評価するというように変わってきた。やはり急性的なものが、最初から見てかなり大きな重要な要因として、判断されてきた。その要因があるから業務と関連のある発症が、人にも社会的にも認知されやすく、また、業務上疾病として認められるという理解が、得られやすかったのではないかと思う。
 慢性的なもののみで認められることは、私病である脳・心疾患が業務上疾病とすることについての社会的な同意が得られなくなることがありはしないかとも思うが。

○座長
 作業関連性疾患というのは、確実に定着している。その中には高血圧から心筋梗塞、その他全部が入ってしまっている。それと裁判の判決の動向を見ると、災害中心説からかなり離れてきており、長期にわたる残業が何時間だったとか、そういったことをすべて克明に調べて、過重ストレスがあったという判断をし始めている。したがって基本的な考え方としては、災害中心から長期ストレス、慢性疲労型へ、だんだん変わってきているという現状である。おそらくこれから10年経ったら、むしろほとんどそちらに行ってしまうのではないかという考え方もあり、ここでほんのわずか災害中心の考え方を取って、一旦延ばしたりしたぐらいでは、また改正する必要があり、時代の流れに沿っていないと思う。
 これは臨床の先生方の日ごろの体験から考えて、判断していただきたいが、やはり長年にわたる過重というものが基礎的な疾患で、しかもそれが業務によって明らかにきたものであれば、やはり認めるというのが、現在の医学的な考え方ではないかと思うが、臨床の先生方はどう考えるか。
 なお、この場合、私病を業務上とすることに対する危惧は、業務上の判断を正確に行うことと、本人の生活習慣、治療へのコンプライアンスなどの業務外のリスクファクターや基礎疾患の状態も十分に判断に加えることで防げると思う。

○参集者
 もっと基本的に疾病の発生を考えるときに、一般に内因と外因を考えるが、例えばごく普通の業務であっても、病気になりやすい人もいる。この内因と外因の評価に、もう一度立ち戻って判断する必要もあるのではないかと思う。

○座長
 その辺の判断の仕方は、やはり平均的労働者という考え方である。ものすごく過敏で脆弱性のある人で、ほんのちょっと負荷がかかっただけで発症してしまったものは、おそらく業務外になると思う。したがって、ある程度血圧の高い人も含めた、平均的な労働者というものを考えて、基本的にどのくらいの過重があったかという、その両方で判断しようというのが、特にこれからの裁判所の考え方になってきている。精神疾患のいまの判断では、非常に過敏性で非常に脆弱性のある人は、業務外の方向付けをしていることになっており、それは平均的な労働者からは、かなり外れているというように考えているのではないかと思う。
 心筋梗塞や脳卒中が発症するときに、驚愕とか異常な出来事があって、パッと発症する誘因になった例で、どのくらいの期間を見ておけばいいか、臨床的にはどう考えられるか御意見をいただきたい。

○参集者
 基本的には座長提案の時代の流れに沿った考え方に賛成であるが、日本の場合は特に脳梗塞の発症率は、心筋梗塞の3ないし5倍であるから、認定される疾患が死に至る場合だけではなく、一過性の虚血発作まがいのかなり軽い脳梗塞まで含めると、過重性の期間を半年なり延ばすことにより、労災で認定される数が相当増えてくるのではないかということがある。それから半年間の期間でみると、基礎疾患の部分と、業務の外因との両方がオーバーラップしてくる。例えば心房細動と労働時間という2つの要素が、6カ月間の間にオーバーラップしてくるので、明らかな業務起因性という判定が、かなり難しくなるのではないか。

○座長
 ある程度のところで割切りをせざるを得ないと思うが、それを一応明確に示せば、判定も非常にスムーズにいくものと考える。まず時間を考えて、残業が週何時間以上あったなら、かなり重視していいだろうと。それより少ない場合であっても、非常に拘束性があったとか、非常に寒い所でずっと働いていたとか、そういうものがあればそれを修飾して、もっと時間を減らしていくことができるのではないか。臨床から見ると、その辺は非常に曖昧だし、そんなに割り切れるものではないということは承知しているが、実際に判断するほうからすれば、ある程度割切りをせざるを得ないのではないかということもある。それが社会通念的に妥当で、みんながなるほどと思えば、それで良いのではないかと思うのである。どうか。

○参集者
 虚血性心疾患は、慢性進行性の病気であるので、過重度と期間というものが、すごく問題になる。概念的には、慢性的なものをみることは、正しいが、それを裏付ける臨床データが、臨床面であるかというと、非常に曖昧で、かえって混乱が出るという懸念もある。不規則な仕事を20年続けたら、それが心筋梗塞発症になるかならないかというと、過重度は軽度だけれど、長期間だからなったという議論も出てくるのではないか。

○座長
 ここ20年ぐらいは、そういったものがあっても、過去6か月なり1年ぐらいで、残業もゼロの全く普通の生活になってしまった場合には、臨床ではどう考えるのか。

○参集者
 それはあまり大したことにはならないのではないかと考える。

○座長
 業務とはあまり関係ないだろう、というように考えていいのではないかということなのか。

○参集者
 そう思うが、ではそれを規定したり、線を引くような臨床データがきちんとあるかというとないと思う。

○座長
 ある限りにおいては証拠を出していただいて、ないのであれば社会通念的に考えてはどうか。

○参集者
 6か月とか1年ぐらいというマックスをある程度決めるのも、1つの方法だとは思うが、多分EBMでは出ることはない。ちょっと違う争点になるが、心臓の方でいうと、急性ストレスは1週間よりもっと短くていいと思うが、むしろ長期にわたる過重なストレスが取れた後に、発作を起こす場合がある。逆に言うと、異常な出来事がないというだけではなく、むしろそこから解放されたときに起こる場合もある。

○座長
 慢性的なものによってほとんど発症してもおかしくないようなものが形成されていた場合には、やはり業務上と認めざるを得ないのではないか。

○参集者
 ものすごいストレスが取れたときも発作の誘因となる「自律神経の嵐」とも言われるが、その乱れは強い。それがどれくらいで落ち着くかというのも難しいが、2、3か月ということさえありうる。ほっとして落ち着いたときに発作が起こるというのは、理論的に、医学的にそういうデータがあるかというと、多分いままでないと思うが、臨床として経験することは、よくあるのではないかと思う。そういう意味でこういう認定の仕方は、あっても良いのではないかとは思う。それもどれぐらいを取るかというのは、医学的根拠はないが、2、3か月以内かなとは思う。

○座長
 突発的な出来事がない場合や非常に強い場合もあり得ると思う。基本的には、この2つで考えてはどうでしょうかということである。ただ両方が極端なときがあるという考え方である。

○参集者
 従来から見ると、直前に過重がなかったら認められないわけであるが、いままでこれで全部判断してきているわけである。今度、長期にわたる過重負荷があって発症したものまで業務上疾病として認めるときには、分かりやすく示さなければならない。
 裁判を通じていちばん痛感するのは、裁判官に分かってもらうことが必要であることである。認定基準については、監督署のレベルで分かりやすいものを作るという観点から、どういう表現にするかということも、非常に大切なことだと思う。

○座長
 それがいちばん重要になると思う。
 まだいろいろあるとは思うが、ドラフト作成のときにも、多分いろいろな疑問点も出てくると思うので、そのときに是非討議していきたいと思う。
 次に「検討報告書の目次の修正」についてまずは事務局からの説明をお願いする。

○事務局
 報告書の目次の修正について説明。

○座長
 目次については、必要に応じて修正していきたいと思うので、ドラフトを書いているときに、これはこうしたほうが良いのではないかということがあれば、ご提案いただきたいと思うし、基本的な目次として、現在はこのぐらいを考えておくということにしたい。
 次に特に対象疾患というものが問題になるが、新しい列挙疾病としてどのように書いたらいいかを、ご提案いただければと思うが、現在何か提案はあるか。

○参集者
 虚血性心疾患等の一次性心停止、狭心症、心筋梗塞症、解離性大動脈瘤、不整脈による突然死等という分け方は、日本の現状では難しい。これは1979年のWHOの分類から持ってきているものであるので、これを変えてはどうかということを考えるが、不整脈による突然死等というのを加えたときに検討された参集者から、一次性心停止と不整脈による突然死等を別に設けるのは、その当時から少し難しさはあったということも聞いているので、一次性心停止と不整脈による突然死等は、1つにして、「心臓性突然死」とする方向で検討していきたいと思う。

○座長
 わかりました。是非そうしていただき、ご提案いただければと思う。脳血管疾患についてはどうか。

○参集者
 心臓ほどあまり違いはないと思うが、脳血管疾患についても検討したいと思う。

○座長
 できれば次回までにまとめを出していただければと思うので、お願いする。
 それではドラフトの検討に入りたいと思う。今日は、「検討の趣旨」について検討したいと思うので、事務局は、朗読して下さい。

○事務局
 朗読。

○座長
 統計的な部分は、問題ないと思うが、基本的に災害から少し慢性的なものに重視するということ、業務の内容を具体的にいろいろ考えていこうということ、疲労やストレスという立場から、きちんと考えていこうということ、基準対象者として基礎疾患を有するような、日常業務が可能な平均的労働者にするということに変えるという記述は、今回の趣旨と一応一致する。医学的な進歩があって、こういうことが考えられるようになったという表現にしているが、どうか。基本はやはりEBMでやっていくけれど、現在100%ではいきませんということで、なるべく努力してそうしましょうということである。

○事務局
 時間的に見た場合、医学的に発症に近ければ近いほど影響が強く、発症から遡れば遡るほど、関連は希薄となるという部分について、これは今回の議論でも基本的な考え方としてよいのか。

○座長
 近いというのを、どの程度の期間見たらよいのかという問題もあるが、哲学的にはいいだろうと思うが、実際にこんなにはっきり言えるかという問題がある。現行の基準では、近いというのは1週間とか、そのようなところを見ているわけであるが、本当はもっと前のものが非常に関係してくるわけであるから、現在の考え方では、これは成り立たないと考えてはどうか。参集者からご意見をいただければと思う。

○参集者
 これはそもそも最初に災害、突発的な出来事という概念で、考えていたものであるが、例えば脳の場合で言えば、くも膜下出血にしろ脳出血にしろ、その直前とか1日前というものがあればということだったのであるが、いろいろな症例を見てみると、くも膜下出血も脳出血も、必ずしもそういう突発的な出来事が直前にある場合というのは、非常に少ないものである。そういう意味で必ずしも直前に近ければ近いほどというのは、外してもよろしいと思う。

○座長
 昔はこう考えていたというだけのことで、現在は取らなくていい。医学的に慢性的なものを考える場合、原則的にこういう考え方は、もう妥当しないと考えてはどうか。
 今回は、これで終わるが、こうしたほうが良いということがあれば、次回にでもご意見をいただければと思う。
 最後に、労働者支援団体からの要請について、事務局から説明をお願いする。

○事務局
 前回の検討会では、3つの労働者支援団体からの要望書等を、ご説明したが、航空関係の団体から、時差に関する報告の追加提出があったので、提出する。新聞関係の労働組合からも、要請書が提出されているので、併せて提出する。

○座長
 参考にしていただければということである。

○事務局
 参集者の関係で提言したい。既に参集者にはドラフトの作成をお願いしているが、法律的色彩の濃い事柄に言及せざるを得ない面もあるので、法律学者を参集者として検討に加えることを提言したい。

○座長
 基本的な労災補償の考え方、「業務起因性」や、「相当因果関係」という用語を用いることもあるので、その辺のところは法律学者が入って、きちんとしていただいた方がよいと考えるがどうか。

○参集者全員
 了承。

○座長
 ほかにいままでの全体的なことで、何かご提案、ご質問がなければ本日の検討会は、以上で終わりたいと思う。

照会先:労働基準局 労災補償部補償課 職業病認定対策室職業病認定業務第一係
    (内線5570)

2001/02/05