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「精神障害等の労災認定に係る専門検討会」報告書について(1999年8月4日第351回労働者災害補償保険審議会 議事録)

厚生労働省ホームページの審議会議事録のページより引用)

日時 平成11年8月4日(水) 10:00~11:15
場所 通商産業省別館第905号室
出席者
〔委員〕 公益者代表 保原会長、岩村委員、岸委員、野見山委員、松本委員
労働者代表 北裏委員、佐藤委員、高松委員、真島委員、松浦委員
使用者代表 宇田川委員、久保委員、桜井委員
〔事務局〕 伊藤労働基準局長、横田審議官、荒労災管理課長、笹川補償課長、安部労災保険業務室長、本川労災保険財政数理室長、田邉主任中央労災補償監察官、高崎企画官、石井職業病認定対策室長、原田調査官
議題

(1)「精神障害等の労災認定に係る専門検討会」報告書について
(2) 労災保険制度検討小委員会の設置について

議事

○ 事務局
 本日は労災保険審議会にお集まりいただきましてありがとうございます。本日の審議会は、委員の任期満了に伴う改選後初めての審議会でございます。慣例に よりまして、会長が選任されるまでの間、私が司会をさせていただきたいと思います。委員の任命の辞令につきましては、本来であれば大臣からお渡ししなけれ ばいけないのですが、失礼でございますが机の上に置かさせていただきます。よろしくお願いしたいと思います。
 今回の改選によりまして新たに就任されました6名の委員の方を私からご紹介させていただきたいと思います。公益側の委員につきましては、東京大学法学政治学研究科教授の岩村正彦委員でございます。

○ 委員
 岩村です。

○ 事務局
 北海道大学医学部教授の岸玲子委員でございます。

○ 委員
 岸でございます。

○ 事務局
 読売新聞社論説委員の松本斉委員でございます。

○ 委員
 松本でございます。よろしくお願いいたします。

○ 事務局
 公益側は以上3人が新しい委員でございます。続きまして、労働者側委員につきましては、全日本運輸産業労働組合連合会書記次長の高松伸幸委員でございます。

○ 委員
 高松でございます。

○ 事務局
 日本労働組合総連合会東京都連合会女性局副部長の真島明美委員でございます。

○ 委員
 真島でございます。よろしくお願いいたします。

○ 事務局
 労働側委員はお2人が新しい委員でございます。使用者側委員につきましては、社団法人全国建設業協会常務理事の桜井征夫委員でございます。

○ 委員
 桜井です。よろしくお願いします。

○ 事務局
 経営側委員につきましては、お1人が新しい委員でございます。なお、本日は金城委員、田中委員、高梨委員、早川委員、廣田委員については御欠席でございます。
 それでは、委員改選後最初の審議会ですので、最初に会長の互選をさせていただきたいと思います。会長につきましては、労働者災害補償保険審議会令第4条 におきまして、公益を代表する委員の中から委員がこれを選挙するということになっております。委員の方々に御提案、お考えがありましたらお願いしたいと思 います。

○ 委員
 これまでの当審議会の会長を務めていただき、会の運営に熟知していらっしゃる保原委員を会長に御推薦申し上げたいと思います。

○ 事務局
 保原委員を会長にという御提案がありましたけれども、御意見等はございますでしょうか。

(異議なしの声あり)

○ 事務局
 委員全員御異議がないようでございますので、会長は保原委員に引き続きお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○ 会長
 互選をいただきましたので、引き続き会長を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。最初に、会長代理の選出をお願いします。私といたしましては、引き続き野見山委員にお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

(異議なしの声あり)

○ 会長
 ありがとうございました。それでは、野見山委員、よろしくお願いいたします。早速、議事に入りたいと思います。本日は報告案件が2件でございます。「精神障害等の労災認定にかかわる専門検討会報告」につきまして、事務局から御説明をお願いします。

○ 事務局
 精神障害等の労災認定にかかる専門検討会の報告、先般、7月29日に報告を受けました。翌日、記者発表をいたしまして、7月31日各紙に大変大きく「過 労自殺」という観点から記事にされております。そのもとになりました専門検討会の報告概要について御報告をさせていただきます。資料No.1-1と資料 No.1-2、資料No.1-3、3つ1セットで資料に提出しております。専門検討会の報告自体は資料No.1-3、最後の資料でございまして、かなり分 厚いものになっております。本日は、その専門検討会の報告の中から主要な部分に限って御説明、報告をさせていただきたいと思います。
 資料No.1-1を御覧いただきたいと思います。この専門検討会の性格ですけれども、精神障害に関する労災請求事案につきましては、他の事項等と違いま して、病巣の発生が業務に起因するのかしないのか、これは大変難しい判断を迫られる事案でございます。そのような観点から、請求件数も、従来、数的には非 常に少ないこともありましたので、本省の方で全ての事案について個別に精神科医から構成される検討会にお願いをして業務上外を判断していく手法をとってま いったわけです。
 しかし、ここ数年、請求件数が大変増加いたしておりまして、本来、業務上外の認定は労働基準監督署長が行う姿になっているわけです。そういう観点から、 今後は原則に戻って省の判断に委ねることが、行政推進上、迅速かつ的確かなと、こういう観点で、省、監督署が業務上外の判断を行うに当たってどういう視点 でどのような形で判断をしていくのかという、そういう拠り所を策定する必要性が出てまいったわけです。そのようなこともありまして、平成10年2月に、精 神医学者、心理学者、法律学者から構成される検討会を設置いたしております。
 7月29日に報告をいただくまでに、全体会議16回、部会5回、都合21回にわたる精力的な御審議をいただきました。その結果が次の頁でございます。そ の前に、その下の<参考>という枠で括った部分を御覧いただきたいのです。これが、いまお話しした最近の労災請求の状況でありまして、平成8年から特に平 成9年、平成10年と40件台の申請がなされております。さらに、自殺案件というのがかなりの数にわたっているという、こういう状態でございます。
 次の頁をおめくりいただきますと、いま言った専門検討会の報告書の概要を記してございます。検討会報告のポイントですが、1つは対象疾病。業務によるス トレスによって精神障害を発病したという労災請求事案です。従来、医学的に精神障害というのは、内因性の精神障害、これは原因不明の精神障害です。それ と、何らかの心因に負荷がかかって発生する心因性の精神障害、こういう形に学問的に分類されております。そのうち、心因性の精神障害、これについて労災補 償の対象として業務上外を判定するという形をとっております。しかし、その後の精神医学会の進歩といいますか、医学的知見がかなり変わってまいりました。 今後においてはこういう区別をするのは適切ではないのではないか。したがって、原因はさておき、精神障害全体をまず労災補償の対象として土俵に上げるとい う考え方でいくのが妥当であるという報告を最初にいただいております。
 2つ目ですが、それではその精神障害の業務起因性をどういう形で判断していくのかということが課題になってまいります。冒頭に書かれておりますように、 業務によるストレス、業務以外のストレス、個体側が有する要因、これを総合して行うことが適切であるという、この原則について確認をいただいております。 その場合に、業務によるストレスはどうやって評価するのだろうという観点で4つの点について考え方をご報告いただいております。
 第1点は、個人があるストレスをどう受けとめたかではなく、同じ事態に遭遇した場合に同種の労働者はどう受けとめるであろうか。そういう客観的基準に よって評価されるべきものである。個々人の脆弱性といいますか、もともと弱い部分に着目してというのではなく、同種の労働者はどうなのだろうという視点で 評価をすべきであるということでございます。
 第2点は、ストレスの強度にはいろいろなものがありますが、これをできるだけ客観化して評価する必要があるということで、これまでストレス研究がいっぱ い発表されておりますが、これを基にいたしましてストレス評価表というものを作成いたしまして、これを用いて判断の客観化を図るのが妥当であると、こうい う報告をいただいております。
 第3点ですが、ストレスは、そのこと自体、心因的に大変負担を負うものですけれども、問題は、さらにある出来事が発生した後、一体その精神的ストレスが どのような状況になっているのか。出来事後の変化ををよく評価すべきであろうということです。つまり、相当ショッキングな出来事に遭遇いたしましても、例 えば上司、同僚、家族の支援というものがあればそのストレスの影響はかなり早い段階で消化することができる。そのような視点も見てみる必要があるだろう と、これが3つ目でございます。
 第4点は、長時間労働との関係でございます。これまでは精神障害の発生と必ずしもストレートに労働時間の長さが評価される形にはなっていなかったわけで す。長時間労働は過労や適応力・抵抗力の低下に伴う精神障害の準備状態を形成するのだと。こういうようにとらえまして、長時間労働とストレスの評価の関連 について配慮した評価を行うようにと、こういう報告をいただいております。
 3つ目ですが、精神障害による自殺の問題です。ここでの問題は、従来の現行法ですと労災保険給付というのは、「故意」に疾病にかかる、事故を起こす、あ るいはそういう出来事を誘発する出来事を「故意」に起こした場合、こういう場合には当然保険給付は行わないという規定、原則があります。従来、ここで言う 「故意」というのはどういう状態を指すか。精神障害に限って言いますと、いわゆる心神喪失、刑事的にも責任能力を問えない心神喪失である場合に初めて「故 意」が否定されます。自殺ですから、心神喪失の状態になければ「故意」があるものと見て処理をいたしておりましたが、最近の精神障害の医学的知見と法律的 な整理をいま時点で改めて行ってみますと、今後においては「精神障害と診断され、当該精神障害により正常な認識、行為選択能力が著しく疎外される、あるい は自殺行為を思いとどまる精神的な抑制力が著しく疎外されている状態、そういう状態で行われた自殺の場合には、それは病気の形としての自殺であって「故 意」によるものではないと解するのが妥当であろう」とこういう御報告をいただいております。
 もう一点は、遺書の存在が問題になります。遺書がある場合は、多くの場合は覚悟の自殺というかそういうことになりますと「故意」の問題が大きく浮かんで まいります。そのような観点から、遺書があるからといって直ちに「故意」があり、労災保険の対象にならないのだと、そう考えるべきではないのではないか と。考えてはいけないのではないかと。こういう御指摘もいただいております。
 先ほどの1枚目に戻っていただきまして、1の(3)でございます。この報告書を踏まえて、今後どうなるかということですが、私ども、この報告書に沿っ て、各労働基準監督庁の調査官あるいは署長が業務上外の認定を行うための事務的な処理要領といいますか、これを策定いたしまして、いま9月中を目途に作業 を進めております。各都道府県の労働基準局長に通達を発出して運用を図るという、このような状況になっております。

○ 会長
 ただいま事務局から精神障害等の労災認定にかかわる専門検討会の報告書について御説明をいただきました。ただいまの御説明について、御質問等がありましたらお願いします。

○ 委員
 よく読んでないので勉強不足なのですが、例えば自殺だけに限って、諸外国、アメリカとかヨーロッパ等ではどのような扱いになっているのか教えていただきたいと思います。

○ 事務局
 欧米諸国におけます精神障害に対しましては、自殺も含んでといいますか、精神障害あるいは自殺ということですが、労災補償制度が国によっていろいろ違い がございます。全く単純な比較はしにくいという面がありますが、おおむね三種類に分けられるのではないかと考えております。1つ目は、日常業務の中におい て発生する慢性的な心理的負荷による精神障害についてこれを認めるという国々。この中には、日常業務に比べて過重であることを要件とする場合とそうでない 場合とがあるようです。例えば、アメリカのカリフォルニア州などの18州、カナダのブリティッシュ州、コロンビア州などの多くの州、オランダ、スウェーデ ン、その他の国々があります。
 2つ目の区分としては、急性の心理的負荷、ストレスによる精神障害のみを認めるような国々、アメリカのテキサス州などの一部の州、カナダのオンタリオ州 などの国々があります。3つ目の区分といたしましては、精神障害を原則として認めないとする国々があります。イギリス、ドイツ、フランスなどがあります。 こういった状況でございます。

○ 委員
 オランダは労災補償制度があるのですか。

○ 事務局
 オランダの場合は社会保障制度一般の中に組み込まれている制度ですので、労災補償として休業補償などが出るのですが、業務に起因するか否かを問わないで、労働ができるかどうか、というだけで判断をする形になります。

○ 委員
 普通の病気などの場合でも、労働ができるかどうかという観点からの判断であって、業務上か業務外かという観点ではないのですね。

○ 事務局
 はい。これは1996年ですから、最近法改正がございました。

○ 委員
 3番目の「自殺の取扱い」の所で、1の(1)については理解できるのです。(2)の遺書の存在について、遺書があるからといって直ちに自殺、「故意」で あると判断すべきではないと書いてあります。遺書があっても「故意」ではない、「故意」であれば対象にならないということになりますと、遺書があっても故 意ではないというのは、具体的にどういう例を想定されているのですか。

○ 事務局
 例えば、報告書は資料No.1-3の41頁でございます。少し下のほうの(6)の「遺書等の取扱い」ということでございまして、簡単に申し上げますと、 うつ病にかかっている方でも遺書は書けるということです。そういうことで、遺書があるから直ぐ結論にはならないというようなことになるわけです。最後のと ころに書いてありますように、遺書の表現、内容、作成時の状況等が問題であるということで、「自殺に至る経緯に係る一資料として総合評価すべきものであ る」と、こういう報告でございます。

○ 会長
 こういう理解でいいですね。従来は、遺書がありますと、これは正常な判断能力があったのだというふうに推定され易い。したがって、遺書があると「故意」 ではないかと思われがちだけれども、今回の報告書では、遺書があるということは必ずしも「故意」であるということと結び付かないで、諸般の事情を考慮する 一つの要素として、そういうことの有無も考えるということですね。

○ 事務局
 はい。

○ 委員
 2点ほど。私どもは、作業形態が変化しているということとか、作業のスピード化という問題、職場における人間関係の複雑化等によりましてストレスが高 まっている、また、これにかかわる障害も増えているという、そういった実態なり傾向の中でこうした認定をされる、あるいはこういう研究、検討をして判断を 出されたことについては評価をしたいと思います。しかし、これが労災と認定するということであれば、労働災害の防止対策としてどのような注意点が出たか。 この検討過程で、こうした災害の発生を防止する施策としての知恵なり考え方なりが出されていないかどうか、という質問が1つです。
 もう1つは、家族といいますか、遺族に対するプライバシーの問題です。今、斜め読みでみますと、病歴とか家族歴とか、そのようなことも調査の過程では斟 酌されると書いてあるようですが、これにはプライバシーを守ることについてどのような配慮がしてあるのかということについて確認しておきたいと思います。

○ 会長
 今の2点、予防について何か検討をなさったかということと、プライバシーの問題をどのようにお考えかということです。

○ 事務局
 今回の報告書は労災認定ということを目的として御検討いただいたということでございまして、直接、予防対策までは盛られていないというのがこの報告書で ございます。ただ、行政サイドとしましては、今日は担当の部署が来ておりませんが、私どもで聞いておりますところでは、安全衛生部労働衛生課のほうで作業 関連に関する調査研究を5カ年計画で進めてきております。確か、今年度がその5年目ということです。この作業関連疾患はいろいろなものがあるのですが、本 年度までの5カ年計画の中ではストレス対策のようなものを中心に研究を重ねてきているということで、年度末には報告がまとまると考えられますし、その後 に、その結果に基づいた対策を検討することになるのではないか、このように承知をしているところでございます。
 2点目のプライバシーですが、この報告書の中にも記述をしていただいております。8頁には結論だけ簡単に書いてありますが、22頁のほうに数行書いてあ ります。読み上げさせていただきます。「精神障害の業務上外を判断するに当たって、患者周辺の者からの聴取を行う場合、患者のプライバシーに触れざるを得 ない場合もある。また、収集された資料の中には他の傷病に係る労災請求事案以上に患者のプライバシーに関わる内容のものが多く含まれる。調査に当たって は、患者のプライバシーの保護に十分配慮すべきである」と、こういう報告をいただいております。私ども、これから地方局に指示をする際にもこの点を十分指 示をしたいと思っているところでございます。

○ 会長
 私から補足させていただきますが、この審議会とは直接関係ないのですが、労働衛生課が事務局になって、現在、労働者の健康情報に関するプライバシーの研 究会というものが持たれております。これは、実質的には今月の末から、今月の末が第3回目ですが、たまたま、私が座長をしていまして、実質的には今月の末 から検討を精力的に行うことになっています。そのプライバシーの研究会では、こういう問題についても検討をする予定であります。これはこの審議会とは直接 関係ありませんけれども、たまたま、私が関係しておりますので追加的に御説明をさせていただきました。

○ 委員
 もう一歩踏み込んで。実は、職場経験の中で、家系として非常に気の弱い方がおられて、ストレスのたまり易い家系というのがあると思うのです。そうした場 合に、例えば兄弟とか親とか、そういうような人も同じような事故にあったとか、そういうような事態が生じた場合に、これは例えば遺族からの申請があって初 めてそういったプライバシーに関わるものまで含めて労災認定をするということなのか。それとも、事業主として業務の起因性、直接自殺という問題ですから、 工場の中でやられた自殺であればいろいろ取り沙汰汰されますが、全く別の場所で自殺という事象が発生した場合に、これは企業の責任で調査をして申請をする ということなのか。そこら辺り、非常に重要といいますか、機微に触れるところがあると思うのです。この報告書の中では、そういったものは事業主の責任で労 災申請をすべきだということになっているのか。それとも、いろいろな申請事例の件数が挙がっておりますが、申請されたときにその可否を判断するのにこれを 適用するということなのか。そこは基本的な部分ですから、研究会としての考え方についてお伺いしておきたいと思います。

○ 事務局
 事業主が労災を請求するような判断をすることはないわけです。基本的には、この保険制度そのものは、被災労働者の方、あるいはお亡くなりになっている場 合には遺族の方が請求されるという立場でございますので、事業場側は監督署の調査に対して協力をしていただく、というような位置付けになろうかと思いま す。報告書の中では、先ほど家系のお話が出ましたけれども、24頁に関連の記述があります。(5)の家族歴です。短いので読ませていただきますと「家族歴 は、プライバシーの問題等があることから、なかなか情報が得にくいものである。家族に精神障害にり患したものがあるということは、遺伝要因の関係から特に 重要な資料となるが、その価値は絶対的なものではなく、可能な範囲で情報を取り、参考資料とすればよい」と、こういう位置付けでございますので、私ども、 認定に当たりましてもこれに沿っていきたいと思っております。

○ 委員
 先程の質問と関連するのですが、予防という観点でどうかということよりも、予防という観点を含みながら、カウンセラーを置いて既にそういうことをやって いる事業所なりがあるわけです。そうしたカウンセリングが行われているにもかかわらず、こういう事態になるということはあり得るわけです。そのようなこと について、どのように説明したらいいか、程度というものがあると思うのです。その辺りの判断をどのように取り入れているのか。要するに、単純に発病する、 り病する、自殺に至るという過程で、職場が一定の対応をしていたとか、そういうことについてどのような記載があるのか説明をいただきたいと思います。

○ 会長
 これは労災の認定との関係ですか。

○ 委員
 そうです。

○ 会長
 例えば、労働者が自殺をしたという場合に、その自殺に至る過程で企業の中でカウンセラーがタッチしたとか、そういうことと認定がどう関わるかということですか。

○ 委員
 そういうことです。

○ 事務局
 他の業務上の疾病もそうですけれども、職業性疾病といいますか、予防対策を打っている中でも出てくることがございます。予防対策ができていたとかできて いなかったとかということとは別に、認定といいますのはそもそも業務に起因したものであるかどうかを見極めるのが仕事でございます。予防対策の有無を問わ ず業務に起因したものであるかどうかを検討するというのが認定かと思っております。

○ 会長
 お聞きになっていることは違うような。

○ 委員
 少し雰囲気が違うのですが、そういうことでしょうね。

○ 事務局
 報告書の35頁に関連の記述がございます。いちばん下の「支援・協力等による出来事のストレス程度の緩和」という項目があります。同僚とか上司とかの支援があればストレスの程度は少し緩和されるはずだという立場にこの報告書は立っております。

○ 会長
 委員のお聞きになっているのはこういうことではないですか。企業の中で自殺者が出た場合に、事前にカウンセラー等がその自殺をした人にタッチをしている と、労災の認定に当たって、そういうようなカウンセラーの意見とかをどういうように評価するのかということなのでしょう。

○ 事務局
 報告書の中では、22頁の上から8行目からのなお書に関連の記述がございます。「産業医の意見は大いに参考となるので、是非とも意見を求めるべきであ る」というようなことがありますので、産業医以外でも、いまお話のあったカウンセラーの方が御指導されているようなことがあれば、その方から状況をお聞き するということはあり得ると思います。ぜひ行うべきであると思います。

○ 委員
 差し当たっては結構です。

○ 委員
 これから通達をおつくりになるということですが、1つお聞きしたいのは、通達に従って精神障害についての業務上外認定をするに当たって、大体、どの程度 の処理期間を見込んでいらっしゃるのかということです。これは、多分、急性の心臓疾患の業務起因性の判断以上に微妙で複雑な判断になるのではないかという 気がしますので、その点について、もし何かいま方針がある程度おありであればお聞かせいただければ、というのが第1点です。第2点としては、おつくりにな る業務上外の認定基準で、大体どの程度の比率で業務上と判断することを見込んでいらっしゃるのかということです。これは、これからお考えになるので難しい ということであればそうなのかもしれませんが。

○ 会長
 業務の既往率ということですか。

○ 委員
 これは、なぜそういうことが気になるかといいますと、今回、こういう報告書が出て、9月を目途にして通達が出るということになりますと、従来以上に精神 障害、さらに、自殺についての労災認定請求というのが出てくると思います。そのときに、通達に従った判断によって、業務上の認定が意外と厳しいと、結局、 行政訴訟にいくことになって、行政側が負けるというケースが続出すると、認定基準を変えなければいけないという話につながるのではないかという懸念を若干 持っているからであります。
 これは、御承知のように、急性の心臓疾患については既にそういう歴史を繰り返してきたわけです。その点、今回、新しく基準をつくるに当たってどのように 行政側としてお考えになっているのかということを、もし既に何らかのお考えがあればお聞かせいただければと思います。

○ 事務局
 第1点目の処理期間に関することですが、これまでのやり方は、先程事務局から御説明申し上げましたように本省で検討してまいりまして、その実績が、1件 当たりの平均処理期間、約1年8ヵ月でございます。今後は、通達を出すことによりまして、これまで以上に迅速な処理ができるものと考えているところですけ れども、通達を出した後は、職員研修の充実なども図りまして、迅速な処理に努めることにしているところでございます。処理期間の今後の見通しとなります と、しばらくやってみないことにはどれぐらいの期間まで縮められるということは申し上げにくいということです。
 2つ目の比率につきましては、大変難しい質問でございますが、先程の説明にありましたように、いくつかの点で拡大する方向になっております。例えば、対 象とする精神障害の範囲を見直して、実質の範囲が拡大をするという部分がありますし、自殺事案につきましては、「故意」の要件の見直しを図ることによって 実質的に救済の範囲が広がるであろうと。従来、あまり重きを置いておりませんでした長時間労働につきましても、今後の判断は十分に配慮をしていくというよ うな方向でございます。今回、これらの考え方を採用することにいたしておりますので、まだ結果が出ないうちから申し上げるのはいかがかと思いますけれど も、おそらく、私どもの予想といたしましては、結果的には従来の個別の場面で示してきた考え方の取扱いより広くなる、ということで認定件数が増えるという ふうに予想はしているところです。具体的な件数までは申し上げかねるところでございます。

○ 委員
 今度の判断に当たって、業務に伴うストレスと業務以外のストレスがあって、これはまだ詳しく見ておりませんが、新聞などを見ると業務外、職場以外でのス トレスなどの解説をしておりました。その要素が、業務上外の判断の中で、職場外でもストレスの強いものとか弱いものがあるらしいのですが、それがどの程度 かかってくるのか。その判定の中のウェイトといいますか、それをどのように考えていらっしゃるのか。非常にやりにくいことだと思いますけれども、これから 指導をしていかれる場合の基本的な考え方でも結構ですが。

○ 事務局
 資料の中では、報告書ですと13頁から15頁にかけまして、別表1が職場におけるストレス評価表、15頁が職場以外のストレス評価表という、これはいろ いろな研究を総合してこの専門検討会が独自につくった平均的な労働者のストレス強度の表でございますが、この表を基にして判定をしていくということになり ます。この表の中ではストレス強度という欄がありますが、大きく3区分に分けました。14頁の注書の所にありますが、ストレス強度3というのがいちばん強 いもので、1が弱いものでございますが、これは平均的な位置付けはこれぐらいだというもので示したものです。これを基に判定をしていただくということにな るわけですけれども、具体的な手法といたしましては、職場におけるものもそれ以外のものも含めて調査いたしたものを、精神科などの専門家に複数で合議をし ていただいて判定をしていただく。これを基礎にいたしたいというように考えているところです。

○ 委員
 よく分からないのは、業務によるストレスに職場外のストレスは加算要因になるのか。あるいは、業務上のストレスと業務外のストレスを比較して、業務上の ストレスよりも業務外のストレスのほうが大きかったと、そういう比較でもって業務上外の判断になるのか。総合的判断というのは、加算要因としてなるのか、 あるいは比較をすることの要素なのか、その辺がよく分からないのです。

○ 事務局
 個々の事例は、当然ながら、両方の問題があれば、両方のストレスが合わさって発病に至るというのが現実の姿であろう、というように推定されるわけです。 労災認定は、御承知のとおり、業務起因性があるかどうか、という観点で判断をいたしますので、業務によるストレスと業務以外のストレスを区分けをして、ど ちらに重きがあるかということで判断をするのは当然でございます。

○ 会長
 例えば、業務外のストレス強度3というのが2つあると。本人が重い病気をしたと。本人が離婚した、あるいは子供が死んだというのはストレス3です。そう いうものがあると業務外という認定のほうに点数が多くなるのか。まだそういうことまでは言えないということなのか。

○ 事務局
 そこまで具体的になりますと、回答しにくいところがございます。ストレス強度が3のものがいくつかあるとか、複数ある場合ももちろんありますし、職場以 外の家庭生活のような問題も当然ありますので、具体的にどちらに重きを必ず置くということではないわけでございます。あくまで、業務上のストレスと業務以 外のストレスを比較評価する以外にないと思っております。

○ 会長
 大ざっぱに言えば、業務外のストレスが0の人と、強度3が2つも3つもあるという人では、業務外の強度3をたくさん持っている人は自殺をした場合でも業 務上とは認定されにくいということになるのでしょうね。しかし、これは総合判断ですから一概には言えないでしょうけれども。しかし、私は単純に言っていま すけれども、そんな単純なものではなく総合判断ですから、極端なことを言えば、そういうことにならざるを得ないのでしょうね。

○ 委員
 業務上、あるいは業務以外の受けとめ方なのですが、評価表の中に金銭関係で収入の面があるのです。賃金という位置付けで見れば、会社から業務に起因して 発生する賃金という位置付けがどちらに属するのか。減収という意味で、特に昨今いろいろな意味で不況の折、会社からの支払い、減収という部分に起因する自 殺というものも増えているように聞いていますので、その辺、どういう受けとめで整理されているのか、あればお聞かせいただきたい。

○ 事務局
 このストレス評価表の別表1は職場におけるストレス評価表ということで、賃金の問題であれば、当然、職場におけるストレス評価表の中で評価をすることになります。
 少し加えて申し上げますと、別表1の中には、職場におけるストレス評価表と書いてありますが、実は、場合によっては職場においても業務とは言えないもの が一部含まれておりまして、必ずしも明確な区分ができていない部分があります。要するに、場所を分けたというだけでありまして、逆に言いますと、職場以外 のストレス評価表、別表2のほうにもそれに近いものが入っているということがあり得ます。これは、業務と業務以外を分けたのは場所的に分けただけというこ とですので、相互に混じり合いがあるということです。

○ 会長
 ただ今の御質問は、例えばリストラで賃金が半分になってしまったというのは職場でのストレスは高いところにあるのではないか、というような御質問ではないかと思うのです。

○ 事務局
 評価のレベルですか。

○ 会長
 あるいは、ここで言うと具体的な出来事のどこかに入るわけですか。

○ 事務局
 このストレス評価表はすべての事象を記載できるものではございません。注意書にもありますけれども、いろいろな対応が起きた場合に、このストレス表のど この部分に近いかという整理をした上で見ていくと。したがって、いまの賃金の減少の問題を考えますと、勤務形態の変化とか、いろいろな要因の1つとして出 てくるわけです。その起こった状況を見て当てはめるということにならざるを得ない。すべてのことについて載っていないとどこへ行くか、この辺はどうやって 整理するかは通達で考え方を示していくと、こう考えています。

○ 会長
 33頁を御覧いただきたいと思います。いま事務局から教えていただきましたが、33頁の3つ目ぐらいの所で、「第一に職場のルールに基づいて」というこ とで、例えば賃金等というのがありまして、そういうものも考えますよということは一般的には書いてあります。

○ 事務局
 ストレス要因としては、一般的には評価の対象にしないということです。

○ 会長
 一般的にはむしろしないということですか。

○ 事務局
 一般的な問題としては評価の対象にしないのですが、いまおっしゃったように、リストラで極端な場合をどう考えるかということについては、ストレス評価表 の中には必ずしも書いてないのです。一般的には評価の対象にしないという位置付けになってはいますけれども、いまお話があったようなケースについてどう考 えるか、という問題は出てくるかもわかりません。

○ 会長
 昇給とか昇進とか、何か、良いほうはあまり評価しなくていいのですが、降格とか、落ちる場合ですね。

○ 事務局
 一般的には、上がった場合は誰もストレスにならないわけです。

○ 会長
 反対に下がった場合です。

○ 事務局
 能力が落ちるから賃金を下げられたという、そういうようなものも一般的にはならないという判断にしているのです。ただ、いまおっしゃったように、リスト ラで極端な貸下げがあった場合、そういうものをどう考えるかということについては今の部分については多分入ってこないと思います。この職場におけるストレ ス評価表というのはあくまで例示ですので、どこかに類推して今のようなものを評価するということも必要になってくるかも分かりません。

○ 委員
 今の件ですけれども、例えばその職場、会社で全体的に賃金カットが行われて、1人だけが自殺をしたと。ここのいちばん初めに書いてあります「同種の労働 者がどう受けとめるか」というようなところからいくと、1人だけの判断で、そうなると該当しないのかなと思うのです。その前段の文章ですけれども「業務に よるストレス」と、先ほどの指摘と一緒なのですが、「業務と業務以外と個体を総合して判断する」となっており、この総合というのが分かりにくいのです。業 務以外の要因は差し引いて考えるのか、その辺が分かりにくいのですが。

○ 事務局
 先程御説明いたしましたように、判断に当たっては複数の医師による合議ということを特に強く言っていますのは、いまお尋ねのようなことがいっぱいあるの だと思うのです。私的な要因と業務上の要因と同じぐらいの比重であったとか、いろいろなパターンが出てくる。これを医学的に見てどう判断するのか、という ことになりますと、医師の考え方がどうしても重視される。それが前提になるのだと思うのです。監督署の職員はその医師の判断を的確にいただくために、先程 のようなストレス表をつくり上げる。そのための必要な調査を実施するわけです。
 したがって、こういうパターンは上か外か、こういうパターンは上か外かこういう形でいろいろな事例をお尋ねいただいてもなかなか右、左とはいかないのか なと。もしいくものであれば、複数の医師の合意も必要ないのかなと。精神障害の持つ特殊性というか、そういうことに起因するものだと思っています。した がって、先程から回答の歯切れが少し悪くなりますのは、どこまでも精神障害の場合には根っこに医師の判断があるのではないか、そういう観点で、行政として 右、左と言いきれないというようにお考えいただければと思っているのです。

○ 委員
 具体的事例というか、考え方なのですが、精神障害の業務起因性の判断という所で、「業務起因性の判断に当たっては、業務によるストレス、業務以外のスト レス及び個体側要因を総合して行うことが適切である」とされています。この総合してという考え方は、先程は業務起因性を主体にして、そのほかは補足的に参 考的に判断をするのだという感じに受けとめたのですが、それでよろしいかどうかということです。

○ 事務局
 労災認定の基本といたしましては、業務が相対的に有力な原因であるかどうかという相対的有力原因という考え方を持っているわけです。したがって、業務以 外の要因も、単に参考というだけではなくて、比較をして相対的に業務が有力と言えるかどうかという観点で判断をすることになります。

○ 委員
 それに関連してですが、こういういろいろな分析によりますと、業務によるストレス、業務外ストレスを区分けされることはいいと思いますし、そういう分析 をされたと思います。これを受けて最終的に判断をされる場合は、むしろ、業務におけるストレスの度合いが1段階、2段階、3段階、それがどう複合している かということのみで判断されるのではないでしょうか。

○ 事務局
 13頁の別表1の使い方ということになろうかと思うのです。基本的に、発病前に何らかの大きなストレスがあったという出来事に着目することから始めるわ けです。その出来事のストレスがどの程度であったか、ということを評価するのが1~3の段階分けです。この表は、先程から申し上げておりますように例示で すので、個々の事例においては3の所に☆を付けた項目であっても、個々の事例においては実際には少し弱かった、2のレベルであった、というような評価をす る場合もあります。2の所に☆が付いているものにつきましても、この事例は特にストレスが大きくて3に評価すべきだと。これは変更することができるように なっていまして、どのような変更をするかといいますと、(2)の「直面した出来事を評価する視点」という項目がありますが、この項目を参考にして変更する 必要があるかどうかなどを検討するわけです。そういうことで、具体的な出来事のストレス強度を評価した上で、出来事といいますのは、その後にさらに仕事で 大きな失敗をしたということが出たときに、その後どのようなフォローをしなければならないか。その後にまつわる変化とか、いろいろと出てくるわけですの で、そういった後に出てくる事柄、変化する事柄についても評価しなければならない。それについては、この表の(3)で、「(1)の出来事に伴う変化を評価 する視点」とありますが、こういう視点を見て、労働時間が特に長くなったような事実がないかどうか、そういうようなことを調べたりして、その変化も追って いく。この(1)、(2)、(3)の流れを追って、総合評価を弱中強と判断しまして、総合評価が強とされたものが、基本的には業務起因性があり得るという ことで考えるわけです。

○ 委員
 総合評価自身も、いわば業務上におけるストレスがどれだけあったかということが判断になるわけですね。先程、業務上外を総合的にと言われている意味は、 総合的に分析をしていろいろなストレス要因を把握した上で純粋に業務上のストレスの内容はどうだと、それを全体評価すると度合いとしてはどうだ、というこ とをされるという意味ではないのでしょうか。

○ 事務局
 総合評価がいくつかの中に出てきてしまっておりますが、別表1について申し上げましたのは、正に業務におけるストレスを弱中強の3段階で評価する。それ が最終的な業務ストレスの評価でございます。先ほど申し上げましたのは、この業務ストレスのほかにプライベートな業務以外のストレスもあり得るので、そう いうものがあれば相対的にどっちが有力かを総合判断するという意味の総合判断も入っております。

○ 会長
 問題を明確にするために、今おっしゃったことは、要するに、業務外のストレスというのは本質的に関係がないわけですね。後ろの表の「職場以外のストレス の評価表」というのはあくまでも参考だと。したがって、前のほうの「職場におけるストレス評価表」を中心に判断するのだけれども、その際に、具体的な事象 を判断する場合にそこに辿り着くいろいろな手法として職場外のストレスというものを見極めて判断をするという意味である、業務起因性云々の判断というのは あくまでも職場におけるストレス評価表でするということだと思います。

○ 事務局
 報告書の20頁にその辺の判断があるのですが、20頁の(3)です。ここに、今問題になっているような業務上のものと業務以外のものを総合的にやる必要 があるということが21頁にかけて書いてあります。21頁の3行目ぐらいの所ですけれども、「請求者の労災請求事案が業務起因性がある労災として認めるか どうかについては、当該精神障害の発病において業務によるストレスと業務以外のストレス、個体側要因を総合的に判断して行う必要がある」とあり、いちばん 下に書いてありますように、こういった「判断に当たっては、複数の専門家による合議等によって判断される必要がある」と。先程から御説明申し上げているよ うに、どちらが原因かというのは難しいものですから、「専門家の委員の先生方に聞いた上で総合的に判断をする必要がある」とこのような指摘が報告書で行わ れています。

○ 委員
 従来上がってきた、この精神障害に係る事案というものを本省で扱っておられていかがでしょうか。一般的な傾向としては、いわゆる複雑事案であるとお考え でしょうか。つまり、非常に微妙な判断が要求される。業務外の事情も、家族関係とか、そういうものも考えなければいけないとか、そういう複雑事案であると いうふうに見ておられるのか。

○ 事務局
 そのように思っております。

○ 委員
 その点との関係で、若干、先ほど申し上げたことと関係するのですが、いちばん最初に御提出いただいた資No.1-1で、「第一線機関が迅速・適正に処理 するための判断のよりどころになるものを策定する」ということで通達をおつくりになるようですが、先程から伺っておりますと、結局、全部総合判断であると いうことになっている。そうすると、今までの例えば急性脳心臓疾患における業務上認定の在り方とかを見ておりますと、総合判断に持っていってしまうと迅速 というふうにはいかないのではないか、というのが私の印象であります。
 これは、通達をどうつくるかというのは非常に微妙な問題で、行政の立場もおありでしょうから何とも言えないのですが、総合判断にいかない例というのを考 えるのも一つの手ではないかという気がします。この場合は総合判断ではなくて業務上外を見てしまう、ということを考えるのも一つの考え方としてはあるよう に思います。それは従来の認定の在り方と大きく方向を変えるので難しいかとは思いますけれども、そういう考え方もあると。

○ 事務局
 職場以外のストレスの要因評価という点については、報告書の36頁の(6)で書いております。「一般的に職場以外の出来事が明らかになることは余りな い」という、そういうような評価をしております。「したがって、労災請求事案の業務起因性を考えるときは、先に述べた職場におけるストレスが当該精神障害 にどのように関与したかを客観的に把握して決める以外にないが、職場以外の出来事が明らかになった場合には云々」ということで総合的な判断という形です。 若干、ニュアンス的には、職場以外の要因はなかなか分かりにくいということを前提に、その場合には職場におけるストレスといったものを中心に評価すると、 このようなニュアンスが出ております。

○ 事務局
 「過労死」のケースは、正に、今、委員がおっしゃったとおりの経過だったのです。これも、通達を改定したりして、何とか現実のニーズに則するようにして きたつもりでございます。その間、第一線を含めて非常に苦労があったのですが、これも、そういう意味では、基本的にはできるだけ労災認定を認めたいという 気持なのです。しかし、あくまでも申請が出れば全部認めるというものではありませんので、広く認めたいのだけれども具体的な判断の目安になるものが必要だ という考えなのです。これで実際の通達をつくって、またいろいろと問題が出てくれば改めたいと思うのですが、おっしゃったように、もちろん限界がありま す。
 ただ、裁判所の場合は、御存知のように、業務起因性以外に、自殺に至るいろいろなプライベート、例えば不倫であるとか借金であるとか、そういうことも十 分に証拠調べをして認定する可能性があります。行政のほうは、現実問題として、そこまではなかなか踏み込めない。そうすると、限定的な範囲の中で最大限運 用しなければいけないという問題は残ると思うのです。ただ、これもいろいろな蓄積をしまして、基本的にはこういったことを契機として自殺に対する労災認定 を広げていきたいということには変わりないわけです。翻って、基本的にその申請が出てくれば、原則として業務起因性ありという前提で、行政側が反証を持っ ていなければ直ぐ認定をしてしまうという方法もあるのでしょう。原則として認定をする、例外だけ許容する、そこまで行くにはまだ少し距離があると思いま す。

○ 会長
 例えば、自殺に関する民事訴訟などを見ても、100パーセント損害賠償請求が認められる事例はほとんどなくて、過失相殺というのですが、実際は本人側の 事情がかなり考慮されて、むしろ、5割認められるとか、そういうのも少ないぐらいです。それが何を意味しているのかというと、仕事がどの程度寄与したかの 判断というのは非常に難しい、本人の側にも事情がある場合が相当あるということでありますので、民事訴訟と行政上の業務上外の判断というのはかなり違いま すけれども、ある程度は割り切っていかないと。先程委員がおっしゃったように、場合によっては「過労死」よりももっと難しい、認定にもっと期間がかかるよ うなことになりかねないと思います。特に御意見がございませんようでしたら、この問題は今日は終わりにしたいと思います。報告案件がもう1つあります。労 災保険制度検討小委員会の設置についてでございますが、事務局か説明をお願いいたします。

○ 事務局
 資料の後ろから2枚目でございます。実は、労災保険制度検討小委員会の設置につきましては、前回の7月28日の本審議会におきまして決定をいただいてお ります。新しい委員の方もいらっしゃいますので簡単に御説明させていただきます。私どもとしては、こういった小委員会を本審議会の中に設置していただきま して次のようなことを御検討いただきたいと考えております。一つは、「趣旨」の所でございますが、労働福祉事業の安定的運営を図るための事業の在り方、特 に、限度額の設定方式について御検討いただきたいと考えております。もう一点としましては、生活習慣病といったものが最近増えているわけですけれども、そ ういったものが業務によって増悪し、最悪のケース、いわば「過労死」に至るというようなケースが増えております。こういった「過労死」の発生を予防し、労 働者の健康確保を支援するための労災保険上の措置について御検討いただきたいと考えております。併せて、平成6年の建議においても検討課題とされた事項等 について御検討いただきたいと思っております。
 1枚おめくりいただきまして、具体的な小委員会の設置につきましてはこのような形で前回御承認いただいております。委員につきましては、公労使それぞれ 3名ずつで組織するということです。小委員会の委員には審議会委員の中から、小委員会の座長は審議会委員のうち公益を代表する者の中から審議会の会長が指 名をするというような形になっております。さらに8番目ですが、小委員会委員以外の審議会委員も小委員会に出席し発言することができるというようにされた ところでございます。小委員会の設置につきましては以上でございます。

○ 会長
 労災保険制度検討小委員会の設置につきましては、今事務局から御説明がありましたように、前回の審議会において了承をいただいているところでございま す。当小委員会の委員につきましては会長が指名することになっておりますので、公益委員につきましては次の3人の委員にお願いをしたいと思います。法律関 係に詳しい岩村委員、医学関係にお詳しい岸委員、労働行政等にご経験が豊富な野見山委員、この3人をお願いしたいと思います。また、労働者側委員及び使用 者側委員につきましては、委員の御推薦をいただいております。それに基づきまして、労働者側委員としまして佐藤委員、田中委員、松浦委員。使用者側委員と しまして、宇田川委員、久保委員、高梨委員にお願いしたいと考えております。よろしいでしょうか。小委員会の座長につきましても会長が指名することになっ ております。御多用中大変恐縮ですが、野見山委員にお願いしたいと思います。
 こちらで用意した報告案件は以上でございますが、今日ここで審議しておくべきことがありましたらお申し出ていただきたいと思います。ないようでしたら、本日の審議会はこれで終了したいと思います。ありがとうございました。

照会先 労働基準局労災管理課

1999/08/04