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労災保険の民営化論が浮上/総合規制改革会議が提起/労働者へのしわ寄せは必至 【連合通信・隔日版】

  労災保険を民営化しようという論議が進められている。政府の総合規制改革会議が十月七日、第三次答申の「十二の重点検討事項」に追加することを決めたためだ。厚生労働省は「かえって非効率になる」「公正な労災認定が難しくなる」と反論しているが、同会議は民営化論を押し進める考え。労働行政の一層の後退を招くのではないか、と心配する声も出始めている。
  労災保険の民営化論が浮上したのは今年七月。同会議の構造改革特区・官製市場改革ワーキンググループ(八代尚宏主査)が新たな検討項目としてあげた。保険への未加入者の増大や不透明な保険料率などの算定根拠、労災病院など労働福祉事業の経営効率悪化を理由に、自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)と同様の方式にすべきとした。損保会社への全面的な委託や事業移管を提起したのだ。
  厚生労働省のヒアリングを経て、十月七日の同会議で「十二の重点検討事項」に追加する五項目の一つとして「労災保険及び雇用保険事業の民間開放の促進」が盛り込まれた。
  正式には、年末の第三次答申で打ち出される。

●自賠責方式でいいか
  同会議は「国等の独占又は寡占等により温存された官需を民間に開放し……飛躍的に民需の拡大を図ることが喫緊の課題になった」としている。
  一方、厚生労働省は同会議のヒアリングで、労災保険の自賠責保険方式化に伴う問題として?@制度運営が非効率になるおそれが大?A保険加入を担保する仕組みをとることが困難?B多種多様な災害に対し公正な認定を行うことが困難となるケースがある?C労働基準監督行政・安全衛生行政との一体性(の崩壊)──といった点を指摘している。
  効率性の問題では、自賠責保険の場合は代理店手数料や保険会社の経費などがかかることから、収入に占める事業運営経費の割合は十二カ月契約で三二・六%。一方、今の労災保険だと五・二%で済むとしている。
  労災の種類によっては認定業務は複雑になり、全国的に公正・公平な認定を損保会社で行うのは困難。事業場への立ち入り調査権限を持つ監督署は、タイムカードなどを検査できるが、保険会社が顧客企業に強制調査できるかどうかは疑問視される。労災保険の申請を機に監督署で「労災隠し」を発見することも少なくない。
  労災職業病や職場の安全問題に取り組んでいる団体からは「今でも過労死などの労災認定プロセスは不透明。民営化されると、そのプロセスがもっと不透明になるのではないか」との声があがっている。
  労働行政が後退すれば、そのしわ寄せは働く者が被ることになる。
「連合通信・隔日版」

2003/10/21