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働き方ネット大阪-結成総会報告 弁護士 高橋 徹(民主法律時報412号・2006年10月)

弁護士 高橋 徹

1 2006年9月28日(木)午後6時30分から、エルおおさか南館5階ホールで、「ストップ・ザ・エグゼンプション!働き方を考える大阪ネット(略称:働き方ネット大阪)」の結成総会が開かれました。当日は、約180名の参加者を得て、大盛況でした。以下に、結成総会の様子をご報告します。

2 まず、最近岩波新書から「働きすぎの時代」を出版された関西大学の森岡孝二教授の記念講演がありました。テーマは「働き方はこれでよいのか?ストップ・ザ・エグゼンプション」です。
  森岡教授の話によると、正規労働者、とくに男性は猛烈な過重労働にあり、30代後半は週平均50時間以上、4人に一人は60時間以上も働いているそうです。こうした働きすぎは、アメリカ発のものですが、今やアメリカ以上というのが日本の実態です。そういったことを、「グローバル資本主義の逆流」「情報資本主義の衝撃」「消費資本主義の罠」「フリーター資本主義の大波」「新自由主義と市場個人主義」といった言葉を使いながら、ときには図表を示して、働きすぎの労働実態の原因をわかりやすく説明して下さいました。森岡教授の言によると、日本版ホワイトカラーエグゼンプションは、「過労死促進法」であり、働きすぎにブレーキをかけることこそが重要であるとのことでした。

3 次に、パネルディスカッションがありました。民法協事務局長の岩城穣弁護士がコーディネーターとなり、損害保険会社勤務の正社員、偽装請負の労働者、働きすぎの労働者の家族、公立中学校の教師、夫を過労死で失った遺族の5名がパネリストとして登場しました。
  損害保険会社勤務の正社員は、過剰なノルマを課される一方で、時間内に仕事を終わらせるよう指示され、会社の消灯後も、非常灯の下で仕事をしたり、ファミリーレストランで会議をするという労働実態がある、と話されました。
  働きすぎの労働者の家族は、最近夫を過労死で亡くされ(現在労災申請中とのこと)、息子さんがこの4月からビルメンテナンスの会社に就職したそうですが、息子さんの仕事は、午後3時から翌日の午前12時までの21時間の泊まり勤務を隔日で連続する勤務だそうです(しかも夜まで残業をすることもある)。そのため、息子さんは家にいるときは寝ているだけの生活を繰り返すようになったとのことで、息子さんの健康を大変心配しておられました。
  夫を過労死で失った遺族は、技術者で、まじめな夫が、大きなプロジェクトを任され、研究開発の積み重ねの中で過労死させられた憤りを語っておられました。
  偽装請負の労働者は、12時間の拘束労働で、休日出勤もしていたそうですが、正社員になれず、自分の雇用形態が派遣法を脱法潜脱する偽装請負であることを知り、誰かがやらなければならない闘いだと思って、裁判闘争をはじめた、と話されました。
  公立中学校の先生は、新任教師時代、午後10時くらいに帰ることが多かったそうです。しかし、「教特法」という法律によって、教師には残業手当は支払われません。たまに早く家に帰っても、持ち帰り残業をしている、とのことでした。
パネリストの発言に加え、フロア発言も相次ぎました。製版会社に勤務していた方は、7年間にわたり月130時間の時間外労働をしてきた、仕事を終えるとふらふらする状態だった、家に帰り風呂でふらついて倒れ、打ち所が悪く重度の障害が残った、現在裁判中である、と話されました。
  どの発言者からも、あまりに過酷な労働実態が語られ、会場は驚きと怒りに包まれました。

4 最後に、岩城事務局長から行動提起があり、運営要綱の採択、運営役員の選任がなされました。会長は、森岡孝二関西大学教授、事務局長は、岩城穣民法協事務局長です。
  働き方ネットは、人間らしい働き方、生き方を考え直し、働くルールの確立と雇用の安定、格差社会の是正を求めるとともに、「過労死促進法」「サービス残業強制法」ともいうべき、「自律的労働時間制度」(日本版ホワイトカラー・エグゼンプション)を導入する労働時間法制の改悪と、「違法解雇の金銭解決制度」「就業規則不利益変更の原則合法化」などを盛り込んだ労働契約法の制定に反対することを目的として結成されました。
  今後は、リーフレットを作成するなどの宣伝活動や、連続学習会を開催するなどして、ホワイトカラー・エグゼンプションの導入を阻止し、まともな働き方のルール作りを求める運動を盛り上げていくことになります。

(民主法律時報412号・2006年10月)

2006/10/01