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2005年権利討論集会第5分科会報告 弁護士 青砥洋司(民主法律262号・2005年6月)

「命と健康を守るために」
2005年権利討論集会第5分科会報告

弁護士 青砥洋司

1 労働時間について考える
 第5分科会の1日目は,「労働時間について考える」と題して,池田直樹弁護士より講演をいただき,その講演に基づき討論を行った。労働安全衛生を担当する組合の人を始め,過労死の遺族の方や,社労士,弁護士,修習予定者など31名の参加があった。
 
2 労働時間についての講演
 池田弁護士の講演では,要田事件,セキスイ事件を紹介しながらの「なぜ自宅残業をせざるを得ないのか」など,参加弁護士には質問もあるというなかなか緊張する講演だった。
 まず,労働は本来時間的場所的制約があるとされていたが,パソコンなどの普及により家でも仕事ができるようになってきたことと,会社が成果主義に変わってきたことにより場所的制約について緩やかになってきているという説明があった。そして,会社が成果主義的な発想をすると,労働過程に関心が行かなくりその結果,結果のみに関心がいき,労働実態が把握されなくなるという問題が説明された。この間,労働時間の管理を労基署が徹底的に指導するようになっているが,自宅での労働時間についての管理ができないため,それを指導すると言うことは困難で,会社の責任を追及しにくいという問題が指摘された。
 裁量労働であっても,どの内容の仕事をいつまでにしなさいという,業務指示と期間までに行うようにという指示がなされ,それをこなすためには,自宅残業が必要になるということだった。自宅残業の指示命令が有ったかどうかが重要なのではなく,どのような内容の仕事(量・質)についていつまでに仕事をしろといったかが重要だという指摘があった。また,過労死問題に関わる中で「なぜ,この人は,ここまで仕事をがんばったのか,なぜ,ここまで仕事をがんばったのだろう」という視点を忘れてはならない,労働時間の数に目を奪われてはいけないという指摘があった。
 その後,裁判官の自宅残業の場合,数行書くにも何時間もかかってしまう場合があるということや,看護師の看護研究の成果物について成果物があること,黙示の指示が有ったことが必要であろうなどの討論がなされた。
 
3 36協定について考える
 2日目は36協定について考えると題して,労働基準監督官の佐光氏の講演があった。参加者は28名であった。
 
4 36協定についての講演
 36協定については,そもそも,守る必要があるのかどうかについての問い合わせがあることもあるくらい問題意識が低いと言うことであった。また,窓口では36協定の内容の体裁さえ整っていれば,そのまま受け付けなければならないが,長時間労働については健康問題に留意すべきであるとして監督官から指導してもらうということはできると言うことであった。
 また,サービス残業の摘発については,下手に行って,空振りに終わると会社に次回以降の摘発逃れを暗に示唆するだけに終わってしまうので慎重に成らざるを得ないということだった。物の頼み方にも上手い頼み方と下手な頼み方があり批判するだけではだめだという反省させられるお話でもあった。
 また,全日赤大阪赤十字病院の西山さんから36協定締結をめぐる病院側と労働者代表の交渉経過の説明か有った。月100時間を特別条項の入った36協定の締結について,医師の中には時間外労働手当が出されなくなるのではないかという心配がありその点がネックとなっているという報告が有った
 その後の討論では,大島事件の勝利報告があり,この決定をきっかけに,東大阪の地で事業所の在職調査をやってはどうかという提案や,過労死の遺族の方から,単身赴任先で死亡した事案で死亡した知での支援をよろしくお願いしたいという発言があった。
 
5 最後に
 今回は,非常にわかりやすい講演でありながら,なるほどと考えさせられものであり参加者の方からは「久しぶりに権利討論集会で勉強した」という感想が出るほど充実したものだった。来年以降の分科会で2005年の分科会は佳かったといつまでも言われることのないよう,来年以降もいっそう有意義なものになるよう検討していこうと思っています。

(民主法律262号・2005年6月)

2005/06/01