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大阪赤十字病院における36協定に関する問題 全日赤大阪赤十字病院労働組合委員長 西山幸代(民主法律260号・2005年2月)

全日赤大阪赤十字病院労働組合 委員長 西山 幸代

 昨年、病院側から三六協定の提案がありましたが、特別条項で月100時間という長時間になっており、労働者側代表として問題があると協定を結ばずにいます。

 大阪赤十字病院の概要
  病床数 1021床
  職員(臨時・パート入れて)1304人、内、医師186人  
  全日赤大阪労働組合 326名、 他の労組 76名
  就業規則  8時30分~17時10分 休憩 46分、週休2日制
  急性期病院

 当院は平成11年4月以降、三六協定がないままになっていました。
 昨年9月末に、病院側から「協定を結びたいが、労働組合が労働者の過半数を組織していないため、労働者代表になることができない。職場毎に代表者を選出して、その代表者72名より、2回の選挙を行い1名の代表者を決める。」と提示され、すぐに代表者選びが始まりました。
 全日赤労組は、その選び方にも問題があると抗議しながら、代表者にもなるために、職場より多くの組合員が職場代表に立候補し、最終的に全日赤労組執行委員長の西山が労働者代表に選ばれました。

 そして、病院から提示された協定内容は
 一日の時間外 3時間   医師は5時間
 一ヶ月    45時間 
 一年間    360時間
 特別条項として、医師のみ救急患者、並びに重症患者の処置及び、緊急 手術等の必要が生じた場合は、労使の協議を経て、一ヶ月100時間まで延長する事ができる。回数は6回までとする、というものでした。
 *平成11年3月までの協定は男性3時間、女性2時間というものでした。特別条項はありませんでした。
 
 当院は、急性期の病院で救急センターが24時間、重症度にかかわりなく救急患者を受け入れており、入院患者の急変ももちろんあり、特別条項にある条件は常に起こっている状況であり、これは、一時的又は突発的なものに限定されるべき特別条項の内容としては認められないと思われます。
 また病院は、入院患者の平均在院日数の短縮、手術、検査件数の増加を医師に課しており、外来患者も多く8時45分から16時頃まで、時には18時までも外来診察や手術、検査を行い、その後の時間で入院患者の診察や指示を出したりするので、定時に終わることはなく、昼休みもろくに取れていない状況です。
 また当直があり、救急外来の診察や入院患者の急変に対応し、翌日、12時に帰っていいようにはなっていますが、とても帰れる状況になく、夜まで働いています。当直中に働いた時間は時間外でつけます。
 医師の人数が不足しているのは明らかであり、当直回数が多い医師は時間外が膨大になります。多い医師は月150時間位になっています。

 病院側は、「実態として長時間になっているので、特別条項を入れないと労基署から指導を受ける。実態に合わない協定を結んでも意味がない」と、この特別条項を削除することはできないといいます。
 しかし、月80時間とされている「過労死ライン」をはるかに超える100時間という長時間の時間外労働を三六協定によって容認することはできません。
 労基署も、こちらから説明すると、「特別条項になじまない内容であると理解できるが、労働者側が署名して提出されれば問題なく受け取る」ということでした。長時間労働への指導はないということです。
 また、医師にアンケートをとると、特別条項がないと時間外手当が45時間以上は支払われないのではないかという不安が強く、特別条項を付けておいてほしい、という意見が多くあり、毎日の時間外と特別条項とは違うということが理解されていません。
 最近、病院は医師の時間外を減らすように指導していますが、業務は増える一方で、手当の請求を減らせということになります。
 急性期の病院でこういう特別条項によって長時間が認められるのか、また長時間労働に対して、労基署の指導がなされないのは、何故なのかと疑問に思います。

 病院側は2月始めに病院機能評価を受ける事もあり、早く協定を結ぶようにとせかしてきていますが、特別条項をとり除くことはしないと言っています。
 そもそも医療現場における長時間・過密労働の主たる原因は、医師をはじめとする人員不足にあります。患者数や治療内容に見合わず、所定労働時間内には終わらない人員配置が問題です。

 現在、どこの病院においても人件費抑制と患者からの「収益増」を柱とする「経営効率優先の病院運営」が盛んにさけばれていますが、このまま医療労働者の献身さに甘えて長時間・過密労働が放置されていくと、不幸な事態を招くことになるでしょう。また、患者にしても、医療を提供する側の医師や看護師が疲れ果てて不健康な状態にあっては、不安でたまりません。
 安全・安心な医療の提供と雇用する労働者の健康を守ることは、病院経営者に課せられた責務です。事故が起きてからでは遅すぎます。
 全日赤労組は、病院側に対して特別条項を外し、増員をはじめとした必要な対策をとることを求めています。

(民主法律260号・2005年2月)

2005/02/01