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研修医の過労死に労災認定 弁護士 岡崎守延(民主法律時報366号・2002年11月)

弁護士 岡崎守延

1、これまで何回か報告しています関西医科大学研修医の故森大仁さんの過労死事件において、今回北大阪労働基準監督署より、過労死の労災認定が出されましたので、報告します。

2、森さんの労災申請手続は、当初2000年3月6日に北大阪労働基準監督署より不支給の決定が出され、大阪労働者災害補償保険審査官に対する審査請求でも2001年8月28日に棄却の決定がなされ、更に労働保険審査会に再審査請求を申し立てておりました。
 今回の北大阪労働基準監督署による労災認定の決定は、この再審査請求の手続中になされたものです。

3、ご存知のとおり、厚生労働省は、昨年11月に、過労死の労災認定基準を見直し、新たな基準を策定しました。今回の見直し決定は、この新基準が大きな影響を与えています。
 この新基準では、「発症一か月前に100時間を超える残業のあるときは、業務と発症との関連性が強い」とされていますが、森さんの場合は、「発症一か月前」をみても時間外勤務は150時間に達しており、しかもこの状態が2か月半も続いていました。
 森さんの労働実態は、新基準から見れば、業務起因性が存在することが明らかと言えます。

4、代理人は、この基準の変更に基づき、再審査請求に並行して、北大阪労働基準監督署に原処分の見直しの申入れを行いました。
 また労働保険審査会も、森さんの労働実態と新基準の策定を踏まえて、原処分庁である北大阪労働基準監督署に不支給決定の見直しを求めていました。
 今回の見直し決定は、この様な中で行われたものです。
 本件は、先に民事の損害賠償請求を認容する一審判決がなされ、その後に労災の認定がなされるという異例な経過となりました。
 併し、私立大学病院に勤める研修医の過労死の労災認定は恐らく初めてのことと思われ、その意義は大きいと思います。

5、大学病院などの医療現場のことは、中々一般には知ることができません。
 併し、森さんの事件からも明らかなように、そこでは労働基準法を完全に無視した労働実態が横行しています。この様な中で、研修医のみに止まらず、一般の医師或いは看護師なども過重勤務を強いられている実態があります。
 社会保険労務士である森さんのお父さんのところには、同じように研修中或いは研修終了直後に過労死した方の相談が少なからず寄せられています。最近も、過労死連絡会で取り組む、看護師さんの過労死訴訟が報じられています。これらの動きが、医療現場の労働条件の改善に繋がっていくものと思われます。

6、なお、森さんの関連事件として、民事の損害賠償請求事件は、現在大阪高裁で引き続き審理中です。また最低賃金に満たない差額賃金の支払、並びに私立学校共済保険の未加入による損害賠償を求めた二つの事件は、本年五月に大阪高裁で再び研修医の労働者性を認める判決がなされ、現在関西医科大学が最高裁に上告中となっています。
(民主法律時報366号・2002年11月)

2002/11/01