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労災認定の壁は何故かくも高いのか─過労死の労災認定の実態を考える集会開催と今年の過労死110番の結果について─ 弁護士 脇山 拓(民主法律時報275号・1994年7月)

大阪過労死問題連絡会事務局
弁護士 脇 山 拓

 大阪過労死問題連絡会と大阪過労死を考える家族の会は、6月17日に「労災認定の壁は何故かくも高いのか─厳しい現状を乗り越え、過労死のない社会を実現するために─」という集会を開催し(後援・大阪労働健康安全センター、50名が参加しました。
 この集会は、1992年度にはいわゆる過労死事案の労災認定件数が18件にまで減少してしまった現状を踏まえて、厳しい認定基準、労働者に冷たい認定現場の実態を明らかにし、これを打破する方法を皆で考えていこうという趣旨で開催されたものです。
 当日は、西弁護士の基調報告の後、最近労基署や審査官で業務外の決定の下された3つの事件を題材に担当弁護士より労働省の決定の問題点が報告され、また、全港湾阪神支部の町田氏からはこれまでの支援活動の取り組みが報告されました。
 報告をうけて討論をする予定でしたが、熱のこもったレポートがなされたため時間不足で十分に参加者に発言してもらうということにはなりませんでした。それでも参加した遺族から、夫に過労死された家族の率直な心境が語られる等胸を打つ内容の発言がなされ
たと思います。
 最後に、過労死の労災認定の大幅な増加を求める集会アピールを採択して集会を終えました。
 不況が過密労働をいっそう深刻に
 翌18日には第7回になる全国一斉過労死110番が行なわれ、大阪では民法協に臨時電話を設置し、弁護士がのべ10名、医療関係者1名が相談にあたりました。
 午前中は、新聞での報道がほとんどされなかったためかあまり電話がありませんでしたが、テレビニュースが流れた昼過ぎからはほぼ切れ目なく電話がなり続け、結局28件の相談が寄せられました。
 その内容は、労災補償相談が9件(内死亡事案6件)、予防・働き過ぎ相談が14件、その他が5件であり、労災補償相談では自殺についての相談が3件も寄せられたこと、予防・働き過ぎ相談では相変わらずサービス残業、人手不足、過剰ノルマでの過密労働という実態が寄せられたことが特徴的でした。
 110番実施後のマスコミの取材の関心事は、この不況で過労死は減っているかどうかでしたが、実施してみて、現場での過密労働の実態はむしろ深刻化している面があり、到底過労死が減少しているとは言えないということを実感しました。
(民主法律時報275号・1994年7月)

1994/07/01