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サービス残業についても残業手当を認めて遺族補償年金の額を定めた労基署長決定 弁護士 松丸正(民主法律時報342号・2000年10月)

弁護士 松 丸 正

 大阪府松原市内のプラスチック製品の成形加工の会社の営業担当等の業務に従事していたM氏(当時五三才)の急性心臓死につき、羽曳野労働基準監督署長は業務上と判断して、遺族補償年金等の支給決定をしました。
 この事件は経営再建のための営業担当として入社した被災者が過重業務で倒れ、その八ヵ月後の平成一二年一月に会社も倒れ自己破産に至るという、不況の下での過労死の一つの典型とも言えます。
 この事件につき労基署長はサービス残業分も含めて遺族補償年金の額を決めたことで画期的なケースです。
 M氏は発症前、毎月一五○時間前後の所定外労働(残業)をしていましたが、会社は六○時間を超える残業分については残業手当を支払っておらず、サービス残業になっていました。
 今回の支給決定は、サービス残業となっていた残業分についても、遺族補償年金等の支給の基礎額(給付基礎日額)に算入して決定しています。
 今までは実際の賃金支払給与額を基準として年金は支給されており、サービス残業分をすべて認めた額を基準にして支給決定されたのは、今回が全国的にも初めてのケースと考えられます。
 過労死の背景には「強制された自発性」という労務管理の典型としてのサービス残業という企業犯罪が存在します。先日は女性編集デザイナー(土川事件)の過労死事件に関連して、事業主のジ・アースとその代表者に対し、残業手当不払いの労基法違反と、労働安全衛生法の健康診断義務違反につきそれぞれ四○万円の罰金が下されています。
 今回の支給決定は、サービス残業分についても当然支払われるべき額として労基署は判断し決定したものであり、他の過労死の労災認定の遺族の救済を更に一歩進めたものです。  遺族補償年金につき従来の実際の賃金支給額を基準とした場合と比べるとつぎのようになります。(弁護団は私と角野とく子弁護士)

*実際の賃金支給額を基準としたとき
 (432,858円+392,640円+418,114円)÷90=13,818円   99年2月 99年3月 99年4月  13,818円×201(日分) ×0.8 =2,221,934 円
*サービス残業を含んだ今回の決定  (555,532円+542,641円+569,312円)÷90=18,528円 18,528円×201(日分) ×0.8 =2,979,302 円     (34%増)

(「民主法律時報」No.342より転載) 

2000/10/01