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脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会 第10回議事録 01/08/07

第10回「脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会」議事録

日時 平成13年8月7日(火)
   17:00~       
場所 専用第24会議室     

○座長
 第10回「脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会」を開催する。
 検討に入る前に事務局から提出資料の確認・説明をお願いする。

○事務局
 提出資料について確認・説明。

○座長
 検討に入る。まず、資料No.18-5及びNo.50-2の「脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会報告書(案)」について検討したい。
 資料No.18-5の目次(案)について、以前はIIIが「脳・心臓疾患の自然経過と重症度の評価」、IVが「認定基準における対象疾患」であったが、まず対象疾患を示し、その後に自然経過と重症度の評価を記述する方が流れがよいことから、順番を変えたい。異論がないようなのでこのようにする。
 また、この報告書では、図表を文章の中に取り入れているが、この方が分かりやすいので、このようにしたい。
 次に、20頁の「IV 脳・心臓疾患の自然経過と重症度の評価」のところについて、執筆者である参集者から修正意見をいただいているので、説明をお願いする。

○参集者
 39頁からの「2
 脳血管疾患」の修正点について説明する。(修正部分、図表等について説明。)

○座長
 何か質問等はあるか。
 45頁のくも膜下出血のイの概念のところにその定義を入れていただきたい。また、図表に表題が入っていないので、入れてもらいたい。

○参集者
 そのように修正する。

○座長
 項目等は全体を見て調整させてもらう。次に「3
 虚血性心疾患等」について、執筆者である参集者に説明をお願いする。

○参集者
 「3
 虚血性心疾患等」の修正点について説明する。(修正部分、図表等について説明。)

○座長
 何か質問等はあるか。項目等は全体を見て調整させてもらう。
 また、発症前の重症度の評価はできるのか。

○参集者
 陳旧性心筋梗塞となって退院した場合の重症度評価はできるが、座長が言われる発症前の重症度評価は難しい。

○座長
 次は、64頁の「(2)
 過重負荷と脳・心臓疾患の発症」についてである。前回の議論を踏まえ、図5-1と本文の説明を修正した。

○参集者
 図中の線に説明文がかぶっている。工夫した方がいい。

○座長
 次に、67頁の「長期間にわたる疲労の蓄積の考え方」の下から4行目の「なお、その際、疲労の蓄積という観点から考察すると、おおむね1か月程度業務から解放され、完全休養が取得できていると認められる状態が続いている場合は、疲労は回復されたと見なすことができよう。」というところについて、医学的にこう言えるかということである。

○参集者
 仕事をしているという状況は、完全休養には当てはまらないということでいいか。

○座長
 そのとおりである。

○参集者
 1か月ということは、退職したとか、入院したとかいう場合が考えられるが、これは評価期間の中断がどういう場合に起きるかということになる。すなわち、そのような特殊な場合を除き、評価期間は3ないし6か月をみるということになるのか。

○座長
 そのとおりである。また、退職後、いつまで影響が残るのかという観点もある。

○参集者
 あり得るとすれば、こんな仕事はきつくてやっていられないといって辞め、その1か月後、倒れたといって労災申請された場合であろう。

○座長
 次に、76頁の「精神的緊張(心理的緊張)を伴う業務」のところで、分かりやすいように、77頁の(イ)及び(ロ)の表を加えている。これは、「精神的緊張に伴う業務」として、「日常的に精神的緊張を伴う業務」と「発症に近接した時期における精神的緊張を伴う業務上の出来事」に分け検討を行い、表を作成した。
 なお、どちらの表も精神的緊張が高いと思われるものとある程度高いと思われるものに分け、右側には調査のポイントを「評価の視点」として記述している。
 ここで、本専門検討会として、精神的緊張を伴う業務をどのように考えるか、すなわち、論文を整理してみると、リスクが高いとするもの、低いとするもの等意見が分かれている。そこで、精神的緊張について発症との関連において、「ある程度積極的に評価した方がいい」と記述するのか、「消極的に評価する」と記述するのかについてである。これらの問題は、今後、重み付けが強くなると思われることから、「十分に配慮する」という方向がいいと思う。特に意見もないようなので、そのようにさせていただく。
 次に、74頁から不規則な勤務形態等の就労態様について記述しているが、就労態様にウエイト付けができるか否かについてであるが、「不規則勤務」が3で「拘束時間が長い」が1だとか断定できない。環境因子は付帯的な因子と考えていいが、ウエイト付けは困難であり、実情に応じて判断するしかない。
 次に、93頁のリスクファクターについて、相対リスクないしオッズ比をまとめた表を書き加えた。これは、本専門検討会の検討文献の中で、リスクファクターのオッズ比、相対リスクが記述されていたものを整理したものである。
 特に、多重リスクファクターの表については、Framingham調査から作成したが、脳血管疾患について、これらのリスクファクターが全部揃うと17倍ぐらいのリスクとなる。
 また、虚血性心疾患についても、Framingham調査に基づき、多重リスクファクターについて記述している。さらに、102頁の(3)に「リスクファクターの改善による脳・心臓疾患のリスクの低下」として、治療によってどの程度リスクが減るのかについて記述した。これらにより、きちんと治療を行えば4分の1から5分の1にリスクが減ることが分かる。そして、「以上のように、脳・心臓疾患の発症は、適切な治療・管理によって、その多くが予防可能であり、働く人々に対する治療の最大限の供与と、働く人々の自覚による自己責任による適切な治療が最も重要となる。」と記述している。これは、治療を行えば脳・心臓疾患の発症がぐっと減るということである。

○参集者
 精神的緊張の影響については、先ほど座長が十分に配慮する必要があるという話をされたが、賛成である。なお、それは現時点における見解であり、今後の医学の進歩により見直しが必要になることについては記述してほしい。

○座長
 最後の「まとめ」に、今後の医学の進歩により、再検討を要する旨記述することとしたい。

○参集者
 現在、裁量労働制をはじめ、さまざまな労働時間制度が広まっていることから、裁量労働制等の要件の遵守、職務内容への配慮等について、「まとめ」に記述した方がいい。

○座長
 ここで、本日出席予定の参集者が全員集まったので、「認定基準における対象疾患」及び「IV
 脳・心蔵疾患の自然経過と重症度の評価」のドラフトについて議論したい。なお、前回の議論で、対象疾患については、ICD-10に準拠した疾患名とすることになっていたが、何か意見はあるか。

○参集者
 「一次性心停止」という言葉は、ICD-10にはないことから、「一次性心停止」を「心臓性突然死」又は「心停止」とした方がいい。

○座長
 ICD-10に「心停止」という項目はある。

○参集者
 「心停止」とすると、「心臓性突然死」もその中に含まれる概念となる。「心停止」は「蘇生に成功した心停止」、「心臓性突然死<急死>と記載されたもの」、「心停止、詳細不明」の3つに分類される。私は、「心臓性突然死」にすべきと考えているが、従来のままの方がいいのではないかという意見もある。「不整脈による突然死等」はそのままとして、「一次性心停止」を「心停止」か「心臓性突然死」に変えることとしてもよい。「心停止」でも「心臓性突然死」でも、臨床的意味はほとんど同じである。

○座長
 「一次性」は取るべきということか。

○参集者
 そうである。

○座長
 「心停止」か、「心臓性突然死」か。

○参集者
 「不整脈による」ということが分かることはまずない。そのため、「突然死」となる。
 ただし、解剖したら、冠動脈に動脈硬化があったとか、肥大型心筋症であったとか、また、何もみつからない場合もある。急に死亡し、他に原因がなく、心臓に原因が窺われる場合に「心臓性突然死」となる。なお、臨床医は、「心停止」より「心臓性突然死」の方が馴染んでいると思う。

○座長
 原則としてはICD-10に準拠するということにしたいと考えている。
 すなわち、対象疾患としては、「心停止」を挙げて、「一次性心停止」及び「不整脈による突然死等」は「心停止」に含まれているとして削ることでいいか。また、この考え方をドラフトの中に記述することでいいか。

○参集者
 結構である。

○参集者
 ICD-10は、死因等の統計を取るためのものである。また、代謝性疾患、弁膜症、心筋炎等の心臓のいかなる病気であっても最後には心臓が停止することから、「心臓性突然死」には、これらの疾患が含まれているように解釈される。「虚血性心疾患等」とは、限定された疾患と考えている。1998年~2000年にかけて、Hurst のThe HeartとTopolのComprehensive Cardiovascular Medicineが出版された。その中に「一次性心停止」の定義と「一次性心停止」と「二次性心停止」との違いについて説明されており、この「一次性心停止」は限定された概念と理解される。
 一方、「心臓性突然死」には、多くの種類の心臓の疾患が含まれている。「不整脈による突然死等」の検討に係る報告書において、「器質的心疾患及び代謝性心疾患によるものは除く」ということが明記されており、労災補償の対象はそれらを除く不整脈に限定されているものであり、それは変えない方がいいと思う。

○参集者
 「不整脈による突然死等」は原発性エレクトリック・ディリーズに限ることとなり、多くの軽い肥大型心筋症及び拡張型心筋症の人々が対象にならないのは、狭すぎるように思う。その人たちの突然死はどこに入るのか。「基礎心疾患のない不整脈による突然死」だけに絞られているのか。
 不整脈は、WPW症候群にしても、QT延長症候群にしても、ポックリ病にしてもほとんど特発性心室細動の1つだと分かりつつある。また、これらは、遺伝的なものであることも分かってきた。
 WPW症候群については、1,000人に1人か2人はもともとそういうものを持っている。そうすると、WPW症候群は労災補償の対象となり、肥大型心筋症が入らないのは矛盾とならないか。

○参集者
 脳疾患としては、脳腫瘍、髄膜炎等も含まれているが、労災の対象となる脳血管疾患にはそういうものは入っていない。それと同様に考えると、「心臓性突然死」については、炎症、奇形、腫瘍が入ってきてしまうことから、「虚血性心疾患」に限定すべきと考える。

○参集者
 そうすると、「不整脈による突然死等」が何故入ってきたのかが分からなくなる。

○参集者
 それは、平成7年2月の認定基準の改正に当たっての「脳・心臓疾患等に係る労災補償の検討プロジェクト委員会」の検討において、不整脈を原因とする突然死等について、医学研究が進み、業務と発症との関連が示唆されることから、検討すべきであると委員から発議があり、それを受けて、新たに検討の場を設け、対象とすべきという結論に達したものである。

○座長
 肥大型心筋症などについて、過重負荷の関与は大きいのか。

○参集者
 肥大型心筋症は、スポーツマンに多く、スポーツを普段できることから分かるように、全く自覚症状がない。そこに精神的な負荷等がトリガーとして加わった場合には、突然死を起こしやすい。そのメカニズムとして、不整脈が一番考えられるが、不整脈以外にも肥大したところに血液が十分に行かず、虚血となり死亡する等、機序はいくつか考えられる。

○座長
 今まで、心筋症は労災補償の対象となっていたのか。

○事務局
 心筋症を全く排除しているというわけではない。現行認定基準では、「先天性心疾患等」について、説明書きで記述している。

○座長
 肥大型心筋症については。

○事務局
 具体的には、「先天性心疾患等」を有する場合には、先天性疾患等の疾病名、その程度及び療養等の経過を十分調査の上、現行認定基準で判断して差し支えないという処理にしている。なお、それ以外の「認定基準で掲げた疾患以外の疾患」については、「業務の過重性があった」として労災請求された事案については、本省にりん伺することとなっており、個別に判断することとしている。

○参集者
 すなわち、肥大型心筋症があっても対象になり得るということか。

○事務局
 そうである。本認定基準で判断して差し支えないとしている。

○座長
 必ずしも、「不整脈による突然死等」と限定する必要はないのではないか。それを含める形で「虚血性心疾患等」に「心停止及び心臓性突然死」とすればいいのではないか。

○参集者
 その場合には、 ICD-10のコードを記述した方がいい。

○参集者
 心停止の中の「蘇生に成功した心停止」は、心停止が確認されて電気ショックをかけて蘇生した場合を指すが、臨床の方ではこの場合も「突然死」と呼んでいる。
 また、「最後は、すべて心臓が止まって死ぬ」ことから、それが入ったら大変だというのは当然のことであるので、それは除くという形で記述すべきと考える。

○参集者
 「心停止」の中に、「不整脈による突然死等」を含めた形で記述することとする。

○座長
 続いて、資料No.51-3のドラフト案について、執筆者である参集者に説明をお願いする。

○参集者資料No.51-3について説明する。(内容について説明。)

○座長
 何か質問等はあるか。今は特にないようなので、何かあったら、事務局にお願いする。
 本日予定されている議題は終了したので、本日の議論を踏まえ、事務局で整理のほどお願いする。以上をもって、本日の検討会を終了する。

照会先:労働基準局 労災補償部補償課 職業病認定対策室職業病認定業務第一係
    (内線5570)

2001/08/07