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脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会 第8回議事録 01/06/18

第8回「脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会」議事録

日時 平成13年6月18日(月)
   18:00~       
場所 別館第12会議室     

○座長
 第8回「脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会」を開催する。
 検討に入る前に事務局から提出資料の確認・説明をお願いする。

○事務局
 提出資料について確認・説明。

○座長
 検討に入る。まず、第7回の専門検討会の議事録について確認したい。

○参集者全員
 議事録了承。

○座長
 次に「III
 脳・心臓疾患の自然経過と重症度の評価」の総論として「解剖と生理」のドラフト(案)について、検討する。それでは、執筆者である参集者に説明をお願いする。

○参集者
 昭和62年の報告書にある記載を基本に、図を加えた他、アメリカの解剖・生理の翻訳本等を参考にして、なるべく分かりやすい記載にしたので、意見等いただきたい。

○座長
 今は意見等がないようなので、ドラフトを読んでもらい、後ほど事務局に意見をお願いしたい。
 次に、前回まで検討いただいた各ドラフトが報告書案として提出されているので、検討したい。なお、前回までの議論を踏まえ、修正又は必要な字句修正を行っているので、意見をお願いする。
 まず、2頁の(2)の「最高裁判決の主なポイント」について、法律面からみて、記述の上、問題はないか。

○参集者
 概要とポイントとしては、これで問題はない。

○座長
 次に、3頁の3の「現行認定基準の考え方と課題」について、基本的にこのような認識でいいか。すなわち、現行認定基準の考え方は、発症直前、前日の業務の過重性をみて、次に発症前1週間をみているが、4頁の5行目のところで「長期間にわたる慢性ないし急性反復性の負荷も同時に重視することが必要である」という考え方を導入し、特に「慢性の疲労やストレスについて十分考慮する必要がでてきた」と述べて、今回の専門検討会の主な検討事項の一つにしているわけである。

○参集者
 従来の急性の発症直前の過重負荷に、慢性の過重負荷として、長期にわたる疲労、ストレスというようなものを新しく別枠として加えるといういわば2本立として説明された方が、理解しやすいのではないか。

○座長
 確かに現行の認定基準の考え方がどうなるのかが、不明確となるので、少し分かりやすいように書き加えることとする。
 続いて、6頁のIIの「脳・心臓疾患の現状」について、参集者から事務局に意見をもらい反映しているところがあるので、参集者にその修正理由の説明をお願いする。

○参集者
 推敲により、今回の原稿でアンダーラインを引いてあるところを修正している。また、それに合わせて、文献として「平成12年第5次循環器疾患基礎調査結果の概要」を引用している。

○座長
 次に、10頁の「V
 業務の過重性の評価」について、下から5行目の「また、脳・心臓疾患の発症と医学的な因果関係が明確にされた特定の業務は認められていない」という記述を削った方がいいという意見があった。この点、特に記述する必要性はないので、この部分は削ることとする。
 次に、「平均的な労働者の取扱い」として、11頁の(3)の「過重負荷の評価の際の比較対象労働者」について、意見をお願いする。

○参集者
 12頁17行目、「労働者本人のみならず同僚又は同種で」という記述は、「同僚又は同種の業務に従事する者」ではないか。この部分は、大阪高裁の判決を考慮したものと思うが、これでは本人基準と理解されないか。多くの場合、何らかの基礎疾患を持っている労働者が、勤務の軽減を受けることなく普通に就労しているときに、脳・心臓疾患を発症するわけであることから、その人が平均的労働者であるのか否かをどのように判断するのかという問題がある。

○参集者
 実際には非常に重篤な疾患があるにもかかわらず、働かないといけない事情を持つ労働者が、例えば医者に就業制限を指示されていても、会社への診断書には書かないようにしてほしいなどという場合があるが、裁判で争われて、その事実が明らかになって、本人がもともと重篤な基礎疾病を有していたのだということで、平均的労働者から除外されることが現実にあると思う。

○座長
 現行の認定基準では、「日常業務を支障なく遂行できる健康状態にある者」というものであり、基礎疾患を有するものも含んでいるか否かが分かりづらいことから、それを明記したということである。それから、「通常の業務に耐え得る」と「日常業務に耐え得る」というのは、同じことである。また、「基礎疾患を有するものの勤務の軽減は要せず」ということを、具体的に入れた。現段階では、このぐらいの表現がいいのではないか。

○参集者
 「基礎疾患を有するものの勤務の軽減を要せず、通常の業務に耐え得る労働者」では、非常に幅があると思う。例えば、1回心臓発作があった人が治療をし、1年間の死亡率が1%ぐらいの群がある。高脂血症、高血圧を持っているけれども、病気を発症していない危険因子を持っている人たちの死亡率は、1000分の1か、あるいはもっと低い。10倍ぐらいの差がある。一応その人たちは、普通の勤務に支障なく就いている。そういう群をトータルで「基礎疾患を有するものの」というように判断して基準とするのか。

○座長
 危険度の幅はかなりあるが、そういうのを全部平均してというようなニュアンスとして取れば、かなり拾うことができるということになる。

○事務局
 そこのところは、6の「業務以外の要因の評価」、「リスクファクター」のところでどのようにしたらいいのか議論いただければと考えている。

○参集者
 基礎疾患とは、特に臨床的に認知あるいは診断され得るもの、されたものの両者を指すが、誰でも加齢による変化というものがある。基礎病変も誰でも持っている。健康な人でも基礎病変ないし先行病変を持っているわけであるから、この基礎疾患というのは、あくまでも臨床的に認知されたというような意味合いになるのではないかと思う。

○参集者
 それでは、症状があるという何らかの臨床的なイベントを起こしたものということか。

○参集者
 他の人は全部その予備軍となるわけである。

○座長
 高血圧でも基礎疾患に入る。高血圧があっても、通常の勤務は大丈夫だというような人は含むという意味である。
 次に、13頁の(2)の「長期間にわたる疲労やストレスの考え方」について、下から2行目の「発症に近接した短期間の急性ストレスがあった場合にも、その後のストレスは日常業務において受けるストレスと同等あるいはそれ以下となってから、おおむね1か月を超える期間後に脳・心臓疾患を発症した場合は、業務以外の要因により発症したと解することが妥当であると思われる」という記述について、長期間にわたる疲労・ストレスや急性ストレスがあった後1か月ぐらい特に何もなければ、業務外というふうに考えていいのではないかという記述である。

○参集者
 短期の急性ストレスがあった後に、ストレス状態がない普通の日常業務となって2か月以上経って発症したときに、どうなるかということか。

○座長
 そうである。
 次に、「不規則な勤務形態」の17頁下から13行目の「以上により、不規則な勤務に就労する場合の過重性については」というところについて、予定された業務スケジュールの変更の頻度、程度、事前の通知状況、予測の度合、業務内容の変更の程度の他、過重性の目安として何か追加すべきものがあるか否かについてである。不規則性とは、変更の頻度が多いということである。なお、規則的に一定のスケジュールに従う場合には、通常の業務とみなし、それが変更された場合の変更の頻度等を評価してはどうかと考えている。

○参集者
 しかしながら、記述をみると、「予期せぬ」というニュアンスで書かれている。

○座長
 「予期せぬ」というのは事前の通知状況、あるいは自分である程度の予測ができたか否かということである。

○参集者
 「疲労回復に必要とされる睡眠時間の確保が困難であるかどうか」ということに尽きるのではないか。これが書いてあれば、別にいいのではないか。

○参集者
 論点は変わるが、16頁の下から11行目のところからの文章が分かりにくいので、もう少し工夫する必要がある。その段落の2行目の「1日睡眠時間5時間程度しかとれない状態を事業場に拘束された」というところがいくつかの修飾語が重なって分かりにくい。

○座長
 次に、17頁の「拘束時間の長い業務」、18頁の「出張の多い業務」、「交替制勤務、深夜勤務」について、何か具体的に追加するようなものがあるか否か意見をいただきたい。

○事務局
 いくつか例示が出ているが、全部並列ではないと思うが、いかがか。例示の中にも軽重があるのではないかと思うが、どうか。

○参集者
 出張ということでは、例えば飛行機に乗って行くときなど、初めから最後まで仕事をしている人もいれば、居眠りをしている人もいる。居眠りをしている人は、そんなに出張業務が過重とは思わない。出張中の仕事の仕方というのは、幅が大きいと思う。

○参集者
 ただ、頻繁な出張というのは、従来の裁判などでも結構上がってくるものの1つである。単発的な出張はそんなに問題にはならないが、行って帰ってきて、また1日通常勤務を行ったら次の所に出張するというような場合に問題となったというのが結構ある。拘束時間、出張、交替制、深夜勤務というのは、比較的裁判に上がってきているのではないか。
 なお、不規則性と拘束時間については、1つの項目にしてもよいと思う。特にバス、トラックなどの場合は、両方に関わっている。

○座長
 次に、19頁の「作業環境」のところである。前回までは温度と時差の他に、気圧を入れていたが、気象による気圧変化による出来事を記述しており、高気圧環境、低気圧環境の労働のデータを示しているものではなかった。潜函病みたいなものは職業病として認められているため、気圧を特に取り上げる必要はないのではないかということから、削っている。また、時差に関しては、資料No.53の『nature』の論文に、時差ボケでコルチゾールが出続け、それと同時に記憶力、反応力が少し落ちるというデータが載っている。長期にわたり繰り返しの時差のある仕事を行っていると、ホルモンの異常がくるというのは時々報告があったと思うが、記憶力低下が少しあり、反応時間が少し長くなるという2つが、この論文のポイントであるが、脳・心臓疾患とは全く無関係と考えていいのではないかと思う。20頁の(ハ)に、「飛行による時差」ということで取り上げてあり、それで対応できていると思う。
 次に、5の「業務の過重性の総合評価」について、23頁の下から5行目、「長時間労働が評価期間(3~6か月)のうち相当期間(おおむね○~○か月)継続」という記述があるが、どのように記述できるかということである。先ほど述べたような長時間労働が、大体どのぐらい継続した場合に評価していいかということであるが、出せるのか。これは非常に重要なところである。

○参集者
 「客観的資料により明らかな長時間労働が」という記述の「長時間労働」というところは、例えば1日14時間、1か月280時間というように、注釈を付けた方がいい。

○座長
 それは書いた方がいい。

○参集者
 そうすると、「それのみによって業務上とすることが可能である」という平仄が合う。

○座長
 長時間労働がどのくらい継続した場合に業務上といえるのかについて、医学的な思考過程で考えるとどうか。

○参集者
 評価期間について法学面からどうなのかというと、例えば、行政が3か月を調べて長時間労働がその間はないとすると、請求人や周りの人が、それ以前に実は残業をたくさんやっていたという話になる。仮に訴訟になったときは多分、裁判所はそういう主張が出てくれば、それも含めて判断するということになる。その場合、どういう判断になるかは、やはり一概には言えないが、1つの考え方として、従来裁判で争いになった長時間労働のケースを拾い、例えば6か月なら6か月の中でどの程度の期間をみているかを調べ、それを参考として医学的な知見に基づき判断したという説明はあり得る。

○座長
 裁判例も調べて、大体その辺の線ということで一応考えてみて、その結果をみてまた判断することとしたい。
 24頁のところも二重線で3行ずつ削ってある。この部分は手順を示したもので、基本的には長期にわたる過重負荷に重点をおいて判断し、それがなかった場合は異常な出来事か、短期間の過重負荷に着目して調べるということにしたが、実際に作業をする方からいうと、異常な出来事、短期間の過重負荷を先にして、長期間の過重負荷を後にした方がやりやすいといった意味から、書き直しをすることとしたい。その場合、むしろ長期間の過重負荷をきちんとみるということが今回の前提であることから、それをPRしなければいけないと思う。それをPRできるような方法で表現したいと思う。
 本日の議論を踏まえて、整理することとしたい。
 以上をもって、本日の検討会を終了する。

照会先:労働基準局 労災補償部補償課 職業病認定対策室職業病認定業務第一係
    (内線5570)

2001/06/18