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脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会 第7回議事録 01/05/14

第7回「脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会」議事録

日時 平成13年5月14日(月)
   18:00~       
場所 労働基準局会議室     

○座長
 第7回「脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会」を開催する。
 検討に入る前に事務局から提出資料について確認・説明をお願いする。

○事務局
 提出資料について確認・説明。

○座長
 検討に入る。
 まず、第6回の専門検討会の議事録について確認したい。

○参集者全員
 議事録承認。

○座長
 次に、「3
 就労態様等による過重性の評価」のドラフト案について検討する。前回の議論を踏まえ、修文を行っている。ここは、今回の検討の中心に位置づけられる部分のため、再度検討いただきたい。
 事務局に朗読をお願いする。

○事務局
 項番1、2について朗読

○座長
 全体の趣旨、ストレス・疲労の考え方ということで、睡眠によって疲労が回復しない、この蓄積が基本的な要因となるということを述べているところである。
 臨床の先生方に伺いたい。2頁の2段落目に「なお、日常業務を超える業務による過重負荷がなくなってから、一定期間を超える期間後に」とあるが、この「一定期間」を、医学的に考えてどの程度とするのか。これは非常に重要であるので、是非議論いただきたい。心筋梗塞等は、過重負荷を受けた直後よりも一定期間を置いてから発症するというが、どのくらいの期間なのか。

○参集者
 1頁の1の最後に「従来定めていた期間に限定することなく、その過重性を評価・検討する必要がある」とし、2頁の2段目で「一定期間を超える期間後に脳・心臓疾患を発症した場は」となっており、この期間がどれぐらいかということをつかんでいないのはおかしい。

○座長
 非常に重要なところだが、医学的に期間を示せるかどうかというのが問題である。

○参集者
 1頁にある「強いストレス負荷要因が長時間にわたって作用した場合」、いわゆる慢性ストレスでの動脈硬化の促進・増悪という意味と、「心筋梗塞のトリガー」という意味の急性ストレスと2つある。慢性ストレスの場合は、どのぐらい続いて、それがとれてからどのぐらいの期間を経過して発症した場合、脳・心臓疾患がそのストレスと関係がなくなるかというのは、医学的には言えないと思う。急性ストレスの場合には、心筋梗塞に移行する不安定狭心症の1つの目安は3週間ぐらいであるが、慢性ストレスについては、非常に難しい。

○座長
 血管病変は、回復しないので、その後、そのレベルからまた増悪することから、期間を示すのは難しい。

○参集者
 脳についても心臓の話と全く同じである。
 「一定期間を超えて」といい、しかも「医学経験則上妥当と考える」ということになると、難しいと思う。心臓と全く同じことで、急性ストレスのことは医学的にいえるが、慢性ストレスについては難しい。

○参集者
 これに類似する判決(高裁判決)で、1か月前のスキーバス運転業務が発症につながっていると判断され、それが最高裁でも維持されているものがある。この事件は、発症前1か月間は、通常のバスの運転の業務を行っていたものである。

○事務局
 他の判決で、発症前1、2か月間は通常業務で、発症3か月前の残業時間が約100時間、4か月前は約150時間というものがあった。

○座長
 医学的に言えば、異常な出来事を含めた急性ストレスは、大体1か月ぐらいと言えるが、慢性ストレスに関しては、後で、3か月ないし6か月で評価するということを述べており、その期間にある一定期間、過重負荷があればと考えた方がいいかもしれない。

○参集者
 法律の面から考えると、3か月ないし6か月という期間をみて判断するが、発症前1か月間に過重負荷がなければ業務外とするのは、理屈が立たない。

○参集者
 慢性ストレス、疲労の蓄積によって、血管病変は不可逆的な変化を生じ、何か月経っても元に戻らないと判断できるのか。

○座長
 元に戻らないと考えて対処した方がいい。

○参集者
 そうすると、時間的な限定は矛盾する。

○参集者
 急性ストレスと慢性ストレスとをどこで切るかが難しい。急性ストレスの場合は、1か月をみて、慢性ストレスの場合は、1か月前で切ることはできない。それを6か月ぐらい前までみるということで分けるならば矛盾はしない。
 急性ストレスは明らかでないとしても、発症しやすい状態になっていた。その発症しやすい状態になっていたものが、慢性ストレスであるという捉え方をすれば、それを6か月ぐらいでみる。それがあまり先になると、その間にどんな増悪因子が加わってきたかも分からなくなるから、その先まではみれないという区分けができるとすれば、説明としては可能だと思う。どこかで急性ストレスと慢性ストレスとを分けないと、自己矛盾が起きてしまう。

○参集者
 従来は、発症前1週間に相当程度の過重負荷があった場合には、それ以前をも考慮するという基準である。それを今度は、1週間という従来からの判定基準とは別に、いわば別枠のような形で、長期にわたる慢性的な過重負荷の場合も、やはり精神的、身体的なストレスは強いだろうから認めるということになったわけである。
 この慢性疲労の問題は、急性ストレスの場合を1か月といっていたから、少なくとも発症する前2、3か月より前に慢性ストレスがあって、それ以降ない場合、発症と過重負荷との因果関係があるという考え方はできないというのが、この文章であると思う。
 もう1つは、蓄積疲労が回復しないという考え方は医学的におかしいと思う。適度な休養をとり、また本人がそのような努力をすれば、必ず回復するはずである。また、そう考えなければ医療も成り立たない。であるから、蓄積疲労はあったにしても、2、3か月間普通の業務になったら回復するのではないかという常識的な線が出せれば、急性ストレスの場合は1か月、慢性ストレスの場合には2、3か月という、一定期間を超える期間後の発症は考えなくていいと思う。

○参集者
 もしそうだとすれば、その期間と慢性疲労の評価期間とが、同じ方が論理としては一貫していると思う。つまり、以前に慢性のストレス要因がかかっていても、例えば仮に3か月その後空けば、慢性ストレスと発症との間の関係はないと考えるとすれば、とりあえず発症から3か月遡って勤務状態をみて、慢性ストレスがなければ、これは業務上にはならない。逆にいうと、3か月間遡って調べればそれでいい、ということになるのではないか。いずれにしろ、期間として3か月とすると、裁判になれば4か月前の過重負荷について争うことになる。

○参集者
 その4か月前までそうだったということを、この病気の発症にあまり関係がないと考えていいと考えるか、あるいは関係があると考えるかという考え方の違いである。

○参集者
 慢性ストレスの場合、疲労の蓄積ということからいうと発症前6か月までの間に半年間あるいは1年間、強い精神的・肉体的ストレスの加わる状態があり、それで動脈硬化が促進・増悪したという可能性は否定できない。それで6か月後に発症したときに、この前の慢性ストレスを除外する方向にいくかどうか難しい。その間に慢性疲労はとれているとして、その前の状態の慢性ストレスが増悪させたということを否定する方向にいくのか、肯定する方向にいくのか。この強いストレスで回復し難い不可逆性の血管変化、血管反応を起こしたことをどう考えるか。
 血管病変は不可逆性の変化と捉えると、疲労の蓄積がとれたとしても、それは因果関係が切れることにはならない。そのように考えると、非常に範囲が広くなってしまうことは間違いない。極端な場合には、それをどうするか、それは除外するというと、3か月ぐらいのところで切ることは可能であるが、そうではなくて、その前の慢性ストレスを不可逆性変化ととるかどうかということによって違ってくる。

○参集者
 疲労がいつまでも持続するのか、あるいはとれるのかという解釈の仕方と、もう1つは、疲労とかストレスによって動脈硬化などの血管病変が進行するといわれているが、何十年もかかって進行していく動脈硬化が、短期間のストレスあるいは刺激で、どれだけ進行するかという証拠は現時点でも何も得られてない。進行するということは確かに考えられても、過大に評価することはないのではないかと思う。

○座長
 逆の考え方をすれば、3か月前までにストレスがずっとあって、もし発症するとすれば、その時点ないしその直後ぐらいで発症しているだろう。その後、普通の状態が続くのであれば、2、3か月で発症まではいかないだろうと考えてもいいのではないか。

○参集者
 病理解剖をしてみると、それぞれの臓器は、急性の侵襲に対しては非常に脆い面を持っているが、慢性の侵襲に対しては非常に強いものだという印象を持っている。例えば、劇症肝炎などでは多くの場合、死の転帰をとるが、慢性肝炎、肝硬変ではなかなか死なない。そういうふうに慢性の侵襲に対してはかなりよく適応していく能力が、人間にはそなわっているのではないかと思う。慢性の疲労があったときに、血管病変等が全然進まないということを言っているわけではないが、過大に評価することはないと思う。

○参集者
 今、指摘のあった点は非常に大事なことで、それをどう捉えるかによって、解釈が変わると思う。例えば、慢性ストレスというのは、半年か1年あるいは2年か、そういうレベルのストレスというのは、本当に血管病変を促進・増悪するのかということについての、確かなデータというのはない。ただ、疫学的に1つの要因、リスクファクターの1つにはなっているが、これは緩やかなものだと思う。そうだとしたら、そこまでは含めないということでいくと、いまの「過大なストレスは回復し難いもの」とはしないで、慢性の蓄積疲労は3か月で回復するというふうにすれば、非常にすっきりする。急性ストレスの場合は1か月、慢性ストレスの場合は3か月のようにする。
 この前の議論にもあったが、心筋梗塞は管理職が非常に多いということになると、肉体的なストレスだけではなくて、むしろ精神的ストレスの方が強いことから、それを客観的に評価するというのは非常に難しくなる。そこのところは除いてしまって、慢性疲労の蓄積という概念だけで捉えていくとむしろすっきりする。血管病変の進行を著しく増悪させたという話になると、今度は不可逆性の変化という話になってしまう。

○座長
 ただ、逆に言うと3か月か6か月でみるということは、その前のことは考えなくてもよいということを暗に言っているわけであるから、結局6か月間をみればよいということである。必ずしも期間を設定しなくても、慢性ストレスに関しては6か月の間をみるということでもいいと考える。誘因としては、急性ストレスは、原則として1日ないし1週間としていることから、そこへ1か月などという話にすると、混乱する。そのため、ここは削除してしまうか、「一定期間」という表現でとどめておくか、あるいは疲労の回復ということだけを述べておくか検討したい。

○参集者
 2頁の6行目「治療の状態などの特性」で、「の特性」というのは要るか。

○座長
 この「の特性」は削除することとしたい。

○参集者
 図1にストレスは悪い方向への因子として書いてあるが、社会的支持・支援は緩和要因として書いてある。そういったものを合わせた意味での総合的評価ということであるから、2頁の6行目に「治療の状態などの特性」とあるが、行動や対処パターンの傾向、ソシアルサポートということを入れた方がいいのではないか。

○座長
 ソシアルサポート、社会的支援の状況とかを加えることとしたい。
 では、引き続き、3(1)について、朗読をお願いする。

○事務局
 3の(1)について朗読

○座長
 労働時間に関して、基本になるところであるが、このような記述でよいか意見をいただきたい。前回の検討会で指摘のあった引用文献で他の因子を修正していないのではないかという点について、このような表現にした。多変量解析をやって、その上で結論を出している。コレステロールとか、耐糖能とか、肥満とかが関係して、精神的ストレスはなかったということをいっている。

○参集者
 3頁の17行目の「労働時間に対し、心筋梗塞り患はU字型を示した」というところで、7時間以下はむしろオッズ比が高くなったというのは、心疾患があった人であろう。多分、これは高血圧とか高コレステロール血症と重複する。多変量解析をすると消えてしまわないのか。

○座長
 消えてしまうかもしれないが、論文でそこまでは行っておらず、そのままの表現である。オッズ比からいけば、高血圧とか高コレステロール血症などの方が高い。そういうことも表現して入れたつもりである。
 総合的にいろいろな論文などから考えて、睡眠時間は5時間ぐらいが目安になるということを書いている。それに合わせて残業時間とか、そういうことを計算して出した。しかし、それは労働時間ということだけでみたので、本当はもっと他のファクターもいろいろ大きく関与することも示した。

○参集者
 不眠もそこには入るのか。むしろ、肉体的ストレスだとよく眠れるが、精神的ストレスだと眠れなくなる。その時の睡眠時間はどうやって計るのか。睡眠不足に不眠を含めると考えると、いいと思う。

○座長
 表6を見ていただければ分かるように、ずっと働いて、その後パッと寝るという意味ではなく、その間かなりゆとりを持たせている。普通の生活時間をとって、計算している。

○参集者
 長時間労働のみに着目したときに、週65時間という目安であるが、65時間以上でないと過労死と認めないようにとられる可能性がある。この65時間というところは、要するに長時間労働のみに着目した場合の1つの目安なんだということを強調しておいた方がいい。

○座長
 そのように修正したい。引き続き、3(2)~(7)について朗読をお願いする。

○事務局
 3の(2)~(7)について朗読

○座長
 ここでは、労働時間に対して修飾的な意味合いで考えなければならない要因を挙げてある。意見をいただきたい。

○参集者
 7頁の(6)の「精神的緊張を伴う業務」に関しての最後の段落に「以上のとおり」とあるが、それまではある程度精神的緊張が関与しているということなのに、「以上のとおり、精神的負荷と脳・心臓疾患の発症との間の量-反応関係は十分明らかとなっていないこと、精神的負荷要因は業務以外にも多く(中略)判断する必要がある」とあり、この最後の記述だけ読むと精神的緊張というのはあまり関係ないという感じに読める。その前に、「諸家の報告を総合すると」とか、バス運転手、タクシー運転手などたくさん出てくるが、これら全部を否定してしまっているような感じにとれる。

○座長
 「以上のとおり」を「ただし」にしたらどうか。

○参集者
 「一方」の前までは、どちらかというとネガティブにきて、「一方」からが肯定になり、「以上のとおり」でまたネガティブに変わる。論理がつながらない。

○参集者
 精神的緊張が関係あるのだと強調している報告は出ているが、その信頼性については、まだ十分に検討されていないということが前提にあるので、今の「ただし」以下のことが出てくる。

○参集者
 この「一方」というのを前の方に持ってきて、しかしながら、必ずしもはっきりしていない。したがって、以上のとおり十分明らかになっていないというふうに書いた方が、最後の結末には持っていきやすい。

○座長
 「一方」というのを2段落目ぐらいに持っていけばいいかもしれない。

○参集者
 「以上のとおり」のパラグラフは、サイコソーシャルな影響をネガティブに強調している。しかし、実際のところ最近は、ポジティブな研究がある。もう1つは、長時間労働とか、これまで挙げたファクターについて、どこまで本当に分かっているか。これまでの分、サイコソーシャルな以前の分は、かなりその影響を認めるといっておきながら、ここのサイコソーシャルな影響は、むしろ影響がないというふうにとれてしまう。

○座長
 最後は要するに、評価表をちゃんと用いて評価しましょうという姿勢である。

○参集者
 論文というのはポジティブな例ばかり出てきて、ネガティブな論文は論文としての価値がないので、パブリケーションバイアスで出てこないので、ネガティブはこうだというのは非常にバランスをとるのが難しい。

○参集者
 個々の論文ではそうだが、レビューを書く人は単にポジティブなものだけを採用するのではなく、ネガティブも考えながら結論を出している。

○座長
 ここにはマイナスの要因(認めなかった報告)も、全部表には載せてある。「以上のとおり」の中で3行目の「精神的緊張を伴う業務の過重性の評価は慎重に行われるべきで」と書いてあるから、そのように捉えられてしまうかもしれないので、それは削った方がいい。

○参集者
 ここのところは、他の要因に比べて評価が難しいという問題が入ってくる。

○座長
 まさにそういうことである。そのため、きちんと評価をしてほしいということである。

○参集者
 けれども、それはもうすでに研究のレベルでは、国際的には行われている。

○参集者
 個々のケースにおいて、評価することが難しいという面がある。

○座長
 そのため、良い評価表を作って、それで評価するということをいっているだけである。

○参集者
 そういう目でみると、どのパラグラフも最後には、「目安とすることができる」と付いている。そうではないこともあるのだから、十分に注意して評価しなさいというのが全部の趣旨になるのか。

○座長
 そういうことである。では引き続き、4、5について朗読をお願いする。

○事務局
 4、5について朗読

○座長
 最後のところになるが、評価期間をどのように定めるかということを示したところである。ここで意見をいただきたいと思っているのは、3か月ないし6か月を調査期間とするのだが、そのうちどのくらいに過重があった場合を業務上とするのかということである。全部が全部でなくてもいいということは明らかだが、そのうちどのくらいの期間、睡眠時間5時間ぐらいを妨げたら認めるかが一番重要になってくる。

○参集者
 先ほどの研究でも、例えば睡眠時間4時間が10日続いたとか、1か月続いたとか、そのデュレーションがなかなかない。

○座長
 調査期間は、何か月調査したとかというのはあるのだが、その中でどれだけ過重があったかというのは分からない。

○参集者
 まとめて考えてみると、特に慢性のストレスというものを考えたとき、最初にまず発症前3か月ないし6か月の期間を調査し、労働時間をみて、週平均65時間を超えていれば、他の要因は考えないで業務上にする。逆に、労働時間が1日平均7、8時間の睡眠がとれるような水準であれば、これは端的に業務外にする。問題は、その中間の場合で総合評価をしなければならない場合である。
 おそらく議論をしなければならない問題の1つは、相当長期間というのを、3か月ないし6か月とするのか、またはどこまでとるのかという問題で、これは先ほど議論をしたどれだけ間をおけば、慢性ストレスと発症との間の関係がなくなるのかということとの裏返しで、そこは平仄を合わせた方がいいということである。もう1つは、結局中間の場合には総合評価になるわけで、いろいろなリスクファクターが他に出てくる可能性がある。
 最高裁で問題になった事例は、たまたま他のリスクファクターがない例であった。そこで最高裁は、「他に確たる要因がない本件においては、業務起因性を認める」という判断をしている。そうすると、他にリスクファクターがあったときは、どういうふうに判断されるかというところが、一番問題である。
 従来の行政の説明との整合性という点で非常に気になっているところである。つまり、従来の行政の説明は、職業病は、あくまでも業務と疾病との1対1対応であって、それには医学的な経験則が必要という論理を組み立ててきたと思う。そうすると、この3か月ないし6か月というところで、医学的経験則が分からないという話になると、今までの説明の壁が崩れる。

○参集者
 医学経験則も変わってきてもかまわないと思っている。20年前は、今回のような文献はなかった。その後の研究などで、現在の医学経験則は、明らかに変遷している。

○参集者
 医学経験則が変わるということはいいが、今までは医学経験則だということで説明してきたものが、医学経験則でないとすると、行政上の便宜の話だということになり、考え方が変わってくる。

○参集者
 従来の職業病は、特定の職場内の有害因子に曝露されて起こってくる特定の病気を職業病とする考え方である。それは、単なる医学的経験則というよりは、医学的に確認された事実に基づいているわけである。ところが、この第9号による脳・心臓疾患の認定は、そのような縛りが小さくなっているかもしれない。従来からみると、昭和36年の認定基準では、超過勤務が続いたというようなものは認めないということを、明記していたが、今の時点では超過勤務の長いものは認めるということになっている。そういうことについて、同じ職業病の別表として示されているものの中で、完全な整合性がとれていない点があるように思われるが、このようなことは、法律的にみておかしいという感じはないか。

○参集者
 古典的な職業病についていえば、1対1対応で、医学的に因果関係が確認されているものが職業病とされており、第9号は、「その他業務に起因することの明らかな疾病」ということで、おそらく立法をしたときの考え方としては、医学上の1対1対応関係が、リスト化はできないけれども、個別的にみた時には、医学上の1対1関係が認められるようなケースということを、多分想定していたのではないかと思う。その意味では、全体の整合性ということから言えば、きちんと医学的に説明できるというようにした方が、平仄は合う。
 ただ、ほとんどの最高裁の判決も、「業務に起因することが明らかな疾病」という、その「明らかな」というところを大体無視した解釈をしていることから、第9号の過労死の部分だけが、全体の流れからズレていると思う。そのため、この3か月ないし6か月というところが、別表のリストの平仄という観点から、少なくとも医学的経験則という形で正当化できるのかどうか、というのがやや気になる。

○参集者
 先ほどもあったように動脈硬化は、進行性で慢性の病気であるから、あるストレスが、例えば1年前の1年間にすごく加わった場合、自然経過を超えて進行して、元に戻ることなく、その後、自然経過で発症したら、1年前の過重負荷はどうなるのだろうという議論は、多分すぐ出てくる。それで医学的根拠はどうなるかというと、それはなかなか難しい。その判断は、行政側の問題として線を引くのか。

○参集者
 1年前に程度は分からないが強い狭窄状態になって、それが続いていたとしても、必ずしも急性発症には関係がない場合があろう。例えば、冠動脈硬化は、75%までの内腔狭窄は、冠循環に大きな影響がないといわれている。

○参集者
 75%まで、ずっと1年間なっていたとして、そこにちょっとしたストレスで血栓ができて心筋梗塞になった場合、それは急性ストレスとしては表面に出ない。しかし、1年前までの75%までの狭窄をどう扱うのかというと、非常に難しい問題になる。そういう意味での関連疾患にはなるわけだが、そこまで入れるとしたらほとんど線が引けなくなる。

○参集者
 業務に関連した急性のストレスであるから、確かに強いストレスを受けるような事実があったかどうかということが問題になるのではないかと思う。

○参集者
 非常に簡単に言うと、セッティングとトリガー。セッティングというのは非常に長いストレスで、不可逆性に進行する。トリガーというのは発作であるから、何でもない時、ある日突然ポッと起こる。そのトリガーを短時間にするか何か月にするかは別として、それを急性ストレスとして捉えたとして、それが3か月間まで遡れば十分だと思うが、その前のセッティングまで考えようとすると、ずっと遡らないと、もう1年でも切れなくなってしまう。そういうことは難しいのではないかと思う。

○参集者
 脳・心臓疾患というのは、本来私病であり、個人の血管病変等が加齢、あるいはその人の生活習慣によって進行していき、発症の原因となる。そういう病気であるが、業務上の特別なストレスがかかった場合については、本来私病であるにもかかわらず、業務上疾病として認めることとしたのは、昭和36年からである。

○参集者
 そうすると、先ほどの不可逆性の変化という問題で、蓄積疲労の回復という問題でいったら、それを1年前まで求めるのは難しい。慢性の蓄積疲労というのを、回復するとみたら、どんなにみても6か月ぐらいだと思う。それ以上をみようということになると、蓄積疲労というよりも、長期の慢性ストレスでの、血管の不可逆性変化が起こったということまで起因としてとるのかどうか。そうすると、「1~6か月間、場合によっては過去1年以上にわたり」のところも最終的にはあいまいになってしまう。
 血管病変が不可逆的というのは、いわば常識的なこととして教科書にも載っているし、成書にも書いてあるが、本当に不可逆的なのかどうかは厳密に言うと分かっていない。要するに医学的に詰めていくと、必ずしも分かっていないことを概念的に、多くの人の了解事項としている。

○参集者
 血圧が正常に戻るということと、血管病変が不可逆的ということは、矛盾はしないのか。

○参集者
 高血圧はあくまでも動脈硬化のファクターで、動脈硬化は減少することはあるが、通常は変わらないか増悪するという不可逆性の器質的な変化として考えられている。高血圧は極端にいえば、どんどん変わる。それが高めにずっと続いていても、職業が変わると下がるというのもあり得る。

○座長
 3~6か月の間のどのぐらいを実際に調査対象とするか。また、5時間睡眠が6か月の間に何日ぐらい続けば業務上と認めるかということが、一番大きな問題になる。何か意見があれば、提案していいただきたい。まだ解決しなければいけないところがあるが、ドラフトの検討は、ここまでとし、本日の議論等を踏まえ、整理することとしたい。
 以上をもって、本日の検討会を終了する。

照会先:労働基準局 労災補償部補償課 職業病認定対策室職業病認定業務第一係
    (内線5570)

2001/05/14