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「第3次答申-活力ある日本の創造に向けて-」の決定・公表に当たって

「第3次答申-活力ある日本の創造に向けて-」の決定・公表に当たって

1 はじめに
 長期経済停滞にある我が国が、潜在的な成長力を取り戻し、豊かな国民生活を実現するためには、戦後、長い間にわたって強固に築き上げられてきた経済・社会システムを抜本的に変革する「構造改革」の推進が喫緊の課題であり、その最も重要な施策の一つが、事業者間の競争と消費者・利用者の選択肢拡大を通じて、新規需要・雇用を創造する規制改革である。
 政府においても、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」(平成15 年6 月27 日閣議決定)の中で、「民間の活力を阻む規制・制度や政府の関与を取り除き、民間需要を創造する。
」と宣言し、規制改革・構造改革特区を具体的取組の筆頭に掲げている。
 総合規制改革会議(以下「当会議」という。)は、以上のような重要性の認識の下、総理からの諮問を受け、設置期限の最終年度に当たり、これまで以上に、より積極的な調査・審議を行ってきた。
具体的には、平成15 年5 月6日の会合以来、全委員による会議を10 回、ワーキンググループを114 回開催し、多くの関係団体、関係府省等からのヒアリング等を含めた審議を重ねてきた。
本日、その成果と今後に向けた課題などをここに取りまとめ答申する。

2 本年度の取組の特徴
 (1)規制改革推進のためのアクションプラン
  当会議では、発足当初から、医療、福祉、教育などの「官の関与の強い生活者向けサービス分野」(社会的規制分野)について、潜在する巨大な需要・雇用の創出が可能な分野と捉え、「システム全体の変革」を推進してきた。
  また、昨年度は、事務・事業を政府が自ら行うか、または公的な関与が強く株式会社等の参入が原則禁止されている医療、福祉、教育、農業などの分野を「官製市場」と位置付け、民間開放の促進に取り組んだ。
  しかしながら、これら「官製市場」分野の規制改革は、当会議及び前身の規制改革委員会などの長年にわたる取組にもかかわらず、これまで一向に前進が図られてこなかった。
そうした状況を踏まえ、本年度は、いわば規制改革を象徴する「重点検討事項」を「規制改革推進のためのアクションプラン」として定め、経済財政諮問会議及び構造改革特別区域推進本部との連携を図りながら、当会議の有するあらゆる機能・権限等を行使しつつ、集中的な審議を行ってきた。
その過程では、総理のリーダーシップによる政治的な判断や指示が下され、これまでほとんど進展のなかった最難関事項について、改革に向けた大きな一歩が踏み出されることとなった。
今後は、こうして動き始めた改革への歩みを一層加速することが重要である。

 (2)分野横断的な取組など
  ① 「構造改革特区」等による「官製市場」改革の推進
   「官製市場」の改革は当会議における最重要課題であり、上述した「アクションプラン」における重点検討事項のみならず、「官製市場」全般についての分野横断的な調査・審議を昨年度に引き続き行った。
その際には、当会議の提言に基づき創設された構造改革特区制度の推進母体である「構造改革特区推進室」との緊密な連携・協力により、特区における規制改革と全国規模での規制改革を同時並行的に進めてきた。
  ② 我が国の国際的な魅力向上のための規制改革
   現在、世界各国・各地域において国際的な経済連携が活発化する中、我が国がこうしたグローバル化に対応し、経済を活性化するためには、「ヒト(労働)」、「モノ(商品)」、「カネ(資本)」の自由で円滑な移動を可能とすることが重要であるとの認識の下、本年度新たに「国際経済連携ワーキンググループ」を設置し、精力的な審議を行った。
  ③ 「規制改革集中受付月間」の推進
   当会議が中心的に取り組んできた「経済社会各分野のシステム全体の変革」に加え、事業活動等の現場から生じる「個別の規制改革要望」にも積極的に取り組むことが重要である。
そうした認識の下、本年度は、既に実績を挙げている構造改革特区制度の特区提案と同時に、全国規模の規制改革要望を受け付ける「規制改革集中受付月間」を、6月、11 月の2度にわたり設け、関係府省との検討・調整プロセスを公開しながら、短期間での対応を行うなど積極的に推進した。
  ④ 規制に関する基本ルールの見直し
   規制改革を一層進展させるためには、規制そのものの質的な管理に着目した「規制に関する基本ルール」の再構築が必要であるとの認識の下、「行政手続法」、「パブリック・コメント手続」、「日本版ノーアクションレター制度」の見直しや、RIA(規制影響分析)の導入など、包括的な審議を行った。
また、当会議を中心とした規制改革行政全般のレビューや規制改革推進体制の在り方についても併せて取りまとめを行った。
   当会議は、以上のような活動のみならず、従来から取り組んできた個別分野についても、新規課題の発掘・深堀等を含め、積極的な調査・審議を行った。
その結果、本年中に、本答申に記載されているとおり、合計約340項目にわたる多くの成果を得ることができた。
3 今後に向けて
 規制改革の推進は、必然的にこれまで規制に守られてきた既得権益勢力との衝突を招くことが多い。
当会議は、民間の委員・専門委員で構成される中立的な第三者機関という立場ゆえ、聖域なく困難な課題に取り組むことができたとも言える。
 他方、規制改革の検討対象は、「個別規制の緩和・撤廃」から「規制制度・システムの改革」へと移行してきたが、その延長線において、必然的に「官業の民営化・民間開放」といった行政改革や競争政策などの問題にまで拡大してきている。
 こうしたより困難な課題への取組を進めるためにも、民間人主体の推進体制を更に強固なものとするなど、政府においても、規制改革の推進に一層強力に取り組むことを望みたい。
 そして、当会議としても、来年3月の設置期限までの間、さらなる規制改革の推進に、できる限りの努力を続けるとともに、一層の規制改革の推進を図る後継組織への円滑な業務の移管を図る必要があると考える。
今後とも引き続き、国民、関係各界のより一層のご理解とご協力をいただきたい。

2003/12/22