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「課長・係長サービス残業110番」報告 弁護士 下川和男(民主法律時報400号・2005年9月)

弁護士 下川和男

 9月10日(土)午前10時から午後3時まで、「課長・係長サービス残業110番」を実施した。
 「ホワイトカラーエグゼンプション」が取りざたされる中で、実際「課長・係長」といういわゆる管理職に対する時間外手当についての状況を把握し、問題提起になればという企画で・った。

二、マスコミの反応はよかった
 「110番」に当たり、司法記者クラブで事前レクを行った。特段提訴絡みではなかったが、趣旨などに加え、実際の労働者の給与明細を資料として配付した。それは、課長になる前後の給与明細であったが、課長になる前とあとで支給総額において15万円減少しているというものであった。これはインパクトがあったようだ。
 各社が事前報道をしてくれただけでなく、当日はテレビ局2社がニュース報道のため取材にきた。

三、相談件数50件
 衆議院総選挙投票日前日ではあったが、報道の影響もあり、50件の電話相談が寄せられた。当日は弁護士6名、司法書士5名が電話相談に対応した。
 ① 相談者
    労働者本人    22件
    妻          15件
    母          3件
    父・その他     7件
    不明         3件
 ② 役職
    課長・係長 14件
    その他       36件
 ③ 時間管理
    タイムカード・IDカード 18件
    自主申告      6件
    不明        26件
 ④ 時間外手当
    支払なし      29件
    定額支給     12件
    申告分の支払   2件
    不明         7件
 ⑤ 労働組合の存否
    あり         9件
    なし        22件
    不明        19件

四、課長・係長にも時間外手当が支払われなければならない
  「課長・係長」は、労働基準法の「管理監督者」には当たらない。使用者は、原則として一日8時間、一週間40時間を超える時間外労働割増賃金を支払わなければならない。今回の電話相談の結果、課長・係長14件の電話相談のうち、12件が一切時間外手当が支払われていないという相談であった。やはりという感が強い。客観的な労働時間管理についても50件中18件しかなされておらず、労働時間の客観的な管理が今後重要な問題となる。使用者任せにせず労働者自身においても自らの労働時間を把握し客観的な証拠として残していく必要がある。

五、これから
 今回の電話相談は、殆ど在職中の相談であった。在職中に名乗りを上げて会社を告発することは困難で・る。「労働基準オンブズマン」弁護士として管轄の労働基準監督署へ「違反通告」として問題提起していきたい。すでに「110番」での電話相談をした方から資料提供を受け、違反通告の準備を進めている案件もある。
 今後、管理職の時間外割増賃金について、力を入れていきたい。

(民主法律時報400号・2005年9月)

2005/09/01