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2001年権利討論集会第2分科会報告 弁護士 小川和恵(民主法律時報345号・2001年2月)

2001年権利討論集会開かれる

全体会報告
 原点に返ることの重要性

 2月17~18日、箕面観光ホテルにおいて、2001年権利討論集会が約220名の参加を得て行われました。
 3年ぶりの宿泊形式となった今回の全体会は2部構成で、第1部(労働現場からのレポート)では、浜口孝さん(銀行職自連)と柴田外志明さん(ダイハツ革新懇)より、銀行と自動車メーカーの職場実態の生々しい報告がなされました。
 銀行では、成果主義のもとで、「銀行の儲けにつながる投信をやらない客は客じゃない」といった意識が広がり、職場の荒廃が進んでいること、自動車メーカーでは、コンピュータ化で長時間労働・サービス労働が広がり、開発期間短縮による実車テストの省略で「お客さんがテストドライバー」となっていることなどの恐ろしい実態が明らかとされ、「働きがい」(いいモノを作り、いいサービスをすること)が団結の基礎となるのではないかと提起されました。
 次いで第2部は、林直道先生から、「21世紀の資本の戦略と労働運動のあり方」と題してご講演いただきました。林先生のお話は講談風で爆笑の連続でしたが、その中で、資本の21世紀戦略はケインズ主義と新自由主義の併用にあるが、リストラ、中小企業いじめにより国民の購買力を低めるという誤りを犯していること、また未曾有の国・地方財政危機は大増税かハイパーインフレをもたらす危険が大であり、①無駄な公共事業の削減、②銀行への公的資金注入中止、③消費拡大による所得税増収が必要であることが強調されました (最近社会問題化している学力低下の問題にも触れられ、いっそうの学習の必要性も痛感しました)。混迷の時代にこそ原点に返ることの重要性を認識した次第です。そして最後に社会革新について熱っぼく語られたのが印象的でした。
 その後、7分科会に分かれ、2日間にわたって活発な議論がなされました。そして最後に、労働裁判改革、働くルールの確立、憲法改悪反対についての3本の集会決議を採択し、盛会のうちに終了となりました。
 なお、林先生の近著『恐慌・不況の経済学』(新日本出版社)は、経済学の基礎から始まり、バブル恐慌の本質(循環型恐慌に消費税増税が追い打ちをかけた構図)、新自由主義の問題点、好景気を続ける(最近失速気味ですが)アメリカ経済や東アジア経済を破滅させたヘッジファンドの分析、多国籍資本に対する規制の必要性なども展開されており、たいへん勉強になること請け合いです。まだの方はぜひお読みください。
   (事務局長 城塚 健之)

第2分科会
 いのちと健康を守るために

 第2分科会では「いのちと健康を守るために」というテーマで、「予防」をキーワードに、過労死・過労自殺やけい腕・腰痛などの職業病はなぜ起こるのか、認定・裁判における現在の到達点とそれをいかに予防に生かしていくか、予防という観点からの企業責任追及・刑事告訴等の活用可能性、等について2日間にわたり議論を行いました。
1日目は、まず職業病の現場から、東大阪市職労の元田雅美さんから、保育士の仕事の実態・なぜ腰痛・けい腕などが起こるのかについて、続けて、過労死の現場からということで、娘さんを23歳の若さで過労死で亡くされた土川純一さんから報告がありました。
これら現場からの報告を受けて、西淀病院の田尻俊一郎医師より、医学的観点から、過労死・過労自殺と職業病の共通項、予防のためにはどのような視点が必要かといったお話がありました。見えにくい・蓄積性など、これらにはかなり共通項があること、予防のためには、職場・労働組合の取組みこそが重要といった指摘がなされ、参加者の皆さんは熱心にメモをとっておられる様子でした。
 2日目は、まず、過労死連絡会の松丸正弁護士から最近の判例・認定例の成果・到達点、企業責任追及のための刑事告発の可能性等についての報告がなされ、併せて「労働基準オンブズマン」についての提案がなされました。
 その後、各現場・労働組合から、予防のための取組みの実践例や、認定を勝ち取るまでの取組みについてなどの報告が行われ、活発な議論が行われました。その中で、予防という観点から職場・労働組合が取組むことの重要性や、予防のために刑事告訴も含めた様々な法的手段が活用しうるということが改めて確認されました。
 今回は、約25名の参加者があり、時間が足りなくなるほどの活発な議論が行われ、成功だったと思います。参加者それぞれにとって得るものがあった分科会になったのではないでしょうか。
       (弁護士 小川 和恵)

 (民主法律時報345号・2001年2月)

2001/02/01