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第12回過労死弁護団全国連絡会議総会に参加して 弁護士 角野とく子(民主法律時報329号・1999年10月)

弁護士 角野 とく子

一、今年の総会開催地は広島で(会場は安芸グランドホテル)、大阪からは松丸正先生、岩城穣先生、村田清治先生、私の4名が参加しました。あいにく初日の9月24日(金)は、朝から中国地方を大型の台風が襲ったため、新幹線は途中で止まるわ、遅れるわでやっとのことで夜7時過ぎの懇親会から始まりました。新幹線の中で長時間缶詰状態にされた人、東京から新幹線で来て、新大阪で一旦降りてなんばで待ち時間をつぶし、夜の11時半過ぎにホテルに着いた人、前の晩から広島入りして朝からホテルが全館停電となり陸の孤島と化した中、「今回の会議は参加者激減でなくなってしまうのではないかしら。」と不安な気持ちで過ごした人(私です。)等々、今年の総会にまつわる思い出は、参加した人それぞれの胸の内にしるされていることでしょう。来年の総会(2000年9月29日、30日)が、台風を心配しないですみそうな仙台に決まったのも、むべなるかなといったところです。

二、こうして本会議は、翌25日の午前中だけとなりましたが、昨年の総会以降の活動報告や、今年9月14日に出された過労自殺の新しい認定基準の解説等、充実した内容となりました。
 まず最初に川人博幹事長より、この1年間の過労死労災補償をめぐる活動の概況と、今年9月14日に労働省が出した過労自殺の新認定基準、脳・心臓疾患等労災補償の情勢、団体生命保険に関する判決と今後の課題等についての報告がありました。
 不況による倒産や、リストラ、人員整理が職場のなかで進められています。職場に残った人にかかる負担はますます重くなり、過重労働・長時間労働・深夜労働が続く中で、過労死・過労自殺は後を絶ちません。今年6月19日に実施された全国一斉の過労死110番に寄せられた相談件数は、10年ぶりに300件以上(うち、死亡相談は98件)となったそうです。
 この1年間における全国の過労死労災補償をめぐる活動としては、第1に、過労自殺の労災認定、訴訟などで前進し、新しい労災認定基準にも運動の成果が一定反映されたことが報告されています。
第二に、脳・心臓・呼吸器の労災認定、損害賠償、行政訴訟、交渉においては、引き続き成果を得ている一方(とりわけ、ぜん息事案で勝訴した名古屋地裁99年9月13日判決・鈴木事件に注目)、行政訴訟での国側の巻き返しや、損害賠償訴訟での遺族側敗訴(京セラ事件・秋田地裁99年7月19日は全面敗訴)の事案もうまれていることが指摘されました。

三、このような現状をふまえ、今後も過労死・過労・目殺の労災認定獲得のための活動や各訴訟で勝利し、被災者・遺族の救済と職場の改善をめざすこと、過労自殺については新認定基準を被災者・遺族の立場に立ったものとして運用させるような取り組みをすすめること、過労死・過労自殺を予防するために、社会的アピールを強めることなどが、これから1年間の基本方針として確認されました。
 わたしは各地の報告や解説を聞いたり、大阪以外の場所で活動されている方たちとの交流を通して、おおいに刺激を受け、現在担当している事件の報告を来年はできるようになりたいと強く思いました。参加して本当によかったと思います。
 総会では今年も過労自殺の新認定基準の他、多くの資料が配られました。これらは皆ファイルしてありますので参照を希望される方は、どうぞお声をかけて下さい。
(民主法律時報329号・1999年10月)

1999/10/01