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問われている組合活動家スタイル 化学一般関西地方本部書記長 北口修造(民主法律226号・1996年2月)

化学一般関西地方本部
書記長 北口修造

  労働組合活動家(専従者)の生活スタイルについて、原稿を依頼されたが、そのスタイルは性別・年代によって千差万別である。
  共通点は、①あんまり勉強しない、②アルコールを飲む機会が多い、③睡眠不足の傾向にある、④家事・育児時間は皆無(男性)といってよい。
  理想的なスタイルは、学習に関して、①日常的に新聞の記事をよく目を通し(政治・経済・労働)、必要な記事を切り抜いて各課目ごとにファイル(コピー)すること、②運動に関わる課題に関して専門書(論文)を通じ、理論体系を理解する、③月に最低一回書店に立ち寄り、書物あさり(小説を含む)をする、④月に数冊の書物を読む。これを貫くにはかなりの時間を要するので、アルコールを飲む時間は制限される。
  そんな活動家がいるのだろうか?。それに近い方はいるんです。大阪労連内で金属産業のK氏がもっともよく勉強しているし、文筆にかけても長けている。講演活動も労組活動家ではトップ水準である。家事・料理にかけては奥さんも腕負けである。口も肥えているし割烹店の穴場も通である。子どもの育児や教育にも徹してきた。今では3人の娘たちは大学に在学中で、次女は国内の大学を休学してアメリカに2年間留学中である。家族同行の海外視察も2度あった。
  もう1人紹介しておきたい。東京労連事務局長が昨年60数万字のサスペンス小説を出版した。一気に読ませてくれる内容であった。たいしたものですよ。
  人との交わりに関しては、例えアルコールを飲む機会でも、情報を吸収することが大切である。産業・業種・個々の企業・職場・地域・家庭なと、ナマの情報を聴取することは非常に具体的なので記憶に残る。私見をはさんで議論すれば、さらに深まる。とくに、先生方(学者・弁護士・医師など)との意見交換は有意義である。しかし、なかなかその機会に恵まれる活動家は少ない。情報交換・対話は親密感をつくりだしてくれる。会合終わればスナック通い、カラオケ文化も一時の発散としてはいいんだが、それが中毒のように溺れると、刹那的で孤独である。歌も少々うまくなるだろう。きちんと清算していればいいお客さんとお誉めの言葉も戴くが、どこまで「いい」お客さんか、「ツケ」がたまったら、陰の声といったらひどいものである。
  健康保持・増進、趣味には、スポーツや山歩き・散策も良い。この世界となると限られる。一つは時間のゆとり、もう一つは経済的ゆとりが要求される。例えば、ゴルフである。1回2万から3万円を要する。スナックでカラオケを唄っている人が、ゴルフに足を突っ込むには月額10万円の小遣いの裏付けかなければできない。両方こなす人は、あんがい家計に負担をしていない層である。サラリーマンの小遣い平均額毎月54,020円(95年・第百生命調査)と比較すれば飛び抜けている。
  最近、海外視察(旅行)が一般化(海外旅行者1300万人)してきている。しかし、活動家と言われる人たちはまた個人の出費で行くにいたっていない。その方面に出費するゆとりがないことを意味している。しかし、海外視察経験者もかなりいる。それは海外視察という名目で、組織から一定額あるいは全額を出してもらっての海外旅行である。海外視察なら短文でもいいから報告文書が出て当たり前であるが、それらしき物はない。自費で海外視察をしている者ほど、凡帳面に紀行文やその国々の政治・経済・文化・国民生活などの諸論文を発刊している。
  趣味の少ないのが組合活動家とこれまでから言われてきた。音楽・演劇・美術などの鑑賞(観賞)に出向く人は限られている。時たま、スポーツ(高校野球・ラグビー)の観覧に出合うことかある。やはり文化・芸術には弱いのだろうか。
  おシャレとなると全港湾のS氏だろう。それ以外は目につかない。毎日変わり映えのない服装である。少なくとも、夏・冬のスーツは各3~4着、ジャケットも同様に3着は必要だ。ワイシャツも挑え品でスッキリ着こなしたいものだ。ネクタイは季節やスーツの色彩にそって毎日変えたいものだ。その点S氏の服装は日替わりである。フレッシュさを感じさせてくれる。おシャレの殺高は靴・靴下・ハンカチであると言われている。しかし、靴にいたっては、1年間1足か2足(靴も哀れ)で履きつぶしで履いている活動家もいるのである。
  年代の割合に重みのない活動家も沢山いる。何年活動していても、専門分野に関するノーハウを持ち合わせていない。社会保障を語れても賃金については語れない人もいる。労働相談が盛んになっている。労働基準法、労組法、労働安全衛生法、社会保険法の知識や実務も要求されている。活動家と言われる人が、専門家に電話相談するのもいいが、自ら勉強して答えてほしいものだ。ドス黒い顔、睡たげな表情をしていてはいつかは組合員から見放される。まして深夜族のレッテルを貼られるよぅになったらもうおしまいである。
  救いの道は、職場の労働者と同じ生活スタイルを身につけることに心がけることではないだろうか。
(民主法律226号・1996年2月)

1996/02/01