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大阪過労死問題連絡会活動報告 弁護士 脇山 拓(民主法律214号・1992年8月)

弁護士 脇山 拓

一 今期の活動報告
1 認定状況
  今期は、業務上認定獲得が相次いだ期ということができる。以下、簡単に認定された事件を紹介する。
 ① カルビー要田事件(岐阜労基署・九一年七月二九日決定)
   被災者(死亡)は包装エンジニア(主任)。交替制勤務であるが、早出残業や居残り残業が常態化。休日も関連学習や風呂敷残業に追われていた。
   遺族が広島、工場が岐阜、相談を受けたのは大阪という状況の下で、非常に幅広い支援体制ができ、岐阜労連から連合参加の組合まで支援しての運動の盛り上がりで認定を勝ち取った。
 ② 協和土木蓑田事件(中央労基署・九一年一〇月二日決定)
   被災者(救命・後遺症有り)はダンプカー運転手。昼勤と夜勤の不規則勤務。昼夜勤の連続勤務も常態化していた。
   支援体制はなかったが、走行実験なども行い勤務実態を具体的に立証し、認定された。
 ③ K事件(西野田労基署・九一年一〇月二日決定)
   被災者(救命・後遺症有り)は照明装置の設計・制作技術者。所定は午前九時から午後六時であるが、長時間勤務が常態化。出張過多。
   支援体制はなかったが、勤務の過重性を認めて認定された。
 ④ 東海運輸川口事件(羽曳野労基署・九一年一二月一三日)
   被災者(死亡)はクレーン運転手。早朝六時から時には深夜一一時に及ぶ長時間労働。
   運輸一般等の支援を得て、認定を勝ち取った。
 ⑤ B事件(九二年六月四日)
   被災者(救命・後遺症有り)は自動車整備工。大阪北港埋立地内の整備工場に勤務。
   発症直前のタンクローリー横転事故による三日間連続の不眠作業に過重性を認め、認定された。
  全国的に見ても、これほど連続して認定を勝ち取れているところは大阪だけである。その要因には、東京ほど労働省の締め付けが厳しくないということもあるであろうが、多くの労働組合が支援活動に取り組み、認定担当者に対する教育が進んだというこれまでの運動の成果があるのは間違いなかろう。
  他労、不支給決定となった事件の主なものには、NTT熊谷事件がある。
2 一一〇番活動
  今期は、六月二〇日に「お父さんの働きすぎ相談」と題して全国一斉一一〇番の一環として行った。
  相談件数は、一〇件(昨年は三四件。これまでの累計では二八一件の相談となる)。うち労災相談は五件。五件は働きすぎ相談であった。
3 家族の会の活動
  今期は、平岡事件を題材として作成された「突然の明日」上演にむけて活動が行われた。
4 連絡会一〇周年
  今期で大阪過労問題連絡会が発足して満一〇年となった。そこで九一年二一月六日にささやかなレセプションを行った。当日は、記念企画として桂福団治さんの落語を行うなどして、参加者に楽しんでいただいたと思う。
二 問題提起
  被災者と遺族の救済という点からは、確実に認定例を積み重ねてきているのは評価できるであろう。
  しかし、今期の認定例の認定理由の特徴としては、恒常的な過重労働を理由とした認定を避け、子細な事件をことさらに取り上げて、災害的出来事が存在したことを認定の理由にする事例が目立つ事である。
  逆に、こうした事件が特に見当たらないと、長時間労働を認めながらも、過重な業務と言えないとして業務外の決定がされている。
  大阪過労死問題連絡会の関わった認定事例で、新認定基準の過重負荷概念を正面から活用したものは、いまだ平岡事件のみであり、この点をどう突破するかが大きな問題である。
  運動という点では、一一〇番活動の広報問題がある。今年は、例年のように記者会見を行ったにもかかわらず、大阪版の記事となったのは一紙のみ。一一〇番をやるというだけでは記事にならないという状況がある。
  これは、過労死が日常的な課題として認知されてきたことの現れでもあり、ある意味では歓迎すべきことであるが、今後どうやって行くか工夫が必要である。

三 来期の活動方針
1 月一回の連絡会例会を開催し、「駆込み寺」として、被災者や遺族の相談を受け付ける。現在予定されている例会開催日は、九月九日、一〇月一四日、一一月一一日、一二月九日、いずれも午後六時から、場所は民法協。
2 個別事件の労災認定にむけた活動。とりわけ、重要な論点を持つ事件が多数審査官のところで停滞しているので、審査請求事件の弁護団相互の交流等審査官対策を検討することが要求される。
2 過労死関係事件の情報交換の場としての「過労死通信』の発行
3 過労死一一〇番の開設。なお、過労死一一〇番常設窓口は、池田弁護士の留学に伴い、○六-九四二-七八六〇(大阪中央法律事務所・担当弁護士、脇山拓)に変更された。
4 例年、勤労感謝の日前後に行ってきた働きすぎを考える企画については、現時点では未定である。
(民主法律214号・1992年8月)

1992/08/01