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審査会で業務上決定、大島過労死事件 弁護士 下川和男(民主法律263号・2005年8月)

弁護士 下川和男

1,事件内容
  被災者大島秀敏(昭和22年12月1日生)
  発症日   平成10年5月26日(クモ膜下出血)
  死亡日   平成10年6月17日(死亡時年齢50歳)
  事業場   (株)沢村製作所 陳列棚の製造販売
                  取締役営業部長
昭和49年5月入社  当時営業は被災者ともう1人
昭和59年からは営業担当者は1人
平成9年1月     社長の子が入社
営業担当者であったが、ほとんど仕事全般の責任者であった

2,申請などの手続き
  労災申請(東大阪労働基準監督署)    平成11年11月19日
  不支給決定               平成12年4月14日
 労基署に不支給決定の理由を聞きに行くと、午後5時以降は飲酒をして雑談しており仕事をしていないという事業場からの聴き取りを受けて不支給としたということ
  審査請求   平成12年6月8日
  請求棄却   平成13年5月9日
  再審査請求 平成13年5月30日  
  口頭審理 平成14年6月20日
    陳述書などの外審理のための処分申立書(事情聴取をするよう)
  取消訴訟・損害賠償訴訟提訴  平成14年12月2日
  不支給決定取消裁決  平成17年1月7日
  労基署による支給決定 平成17年2月10日

3,再審査請求口頭審理に当たり取り組んだこと
  一件記録が届いて、申請人が俄然頑張りはじめた。被災者の元取引先などを訪ね全国を行脚する。また会社の前を見張って夜遅くまで仕事をしていることを確認するなど、申請人の執念を感じた。そして取引先や元同僚の陳述書を作成し、口頭審理に際して、審理のための処分申立を行った。
  労働保険審査会は、元同僚など5名に対して照会書を送付、事情を把握した

4,裁決書の概要
  タイムカードの打刻は 概ね午前7時から午後9時頃まで。
審査会は、タイムカードに出勤・退勤時刻の差(拘束時間)から1時間休憩時間をとったものとして、労働時間をとらえた
  1~4か月の時間外労働が1月平均80時間を超える。加えて、被災者の業務が、営業にとどまらず広範囲にわたっていることからその過重性も評価している。

5,さいごに
  審査会裁決書で書かれていた内容は、本来なら東大阪労働基準監督署段階でなされるべきものであった。その意味で調査に偏りがあったことは否めない。ただ、労働保険審査会が逆転裁決をした背景にはタイムカードという客観的な記録があったことが大きい。
現在、会社に対する損害賠償請求訴訟が地裁の最終段階にある。
(民主法律260号・2005年2月)

2005/08/01