前会長・田尻医師からのメッセージ
このHPにアクセスして下さった人たちへごあいさつ
故・田尻 俊一郎先生からのメッセージ
大阪過労死問題連絡会・前会長
医師
労働衛生コンサルタント
一層重要となってきた過労死問題
私たちの大阪過労死問題連絡会が生まれたのは1981年ですから、もう20年近くも前のことになります。それ以来この会は、細々ながら今日まで、働く人たちと共に活動を続けて来ました。
しかしながら、いわゆる過労死問題が社会的に問題となり、国際的にも「KAROSHI」として注目されるようになったのは、1988年の私どもが開いた「過労死シンポジウム」以来のことです。その後、10年を超える年月がたちましたが、私たちの願いに反して、今もなお重要な問題であり続けています。それどころか、最近では「過労自殺」も注目を浴びるようになり、最高裁でもこれを認めるような事態にまでなっています。
働く人たちが幸せを求め、豊かさを求めて働き続け、それが原因で健康を損なったり、命を縮めたりしている現実は、かえってより厳しくなっているようにさえ見える昨今です。
連絡会が設立当初より目指してきました、被災者の救済、過労死のない職場をの切実な願いが完全に実現するには、まだまだ時間が必要なように思われますが、私たちはこの目標に向かってあくことにない努力を続けたいと願っています。
過労死とは-どんな場合をいうのか
この過労死という言葉は、1982年に細川、上畑、田尻の3人の研究者・医師によって出版された『過労死 脳・心臓系疾患の業務上認定と予防』(労働経済社東京)という本で使われたのが、社会的に提起された最初のものです。
その概念や定義は、学問的には難しい言葉でいろいろと言われていますが、わかりやすく端的に言えば、「仕事での無理のために、後に重い障害を残すような、あるいは生命に危険を及ぼすような病気になった場合、労働者の当然の権利として労災認定がなされ、救済されなければならないようなケース」のことと思っていただければよいでしょう。
従って、現実にはその病名は、脳出血やくも膜下出血などの脳血管障害、心筋梗塞や悪性の不整脈のように、突然の不幸ということが多いのですが、必ずしもこれらに限るものではありません。
なぜなら過労が原因で起こる病気は脳や心臓に限らないからです。
これまでにも胃潰瘍で認定された事例もありますし、病名が確定できないままで認定された事例もあります。だから、仕事が原因で、あるいは仕事での無理が引き金となって起こった場合には、全て業務上ではないかと検討してみる値打ちがあると考えています。
また、私たちは「過労死」という言葉を使っていますが、不幸にして亡くなった場合だけが問題となるわけでもありません。幸いして救命されたとしても、仕事の影響が強いと判断される場合には、認定される可能性はあるのです。
実際、これまで認定されたケースで救命された事例はたくさんあります。
どんな病気でもというわけにはいきませんが、そのままでは命に関わる可能性のあるような病気だったら、労災で救済される権利があるといえましょう。
このホームページにたくさんの認定例が紹介されていますので、ご参考になさって下さい。
過労死問題の背景
過労死がなぜ起こるのか、ということへの答えは、あまりにも当たり前すぎますが、基本的には「仕事があまりにもエライから」です。
ここ10年、15年という間に、労働環境は著しく様変わりしてきました。
目を見張るような科学技術の進歩、コンピュータの導入などの中で、確かに昔のようなしんどい仕事、つまり筋肉を激しく使う仕事は少なくなってきました。いわゆる「軽作業化」です。
しかしながら、それはそのまま仕事が楽になったことを意味しません。楽になった分だけ労働密度が高まり、労働時間が長くなりました。同時にまた、精神神経の緊張度も高くなり、ストレスも強くなっています。さらに人間の生理に反するといわれる夜勤交代勤務も増える傾向にあります。
こういった職場の変化が、労働による負担、つまり労働苦を強めて、これまでとは違った疲労が慢性化して、ついには過労にまで至っているのです。
さらにまた、働く人たちの高齢化も無視しがたい一因となっていると思われます。
ある年齢に達すると、誰しも慢性的な病気を持ちながらも働き続けなければなりません。例えば、高血圧があるとか、糖尿病があるとか、働くことはできるが無 理はしない方がいい、といった労働者は決して珍しくなくなりました。これらの方々が、自分の意に反して無理せざるを得ない状況で、
持病が悪化してついに倒れた、という状況が少なくありません。
こんな方々もこれまでに培ってきた能力を発揮しながら安心して働き続けられるように、そんな労働条件をというのが多くの人たちの願いだと思うのです。
過労死の底にある問題を明らかにすることで、こんな当然の願いを実現したいものだと思っています。
連絡会はいつも皆さんのそばにいます。
こんな考え方を基礎にして、私たちの連絡会は過労死問題の「駆け込み寺」としての活動を続けてきました。
この会には、労働者の皆さんと共に戦ってきた長い歴史があります。
この会には戦いの経験豊富な労働者も結集しています。
たくさんの認定や裁判に関わってきた弁護士も医師もいます。
皆さん方のお役に立つと思います。
どうぞ、このホームページを見ての疑問がありましたら、何でも遠慮なくどしどしお寄せ下さい。
こんなことで倒れたのだが労災にならないだろうかとお思いの方は、是非連絡を取って下さい。
また、自分の体への不安や、ご家族の労働状態に不安がある方など、いつでもご相談に応じます。
ご連絡下さい。
何かお役に立てることがあると思います。