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労災申請(1)──手続

 夫の死亡は過労死だと思いますので、遺族の手で労災申請をしたいと考えています。実際に労災を申請するにはどのような手続をとればよいのでしょうか。また、申請した後の手続はどのような流れになるのでしょうか。

◆通常の民間労働者の場合

 後掲の図1のとおり、まず、①労災補償保険金の支給を受けようとする者、つまり被災者またはその遺族が、②給付の種類ごとに定められた請求書等に所定の事項を記載して、③被災者の就業していた事業所を所轄する労働基準監督署(以下、「労基署」という)に対して、申請を行います。
 ②の請求書等は労基署に備え付けられています。請求書には事業主の証明が必要な事項(雇用関係や支払給与額や災害発生状況など)がありますので、事業主に協力を求めることになります。しかし、事業主が過労死と証明しなくても請求できます(Q5参照)。さらに、請求書に添付すべき書類も給付内容によって定められていますので、詳しくは労基署の窓口に問い合わせてください。たとえば、遺族補償給付の場合には、戸籍謄本、死亡診断書などが必要です。
 申請が受理されたら、調査については労基署が職権で行いますが、労基署任せにせずに、遺族独自の聴取調査結果や資料を提出し、担当者に面会を求めて、調査の進展や方向性について常にチェックすることが重要です。労基署では3カ月程度をめどに調査をするように努力しているようですが、調査項目が多く、実際には半年以上かかるのが通常です。
 不幸にして業務外、つまり労災とは認められないとされた場合は、図1のとおり、審査請求をすることができます。この手続は、半年から2年程度かかるのが通常です。
 審査請求も棄却された場合には、再審査請求が認められています。裁決まで2年程度かかるのが現状です。その後は裁判所における行政訴訟が可能です。なお、審査請求をして3カ月を経過しても決定がされないときは、決定を待たずに再審査請求を、さらに再審査請求をしても3カ月以内に裁決がされないときは、裁決を待たずに行政訴訟を提起できます。そのときは、審査会の手続と行政訴訟が並行して進行することになります。
 それぞれの手続には、提出期限がありますので、気を付けてください。

◆公務員の場合

 公務員の場合には、国家公務員なら国家公務員災害補償法、地方公務員なら地方公務員災害補償法に基づいて補償を受けることができます。
 地方公務員の場合は、地方公務員災害補償基金の該当する支部の支部長に対して公務上の災害であるとの認定請求をするほか、手続の流れは基本的には民間の場合に類似しています(図2参照)。ただし、再審査請求については、民間の場合の延長規定(労働保険審査官及び労働保険審査会法38条1項で60日)が適用されないので、行政不服審査法53条どおり裁決を知った日の翌日から30日以内となることに注意してください。
 国家公務員の場合は、少し手続が異なります。まず省庁の補償事務主任者が職権で、または職員もしくは遺族からの申出に伴って実施機関(総理府以下の各省庁)に災害の報告を行い、直接、実施機関が公務災害の有無について判断をします。認定に不服のある場合には人事院に対して審査の申立てができます。ただし、公務上・外の認定は「行政処分」とは解釈されていないため、時効にかからない限り、審査の申立期間の制限はなく、また公務外とされたときには、国家公務員法に基づく法定補償額の支払いを求めて訴訟を提起することも可能です(例として東京地判昭和45年10月15日判例時報610号21頁)(以上について図3参照)。

2011/10/01