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労災申請(4) ── 労災申請と会社との関係

 労災申請すると、会社にはどんな不都合がありますか。また、会社が「労災とは考えない」と言って申請に協力してくれない場合はどうずればよいのでしょうか。

◆労災制度の基本趣旨と労働者の権利

 労災保険制度は労働者保護のために政府が主管している保険制度です。労働者に過失があった場合や、会社に落ち度がない場合にも原則として補償が認められます。労災保険制度は労働者の基本的権利であり、会社が反対しても労災申請はできるのです。
 会社が労災申請手続をとることや遺族や本人が用意した申請書類への押印を拒否する場合には、会社に拒否の理由を書いた文書を提出してもらったり、そのいきさつを文書としてまとめて、会社の証明印なしに遺族側で申請することになります。

◆労災申請と会社の不利益

 労災申請して労災が認定されても、給付金は国が支払うわけですから、会社の保険料があがる場合があること以外には、会社としては何ら財産的損失はありません。
 しかし、労災申請によって、遺族や労基署に会社の基本的な労務政策、たとえば労働時間の管理や健康管理体制などに外部の目が入り、その結果、労基署による指導監督などがありうるため、会社は消極的になるわけです。さらに、過労死のように社会的注目を集める事件では、会社の社会的イメージの低下を恐れる場合もあります。

◆会社に対する損害賠償

 会社にとって一番気になることは、労災とは別に、遺族が会社に対して損害賠償請求を行うかどうかでしょう。業務上と認められることは、業務と発症との因果関係があるということで、会社の責任(安全配慮義務違反)があることには直接結びつきません。しかし労災と認定されると、会社は責任を問われて損害賠償を請求される可能性が高くなるので、最初から情報を隠して労災にも協力しないという方針を取ることがあります。
 実際、会社に対する損害賠償請求権をあらかじめ放棄するなら、会社は労災申請に協力するという交換条件が出される場合すらあります。しかし、このような不公平な取引に応じる必要性はないと考えます。企業の責任は労災とは別個独立した問題ですし、仮にこのような約束をしても、会社が真剣に労災申請に協力する保証はまったくないからです。労災かどうか、仮に見解は分かれるにしても、従業員の在職死亡という事態を重く受け止め、事実の解明と再発防止に努力することが会社の基本方針であるべきです。

2011/10/01