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過労死弁護団全国連絡会議第14回総会 弁護士 山下 真(民主法律時報353号・2001年10月)

弁護士 山 下 真

 大阪過労死問題連絡会が所属し、過労死問題に関わる弁護士の全国的組織である過労死弁護団全国連絡会の第一四回総会が、去る二○○一年九月二八日(金)、二九日(土)の両日、宝塚グランドホテルで開催されました。
 この総会は、各地の過労死弁護団の一年間の活動を振り返り、過労死・過労自殺の労災認定と裁判例の到達点を確認する場として、年に一度開かれています。今年は、大阪過労死問題連絡会が開催事務局となり、事務局長の大橋恭子弁護士を中心に準備を進めてきました。入念な準備の甲斐あって、弁護士や被災者の遺族ら合わせて約一○○人が参加し、大成功のもとに終了しました。
 今回の総会には、以下の三つの特徴がありました。
 まず、脳外科の専門医である高松赤十字病院救急部次長、新宮正先生の講演でした。新宮先生はこれまでに多くの事件で過労死遺族の側からの医学意見書を作成され、意見書を作成されたほとんどの事件で勝訴判決を得られたという、我々過労死弁護団の団員としては本当に頼りになる存在です。その先生が今回は、過労死の原因疾患で最も多く問題となるクモ膜下出血、脳内出血等の各疾病の発症機序と業務起因性について、多くのスライドを用い、最新の医学知見に基づいた講義をされました。近時、裁判所から原告に対し、過重業務と発症との医学的因果関係及び発症機序について具体的かつ詳細な主張・立証を求められる傾向にあることから、我々にとって聞き逃せない講演でした。
 次の特徴は、噺家・桂福車師匠の、ノーモア・カローシの願いを込めた創作落語「閻魔の怒り」でした。一九九八年一○月、大阪で旗揚げし、「労働時間が危ない」、「世紀は組合だ」など、社会的なテーマを取り上げて、今、全国から引っ張りだこの社会派落語集団「笑工房」が、今度の全国総会のために、過労死をテーマにした創作落語「閻魔の怒り」を書き下ろしてくれ、それを、社会派落語では上方落語会きっての実力者、桂福車師匠が初めて発表してくれました。
 〈ここは、冥土の入口。過労死して予定寿命よりも早く冥土に来てしまった「亡者」たちに、「天国に送るか地獄に落とすか」を決めるため、「なぜ過労死したのか」について閻魔大王の取調べが始まった。果たして「亡者」たちの運命やいかに・・・・。〉と始まった落語が、「亡者」が閻魔大王とともに冥土から、現世で遺族が悲しむ様子をのぞき込む場面になると、会場からはすすり泣く声が聞こえました。過労死という重いテーマを果たして落語にして成功するのか、準備にあたった大阪の連絡会のメンバーにも心配する声がありましたが、そこはさすがにプロ、そうした心配は杞憂に終わりました。
 三つ目の特徴は「過労死家族の会」との交流でした。これまでの総会と異なって、弁護士だけでなく、過労死・過労自殺の遺族らが多数参加し、舞台で今の心境などを訴えました。我々若手の弁護士には遺族らの生の声を聞くことで、過労死問題の根本を考える貴重な機会となりました。 (民主法律時報より転載)

2001/10/01