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労働基準オンブズマンが一斉告訴・告発 弁護士 下川和男(民主法律時報352号・2001年9月)

弁護士 下川和男(労働基準オンブズマン事務局長)

一、本年六月一二日、過労死問題を取り組んできた大阪過労死問題連絡会を中心に「労働基準オンブズマン」を発足した(代表脇田滋龍谷大学教授)。私の事務所を事務局事務所・連絡先として相談を受け付けている。六月初旬に大きくマスコミで取り上げられたこともあって、九月に入っても六月の新聞を見たという相談者からの電話がある。
 「労働基準オンブズマン」は、電話などで相談を受け付け、相談申込書の送付、返送、担当弁護士の選任、事情聴取という手順で活動を勧めているが、八月末現在で相談申込書を送付した相談者数一○七名、相談申込書返送数三四通となっており、これまでどこに相談に行っても相手にされなかったという相談者も多い。
二、九月七日(金)、台風の影響で激しく雨が降る中、大阪労働局などに一斉告訴・告発を行った。「労働基準オンブズマン」発足後寄せられた相談や過労死事件として取り組んでいる中から、四件の告訴、三件の告発を行った。
 大阪市北区堂島に事業所のある会社で働いていた女性は、平成一一年九月一日から平成一二年八月三一日までの一年間に 所定労働時間を超えて、最高四時間三二分、一八一回にわたり、合計四四○時間二八分の時間外労働をさせたことを理由として告訴し、大阪市西淀川区にある病院で働いていた男性は、一日あたり約四時間のサービス残業について告訴し、大阪府美原町にある会社で働いていた男性の母親は、同じくサービス残業について告訴を行った。また運送会社で働いていた男性は、自らの過労災害について、会社代表取締役を業務上過失致傷で東京地方検察庁に告訴した。
 その他、中華料理店で働く調理員、バイク部品販売店で働く従業員、中古車販売会社で働く営業社員の相談を受け、弁護士名による告発を行った。
三、「労働基準オンブズマン」では、最低基準である労働基準法を遵守するということで過労死のない職場づくりに貢献できればと考えているが、告訴・告発という企業の刑事責任を追及する中で、企業経営者に労働基準法遵守を動機づけ、一方で働く人たちにも自らの命を守るために立ち上がることを、そして労働基準監督署など行政においても企業に対する監督行政を適正に行使することを求めたいと考えている。
四、「労働基準オンブズマン」発足後、様々なところで労働基準法を守る、サービス残業をなくす動きが大きく展開されている。職場の一人が声を上げれば、サービス残業をなくし、長時間労働をなくすことができる。
 今後、「労働基準オンブズマン」は、第二、第三のいっせい告訴・告発のほか、様々なユニークな活動を展開していく予定である。(民主法律時報 2001年9月号より転載)

2001/09/01