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サービス残業110番とシンポジウムに見る苛酷な日本の労働実態 弁護士 脇山 拓(民主法律時報260号・1992年12月)

弁護士 脇山 拓

 勤労感謝の日を挟んで、11月21日にサービス残業110番が、24日にはサービス残業を考えるシンポジウムが大阪過労死問題連絡会(シンポジウムは民法協、基礎経済科学研究所と共催)により開催されました。
 サービス残業110番には、前日にテレビで紹介された直後から電話がかかりはじめるほどの反響で、午前10時から終了予定時間を過ぎた午後4時ごろまでに31本の電話がかかり、この問題の深刻さをうかがわせました。
 31件の相談者は、労働者の妻からが6件、本人が12件、その他が4件でした(1件、妻と本人の両方がでたものがあるため合計が32件となっています)。予想よりも労働者自身からの訴えが多いのが目立ちました。
 労働者自身の性別では男性26名、女性5名。年齢層別では、20代が11名、30代4名、40代3名、50代5名、不明8名。若年層に問題意識が高く、中高年は会社人間となっている傾向をうかがわせます。
 職種的には、営業職が9名と最も多く、ホワイトカラーと言われる職場に問題が多いことが明らかとなりました。
 「いくら残業しても手当のみで、残業代はつかない」「これまでは月30時間分ついていた残業代が不景気で18時間に切り捨てられた。しかし、残業ほ減っていない」など深刻な実態の報告が相次ぎ、また、具体的に会社名をあげて告発を求める訴えも数件あり、今後、労基局への告発も含めて対応を検討していく予定にしています。
 24日のシンポジウムには、40名ほどが参加。労働組合の方は少なく、大学生が3名参加されました。
 当日は、私から110番の結果の報告をした後、商社、銀行、教員の職場から、労働実態の報告をしていただきました。そして、本多大阪市大名誉教授から、労働法上の問題点、時間泥棒は実に広範に行われている犯罪であることをお話していただきました。
 その後の討論では、先日労災申請をした亀井さんから、証券マンの苛酷な残業実態なども報告されました。
 最後に森岡関西大教授より、サービス残業を産み出す構造の指摘と今後サービス残業をなくしていくための提言が提案され、拍手で確認されました。
 サービス残業の撤廃は、この間の時間短縮議論の中で、政府の文書で課題として指摘されるようになりました。
しかし、労働組合側は企業別組合である制約のためか、取り組みはたいへん鈍いのが現状です。かといって、政府に任せていても決して解決はしない問題であることば明らかです。
 民法協会員のみなさんの取り組みを期待します。

1992/12/01