過労死・過労自殺を防止するための対策についての要請書(2003年2月5日 大阪労働局宛て)
2003年2月5日
大阪過労死問題連絡会
会 長 田 尻 俊一郎
労働基準オンブズマン
代表幹事 脇 田 滋
【連絡先】〒545-0051
大阪市阿倍野区旭町1-2-7
あべのメディックス2階202
あべの総合法律事務所
TEL06-6636-9361
FAX06-6636-9364
弁護士 岩 城 穣
貴労働局が「過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置等」(平成14年2月12日、基発第0212001号)等に基づき、過労死・過労自殺を未然に防止するための行政施策をより強化していることに対し、私たち両団体は大いに評価しています。
とりわけ、過労死の背後に必ずと言っても過言でなく存在するサービス残業に対し、司法処分も含め積極的に対応され、その結果サービス残業は企業犯罪との社会的意識が形成されつつあることは大きな前進です。
しかし、過労死・過労自殺の具体的事例に取り組むなか、36協定を中心に、つぎの各点についての施策を強化することが、その予防のためには不可欠だと考えます。
よろしくご検討のうえ、労働者の健康障害を防止するための施策を更に強化されることを要請するものです。
記
1.36協定の受理について
(1) 36協定の届出義務の徹底
(2) 時間外労働の限度等に関する基準に適合しない36協定につき「限度基準を遵守するよう指導する」としているが、適合しないものは原則として不受理にする(時間外労働は違法になる)方向で強く指導すること。
(3) 特別協定で「特別の事情」が生じたときは限度時間を超えて時間外労働できる旨を定めた事業場が多いが、「特別の事情」が抽象的に記載されているものが多い。
特別協定は、原則として不受理にする方向で指導するとともに、受理するときには「特別の事情」を具体的に明らかにさせ、限度時間を超えた時間外労働が、「特別の事情」があった時期のみなされているか、随時監督を行なうこと。
(4) 特別協定を年間を基準にして定めているものが多いが、恒常的長時間残業を追認することになる。なかには年間1000時間近い時間を限度としているものさえある。「特別の事情」のとき例外に認められるものであることの指導を徹底したうえ、「当該時間をできる限り最小限のものとするよう指導」されたい。
(5) 特別協定で、月換算45時間を超える時間外労働を限度としている事業場は、「月45時間を超える時間外労働が行なわれているおそれがある事業場」と判断し、「監督指導、集団指導等を実施する」こと。
(6) 36協定は労基法第106条に基づき各作業所の見やすい場所に掲示し、労働者に周知させることを徹底するよう指導すること。
(7) 36協定の実態調査を行なうこと。
2.労働時間の把握について
(1)「始業・終業時間の確認および記録の方法は」原則として客観的な方法(タイムカードやICカード等)によることを徹底すること。
(2)自主申告制の下でサービス残業が生じてきたことを考慮したうえ、自主申告制によってしか労働時間の把握が困難な特段の事情がある事業場のみで例外的に認めるよう指導すること。
(3)自主申告制の事業場の労働者や家族からサービス残業についての申出があったときは、適正な監督を直ちに実施すること。
3.健康診断結果の事後措置等について
(1) 異常所見があった労働者については、事業者は医師から意見を聴取する義務あることが労安法で定められているが、これが実施されていない事業場が多い。この義務の履行がなされるよう指導すること。また、意見を聴取する医師は当該労働者の労働内容、労働時間についての調査をなしたうえ、意見を述べるよう指導すること。
(2) 二次健康診断等給付を受けられる要件は、①血圧検査②血中脂質検査③血糖検査④BMI(肥満度)の4項目について異常所見が認められることとしている。要件が厳しすぎるためその給付を受けた労働者は少ないと聞いている。この要件を緩和、あるいは弾力的運用をなされたい。
(3) 異常所見のある労働者の治療のための時間を確保するよう、事業者に対し指導されたい。
2003/02/05