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運転業務の負担の過重性は明らかにされている!

 夫はタクシーの運転手でしたが不況で水揚げ(運賃収入)があがらないため、入庫時間を遅らせたり休日勤務する中で、くも膜下出血で死亡しました。夫は生前「運転の仕事はきつい」と口癖のように言っていました。運転の仕事の負担はどのような点にあるのでしょうか。

◆新認定基準におけるノルマの評価

 タクシー、バス、トラックなどの自動車運転手の過労死は、他の業種と比べて申請件数が比較的多く、多くの労災認定がされています。
 自動車運転労働については、産業医学上、次のような労働負担があることが指摘されています。

◆運転労働自体の負担

 まず、運転労働自体の負担として、次の点があげられます。
 ① 運転操作は自動車の移動に伴いさまざまな条件が移り変わっており、天候、渋滞、明暗の条件が刻一刻と変化する中で、一瞬も目を離せない連続的制御を要する作業をしており、持続的な精神的緊張という負担を強いられる。
 ② 運転席などの狭い物理的空間に強く拘束されており、固定した座位姿勢を保持しなければならないうえ、操作制御パターンは同じ状況の繰り返し的要素も持っている。生理的・心理的拘束と、単調労働に起こりやすい飽和感と、それによる眠気との葛藤など、強いストレスと長時間の姿勢維持のための筋疲労を来しやすい。
 ③ 日照、振動、騒音、暑熱、寒冷など、周辺環境の変化の影響を受けやすいうえ、不則の事故の危険性、すなわち生命の危険性を意識しながら走行しており、肉体的・精神的ストレスによる疲労はきわめて大きい。

◆運転手の労働条件からくる負担

 さらに自動車運転手の労働条件の面からの負担として、次の点があげられます。
 ① 不規則、深夜の乗務が多く、深夜交替制労働において述べた負担が加わり、家庭での休息も家族の生活パターンと合わず、劣化したものになる。
 ② 長時間乗務が多く、休憩も短縮あるいは欠如することが多い。
 ③ 乗客や積荷を定刻どおりに安全・適切に輸送することについての責任が、運転手個人にかかることでの心理的重圧がある。
 ④ タクシー、トラックでは歩合給制度が多く導入されており、ノルマに追われて、無理な長時間、長距離運転に従事する。

◆綿密な調査の必要性

 以上のように、運転労働自体の過重性の特性は、科学的・社会的に明らかにされているので、認定にあたっては、できる限り具体的な事実を明らかにすることが重要です。運転日報、タコグラフなどは必ず入手し、走行距離、走行場所、走行時間、道路状況など、できる限り運転の状況を詳しく再現するように努力しましょう。
 「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平成元年労働省告示第7号、平成12年12月25日労働省告示第120号)はタクシー・バス・トラック等の運転手の運転労働について、最大拘束時間、最大運転時間、休息時間等についての基準を定めていますが、この基準を逸脱した運転業務が日常的に行われていれば業務上と判断する可能性が高いでしょう。

◆新認定基準の活用

 新認定基準は、「不規則な勤務」「拘束時間の長い勤務」「交替制・深夜勤務」「精神的緊張を伴う業務」等について、業務の過重性の具体的評価にあたっては十分検討することとしています。
 これらの負荷要因は、運転労働にも共通しています。これらの質的過重性も強調しましょう。

2011/10/01