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増える労災認定・長時間労働の抑制を【琉球新報】

 働き過ぎで死亡する過労死や死亡には至らないが後遺症があるケースの労災認定件数が急増していることが分かった。

 厚生労働省の二〇〇二年度上半期(四月?九月)速報値によると、既に百十五件に達し、過去最多だった昨年度(百四十三件)を大きく上回るペースで増えており、深刻な事態となっている。

 認定基準を緩和したことが大きな理由だというが、基準を変えていない過労が原因の自殺や、うつ病などの精神障害の労災認定は半年間で四十四件あり、既に昨年度の七十件の半分を上回っているのが実情である。

 長期間にわたる不況とリストラが過労死に大きな影を落としているといえよう。

 職場の厳しさが増すなか、長時間労働が大きな負担として労働者にのしかかっているという背景がある。

 半年間単位で統計をとっている東京労働局の調査でも明らかだ。同調査によると、管内の労基署の過労死認定は昨年度上半期の五件から本年度上半期は十七件に増加。このうち十一件が新基準による認定で、月平均の残業時間が九十二時間四十四分、最も長い人は百二十七時間三十分にも上っていた。

 長時間労働に伴う過労死を未然防止するため、厚生労働省は、今年二月、従業員の二カ月以上の残業の平均が八十時間を超えた場合などに、産業医の判断に基づき健康診断を受けさせるよう事業主に求める方針を決め、都道府県労働基準局に通達を出しているものの、現実はそれ以上に厳しいようだ。

 昨年は、仕事中に発生した労災による従業員の死傷事故を労働基準監督署に報告せず、労働安全衛生法違反で書類送検された「労災隠し」が百二十六件と過去最多に上るなど、まさに労働者は四面楚歌の状況にあるといえよう。

 企業にとって最も重要なことは「働く人々の健康管理」である。そのことを念頭に置き、残業の抑制、心のケアに力を入れてもらいたい。

2002/11/07