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日本労働弁護団主催・過労死弁護団協賛
シンポジウム「日本版エグゼンプションを許さない」集会アピール

1 労働時間規制は、本来、働く人とその家族が健康で文化的な生活・人たるに値する生活を送るための最低基準を示すものとして憲法上も絶対に必要な公的規制である。また、労働者間の労働条件切り下げ競争による労働条件の悪化を防止するためにも、あるいは、企業間公正競争の確保の観点からも重要な規制である。今日、正規・中堅労働者を中心に長時間労働がますます蔓延し、顕著となっている一方、不安定雇用労働者が3分の1を超え、これらの中には短時間労働者もいるが正規並みに働く者、さらには生活のためのダブルジョバーもいて、労働時間の二極化が進んでいる。労働時間の適正化は雇用状態の改善にも資するものである。

2 わが国は、労働基準法が最低基準としての法定労働時間等を定め、適用除外の範囲を厳格に画して労働時間を直接規制している。しかし、大企業においても、中小・零細企業においても労働基準法は遵守されておらず、長時間労働、不払残業、過労死・過労自殺、職場における精神障害は増加の一途をたどっている。また、長時間労働は、当該労働者のみならず、育児・介護・教育等の家庭問題や地域社会等との係りなど多面的な問題を生じさせている。
  しかるに、「少子化対策」においても、ことに正規・男性労働者の労働時間短縮の視点は希薄であり、時短促進法が事実上廃止される等、時間短縮問題は今日、重要な課題と位置づけられていない。
このような働く人の生命・健康・家庭生活を省みない働かせ方が蔓延している企業社会を放置したままで、政府・経済界は、さらなる労働時間規制の緩和・撤廃をもくろみ、厚生労働省は労働政策審議会労働条件分科会の十分な議論なしに、適用除外の範囲の拡大を柱とする労働基準法の「改正」に向けてひた走っている。

3 厚生労働省が提示した「自律的労働時間制度」は、労働基準法の適用による保護が必要な企業の中間管理職層、専門的・技術的労働者層を法の保護の埒外に置くものである。これらの労働者は、過労死・過労自殺が急増している層であり、その働き方を分析すれば、適用除外とするどころか、厳格な労働時間規制こそが必要なことは明らかである。しかも、現在、提案されている制度導入の要件は、何らの歯止めになりえない曖昧なものであり、いったん導入されてしまえば、企業の都合によってとめどなく拡大する危険性が極めて高いと危惧せざるを得ない。
  「自律的労働時間制度」は、企業の利益追求の自由だけを尊重しようとするものといわざるを得ず、憲法27条・労働基準法の趣旨・理念を改変するものである。
  わたしたちは、労働者の長時間労働や不払労働を容認、拡大させて、企業の利潤追求のために労働者とその家族に犠牲を強いるだけの労働時間規制の緩和・撤廃に断固として反対し、21世紀にふさわしい人間らしい労働時間規制を求めるものである。 

2006年6月13日
シンポ「日本版エグゼンプションを許さない」参加者一同