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過労死・過労自殺の意味と発生件数、認定状況

「過労死」「過労自殺」という言葉をよく耳にしますが、正確にはどのようなものをいうのでしょうか。また、毎年どれぐらいの人が過労死・過労自殺しているのでしょうか。そのうちどの程度が労災として認定されていますか。

◆過労死の意味

 過労死とは、働きすぎによって健康が損なわれ、場合によっては死に至るという現象をいう社会用語であり、法律用語や医学用語ではありません。厚生労働省の認定基準に沿っていえば、「過労死」とは「日常業務に比較して特に過重な業務に就労したことによる明らかな過重負荷を発症前に受けたことによって発症した、脳・心臓疾患」であり、「過労自殺」とは「客観的に当該精神障害を発病させるおそれのある業務による強い心理的負荷」により精神障害を発症しての自殺です。
 また、医学的に「過労死」を説明すれば、「過労により人間の生体リズムが崩壊して、生命維持の機能が破綻をきたした、致命的な状態」であり、脳出血、くも膜下出血、脳梗塞などの脳血管疾患や、心筋梗塞、心不全などの虚血性心疾患、さらには過労から生ずる喘息発作のほか、広義では過労自殺も含みます。現代日本社会の病理的な長時間労働が労働者にもたらすものとして、社会的に定着した用語であり、また国際的にも「KAROSHI(Death from Overwork)」として紹介されています。

◆過労死の発生件数

 循環器系疾患による死亡者は毎年30万人程度であり、そのうち就労者にとって生活上の過重負荷は仕事からくることが多いことを考えると、少なくとも数万人が過労死していると考えられます。
 自殺は平成13年には4年連続で3万人を大きく超え、うち勤務問題を理由とするものが1756人に達しています(警察庁統計「平成13年における自殺の概要資料」より)。

◆認定状況

 過労死・過労自殺の労災認定の状況と内訳は後掲表1~表5のとおりです。
 過労死の認定件数、認定率は平成7年の旧認定基準改訂後やや増加したものの、その後は横ばいです。ただし、平成13年12月の認定基準の改正後、疲労の蓄積をもたらす長期間の過重業務による過労死事案も救済の対象となったため、今後の認定数の動向が注目されます。過労自殺については平成8年3月の電通過労自殺死事件東京地裁判決後、請求件数が急増しています。しかし、いずれもきわめて狭き門である状態は変わっていません。

◆今後の動向

 過労自殺についての判断指針(Q14以下参照)が発表されたことにより、過労自殺の認定の門戸も広がりました。しかし、今後認定件数が増加するかどうかは、厚生労働省が職場の労働環境の改善と、被災者・遺族の救済の立場で積極的に運用するかどうかにかかっています。
 近年、不況による残業時間の減少などのため、年間総労働時間は減少傾向にあるようです。しかし、一方では人員削減のため、それまで2人でしていた仕事を1人に割り当てられる中で過労死したとの「リストラ過労死」の相談も増えています。「仕事しろ、残業するな、成果出せ」と、無理を強いられる不況下の職場の中で、過労死は決して減少していないというのが、私たちの実感です。労働実態の立証が難しいなど、認定の壁は厚いものの、わずかながら認定の門戸が広がってきていることや、審査請求などの不服審査や訴訟によって逆転勝利したケースも数多くありますので、最後まであきらめず道を切り拓いていってほしいというのが私たちの願いです。

【表1】 脳血管疾患および虚血性心疾患等(9号事案)の労災補償状況 (件)

区分 \ 年度 S63
年度
H元
年度
H2
年度
H3
年度
H4
年度
H5
年度
H6
年度
H7
年度
H8
年度
H9
年度
H10
年度
H11
年度
H12
年度
H13
年度
H14
年度
H15
年度
H16
年度
H17
年度
H18
年度
H19
年度
H20
年度
脳血管
疾患
請求
件数
480 538 436 404 328 277 289 403 415 349 309 316 448 452 541 486 541 608 634 642 585
認定
件数
14 18 21 24 11 19 23 43 49 46 47 49 48 96 202 193 174 210 225 263 249
虚血性
心疾患等
請求
件数
196 239 161 151 130 103 116 155 163 190 157 177 169 238 278 256 275 261 304 389 304
認定
件数
15 11 12 10 7 12 9 33 29 27 43 32 37 47 115 121 120 120 130 129 128
合計 請求
件数
676 777 597 555 458 380 405 558 578 539 466 493 617 690 819 742 816 869 938 931 889
認定
件数
29 30 33 34 18 31 32 76 78 73 90 81 85 143 317 314 294 330 355 392 377
備考                 H7・2・1
認定基準
一部改正
        H12・7・17
東京海上事件
最高裁判決
H13・12・12
認定基準改正
             

注) 1 本表は、労働基準法施行規則別表第1の2第9号の「業務に起因することの明らかな疾病」に係る脳血管疾患及び虚血性心疾患等(「過労死」事案)について集計したものである。
   2 認定件数は当該年度に請求されたものに限るものではない。

【表2】 精神障害等の労災補償状況 (件)

区分 \ 年度 S63
年度
H元
年度
H2
年度
H3
年度
H4
年度
H5
年度
H6
年度
H7
年度
H8
年度
H9
年度
H10
年度
H11
年度
H12
年度
H13
年度
H14
年度
H15
年度
H16
年度
H17
年度
H18
年度
H19
年度
H20
年度
精神障害 請求件数 8 2 3 2 2 7 13 13 18 41 42 155 212 265 341 447 524 656 819 952 927
認定件数 0 1 1 0 2 0 0 1 2 2 4 14 36 70 100 108 130 127 205 268 269
うち自殺
(未遂を含む)
請求件数 4 2 1 0 1 3 5 10 11 30 29 93 100 92 112 122 121 147 176 164 148
認定件数 0 1 1 0 0 0 0 0 1 2 3 11 19 31 43 40 45 42 66 81 66
備考                   H8・3・28
電通事件
1審判決
    H11・9・14
判断指針制定
H12・3・24
電通事件
最高裁判決
               

【表3】 「過労死」等として認定された事案の分析(職種別)

職種 \ 年度 平成9年度 平成10年度 平成11年度 平成12年度 平成13年度 平成14年度
1 専門技術職 10 10 12 15 25  
2 管理職 27 26 20 20 26  
3 事務職 14 21 15 16 18  
4 販売職 1 3 5 3 5  
5 サービス 0 3 2 3 6  
6 運転手等 9 7 12 12 30  
7 技能職 10 18 8 6 20  
8 その他 2 2 7 10 13  
合  計 73 90 81 85 143  

【表4】 「過労死」等として認定された事案の分析(年齢別)

年齢 \ 年度 平成9年度 平成10年度 平成11年度 平成12年度 平成13年度 平成14年度
29歳以下 2 5 4 4 8  
30~39歳 14 13 12 17 33  
40~49歳 23 32 23 28 38  
50~59歳 27 37 33 30 49  
60歳以上 7 3 9 6 15  
合  計 73 90 81 85 143  

【表5】 「過労死」等として認定された事案の分析(性別)

性別 \ 年度 平成9年度 平成10年度 平成11年度 平成12年度 平成13年度 平成14年度
72 81 78 82 133  
1 9 3 3 10  
合  計 73 90 81 85 143  
表1~表5の出典:厚生労働省発表資料

(参考)精神障害(自殺)の労災補償状況(旧版の「表2」)

  請求件数 認定件数 備考
83(昭和58)年度 3(2) 1(1) 設計技術者
84(昭和59) 13(3)  
85(昭和60) 6(4)  
86(昭和61) 2(2)  
87(昭和62) 1(1) 騎手(特別加入者)
88(昭和63) 8(4)  
89(平成元) 2(2) 1(1) バス運転手
90(平成2) 3(1) 1(1) 溶接工
91(平成3) 2(0)  
92(平成4) 2(1) 潜水工・自動車運転手
93(平成5) 7(3)  
94(平成6) 13(5)  
95(平成7) 13(10) 1(3) フォークリフト運転手
96(平成8) 18(11) 2(1) クレーン運転手・飲食店店員
97(平成9) 41(30) 2(2) 技術研究職・食品製造工
98(平成10) 42(29) 4(3) 医師・営業職・技術員兼自動車運転者・自動車運転者
合  計 176(108) 15(9)  

注)1 本表は業務による精神的負担が原因として請求されたものの集計で、傷病の
   療養中に生じた精神的障害等は含まない。
  2 請求件数欄及び認定件数欄の( )内は、自殺(未遂を含む)に係る数である。
  3 認定事案は当該年度に請求されたものとは限らない。
  4 統計は1983年度より開始された。
   [資料出所]表1・表2とも労働省(1999年3月現在)

2011/10/01