過労死Q&A

HOME > 過労死Q&A > サービス残業是正の通告は匿名でもできる!

サービス残業是正の通告は匿名でもできる!

 夫は、新製品の開発業務に携わっていますが、毎日帰宅は午後11時や12時、ひどいときは午前2時、3時です。会社は課の全員から残業は月15時間しかしていない旨の確認書を提出させ、残りは残業代が出ません。夫は疲れ果て、食欲もなく、「もう来年までもたないかもしれない」と言っています。このままでは倒れてしまわないか、不安です。妻として、私にできることはないでしょうか。

◆三六協定

 労基法は、1日8時間、週40時間を超えて労働させてはならないとしています(労基法32条)。使用者と過半数の労働者の代表または労働組合と協定した場合には、これを超えて労働させることができますが(労基法36条、俗に「三六協定」と呼ばれます)、その場合でも、協定で延長できる時間(限度時間)は一週間で15時間、1カ月で45時間、1年間で360時間までとなっています(平成10年12月28日労働省告示第154号。Q64参照)。
 したがって、36協定なしに1日8時間、週40時間を超える労働をさせ、また三六協定があってもその協定時間を超えて労働させることは違法であり、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる犯罪とされています(労基法119条1号)。

◆サービス残業を是正させるために

 このような違法なサービス残業を是正させる効果がある方法として、次の三つがあります。
 ① 労働行政の機関としての労基署に指導・監督を求める申告(労働者本人が行うもの。労基法104四条)・通告(それ以外の第三者が行うもの)
 ② 司法警察員としての労基署に刑事事件として捜査・送検を求める告訴(労働者本人が行うもの。刑事訴訟法230条)・告発(それ以外の第三者が行うもの。刑事訴訟法239条)
 ③ 労働者本人がサービス残業代を請求する民事訴訟
 あなたが、会社への刑事処分のペナルティや、サービス残業代の取立てよりもサービス残業の是正そのものに主眼を置く場合は、第三者として通告を行うのが効果的だと思います。
 もしご主人にも知られたくない場合や、反対された場合は、匿名で通告することもできます。労基署は事情を話せば、あなたが通告したことをご主人や会社に知られないように配慮しながら調査・指導をしてくれます。もちろん、その場合でも、資料や情報の提供など、労基署に対してできる限り協力することが必要です。
 大阪のある塗料メーカーで、ご質問のようなサービス残業が行われていた事例で、ある労働者の妻が労基署に通告し、その後約2カ月間にわたって夫の帰宅時間をモニター調査するなどして協力した結果、労基署が会社に是正勧告を出し、サービス残業を是正させ、過去八カ月分の残業手当てを課の全員に支払わせたケースがあります。

2011/10/01