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企業責任を追及する意義

 過労死で労災認定を受けるのとは別に、企業責任を追及する意義について説明してください。

◆遺族の救済

 労災保険制度に基づく補償(過労死・過労自殺の労災認定に基づく給付)においては、規定による金額が一時金や年金の形で支払われますが、被災者の被った全損害が支給対象となるわけではなく、慰謝料も含まれません。したがって労災保険で不十分な場合は、直接会社に請求することになるわけです。
 このように企業責任追及の重要な意義として、遺族の救済があげられます。

◆企業責任の明確化

 それと並んで重要な意義は、企業としての責任の明確化にあると言えます。Q5で述べたとおり、労基署の労災認定は企業の責任(過失)を前提としていません。労基署においては、当該労働者の死亡と業務(働きすぎ)との間には因果関係があったとするのみで、過労死を発生させた企業の責任を認定したものではないわけです。
 そういった関係から労災認定が出たにもかかわらず、「会社は知らない」「本人が勝手に働いただけ」などと言い出す企業も出てくるわけです。そのような場合、なぜ過労死が発生したのか、その責任の所在はどこにあるのかを明確化させるための重要な手段が、企業責任追及という方法です(追及のための具体的な方法については、Q58で述べます)。
 実際の裁判所の和解事例ですが、当初「本人が勝手に働いた」と言っていた企業に対して、損害賠償請求の裁判を提起して闘っていたところ、最終的には会社の安全配慮義務違反を認めさせたうえで、社長が遺族に謝罪する旨の条項を入れさせることができた例もあります(大阪地裁平成6年11月17日和解〔ベアリング工場班長過労死事件〕)。

◆過労死予防・労働条件向上等

 前述の例のように、遺族が泣き寝入りせず、積極的に企業責任を追及することによってこそ、企業に対しても真の反省をうながし、今後同種の過労死を発生させないための対策(労働条件向上等)を講じさせることが可能となります。そしてそのことが過労死を許さないとする多くの人々の運動と結びつき、労災保険行政のあり方にも大きな影響を与えてきているのです。
 以上に述べたとおり、企業責任追及の意義はきわめて大きいものと言えます。

2011/10/01