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過労死の認定基準(3)──長期間の過重業務

 新認定基準で加えられた蓄積疲労について説明してください。

◆長期間の過重業務(Q9要件③)

 「特に過重な業務」の考え方、また、同僚労働者についての考え方は、Q9要件②(Q10参照)と同じです。また、対象となる期間は、おおむね発症前の六カ月間をいい、それより以前の業務については、付加的要因として考慮することとしました。

◆過重かどうかの具体的な判断方法

 ① 負荷要因を具体的に判断する点は、短期間の過重業務の場合と同じです。
 ② 労働時間の目安については、疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因は労働時間であるとして、その評価の目安を次のように定めました。
  a 発症前1カ月間ないし6カ月間にわたって、1カ月あたりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症の関連性が弱いが、おおむね45時間を超えて時間外労働が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できること。
  b 発症前1カ月間におおむね100時間以上、または発症前2カ月ないし6カ月間におおむね80時間以上の時間外労働時間(週40時間を超える労働時間)があれば、業務との関連性が強いと評価する(具体的にはQ35参照)。
 この労働時間の基準は、あくまでも「目安」とされていることから、前記時間を超えない事案であっても、後記のような、その他の負荷要因を総合判断して、過重性があったと認められることはあります。

◆新認定基準の問題点

 この認定基準の改正により、従来認められてこなかった「蓄積疲労」による過労死が認められることになり、救済の枠組みは、大きく拡大しました。
 また、過重性判断の主観的基準として平均的な労働者に加えて、基礎疾病を有していたとしても日常業務を支障なく遂行できる労働者も加えたことや、病気の発症の原因となるリスクファクターの評価を限定したことも、救済の方向に大きく前進しました。
 さらに、労働時間の目安を定めたことや、業務の過重性を判断するうえでの負荷要因を具体的にしたことで、労基署での調査が進められやすくなり、早期に認定されるようになりました。
 他方、労働時間の目安が、その目安を満たさない事案にとっては、事実上の「足切り」になるおそれがあることや、労働時間を重視しすぎるあまり、それ以外の負荷が軽視されるおそれもあり、労働時間以外の要素の負担について、具体的に述べる必要がより高くなったといえます。

2011/10/01