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過労死の認定基準(1)──新認定基準の内容

 過労死を認定するにあたっては、基準があると聞きました。その基準とは、どのようなものですか。また、最近、その基準が変更されたと聞いたのですが、どのように変更されたのでしょうか。

 過労死の事例について、厚生労働省および人事院等はそれぞれ通達という形で「認定基準」を設けています。それらは、細かい差異はありますが、基本的な考え方はほぼ一致します。平成13年12月12日に、厚生労働省は「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」(基発第1063号労働基準局長通達)という通達を出し、これまでの基準をあらためた新基準(いわゆる「新認定基準」。巻末・参考資料①)が策定されました。以下、これに基づいて説明します。
 なお、国家公務員につき人事院は、「心・血管疾患及び脳血管疾患等業務関連疾患の公務上災害の認定指針」、地方公務員につき地方公務員災害補償基金は「心・血管及び脳血管疾患等の職務関連疾患の公務上災害の認定について」を定めています。

◆取り扱う疾病の範囲

 認定基準は、業務上の過重負荷によって発症しうる脳・心臓疾患を次の疾患に限定しています。
 ① 脳血管疾患  脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症
 ② 虚血性心疾患  心停止(心臓性突然死を含む)、狭心症、心筋梗塞症、解離性大動脈瘤
 これ以外の疾病がただちに労災として認められないわけではありませんが、認定基準により判断される疾病としては右のものに限定されています。なお、不整脈による突然死は、心停止に含めて取り扱うこととされています。

◆労災認定の基本的考え方

 業務によって急激な血圧変動や血管収縮が引き起こされ、それによって基礎疾病(私病でもよい)がその自然経過を超えて著しく増悪し、発病に至った場合に、労災と認められます(図5参照)。

◆認定要件

 前記疾病を対象として、次の①から③のいずれかによって、発症前に明らかに過重負荷を受けたという要件を満たさなければなりません。
 なお、「過重負荷」とは、医学経験則に照らして、脳・心臓疾患の発症の基礎となる血管病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させ得ることが客観的に認められる負荷をいいます。
 ① 発症直前から前日までの間において、発症状態を時間的および場所的に明確にし得る異常な出来事(業務に関連する出来事に限る)に遭遇したこと
 ② 発症に近接した時期において、特に過重な業務に就労したこと(短期間の過重業務)
 ③ 発症前の長期間にわたって、著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したこと(長期間の過重業務)
 このように、新認定基準は、それまでの「日常業務に比較して、特に過重な業務に就労したこと」という認定要件を、②、③の短期間の過重業務および長期間の過重業務とに分けて、後者については、発症前おおむね六カ月間を評価期間とすることとして、いわゆる蓄積疲労を原因とする場合も過労死となる場合があることを認めました。

2011/10/01