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労災認定急増 過労の予防策が先決だ【沖縄タイムス】

 仕事による過労やストレスが原因の一つとなって、脳・心臓疾患、呼吸器疾患、精神疾患など発病し死亡する。いわゆる過労死である。

 それが一家の働き手であった場合はなおさら、遺族への早急な救済の一つとなるのが労災認定だろう。

 その労災認定件数が、ことし四月から九月までの半年間で、過去最多だった昨年度を上回るペースで増えているという。

 昨年度の百四十三件に対し、ことし半年間では百十五件だ。死亡には至らないが重い後遺症を残すケースも含めている。

 厚生労働省は昨年十二月、七年ぶりに労災認定基準を改定した。増えた背景にはこの基準緩和もある。

 改定のポイントは、蓄積疲労の考え方を取り入れたことである。

 判断の対象期間をそれまで発症前一週間程度だったのに対し、六カ月前まで拡大した。倒れる直前の一週間内に休みを取っていれば門前払いされていた旧基準に比べて大幅な緩和だ。

 月平均の残業時間が八十時間を超えるか、発症前一カ月で百時間を超える場合も、業務との因果関係が強まるとみている。

 労働時間の長さだけではなく、不規則な勤務や深夜勤務、精神的緊張を伴う業務など六つの就労状況も判断の材料に加えた。

 もっともなことだらけだ。緩和は当然だったとしても、実態を追認するのでは後手後手に回っているとしかいいようがない。

 確かに労災認定には一定の理屈が必要だろう。不況やリストラが過密労働を深刻化させてもいる。

 求められているのは、行政や雇用者側が過労死などを防ぐ十分な手立てである。

 仕事の責任や負担を特定の人、部署に過剰に背負い込ませない。そうした労務管理も必要だろう。

 心や体の不調を訴える場として、産業医や地域の産業保健センターを積極的に活用するのも大切である。

2002/11/07