過労死に関する資料室

HOME > 過労死に関する資料室 > 過労死問題についての社説・論説 > 研修医の労災認定 各病院は労基法順守を【沖縄タイムス】

研修医の労災認定 各病院は労基法順守を【沖縄タイムス】

 大阪府の私立医科大学病院で一九九八年、研修医だった森大仁さん=当時(26)=が死亡したのは長時間労働による過労が原因だったとして、北大阪労働基準監督署が労災認定した。研修医の過労死が労災と認定されたのは初めてという。

 関係者によると、森さんは亡くなる前の約二カ月半、早朝から夜間まで連日長時間働いていた。社会保険、雇用保険もなく最低賃金にも満たない給料で連続三十時間という過酷な勤務だったという。

 遺族は労災認定を申請するとともに、大学病院に対しては損害賠償を求める民事訴訟を起こした。昨年、大阪地裁堺支部は「研修医は労働者にあたる」との遺族の主張を司法として初めて認め、大学側に遺族共済年金などの支払いを命じている。

 森さんの遺族の労災申請、民事訴訟は県内でも大きな反響を呼んだ。

 救急医療の最前線である県立病院では多くの研修医が先輩医師とともに診療に当たっている。医師の勤務状況は極めて厳しい。当直医は朝から翌日夕方までの三十時間以上の激務となる。当直続きで体調を崩したり、過労で倒れた医師もいるという。

 県立中部病院では、二十年以上も前から臨床研修に世界的にも評価の高い米国型の実務研修を取り入れている。全国に先駆けた救急医療システムとして知られている。

 だが、県立病院では三百二十八億円の累積赤字があり、その解消が求められている。限られたスタッフで救急医療や高度医療などを支えている。県公務員医師管理職員労働組合によると、「救急医療にかかわる医師の労働条件の厳しさは並外れたものがあり、いつ倒れてもおかしくない状況」という。

 これまで医師は「聖職」として激務も当然視される傾向があった。しかし過労になると医療過誤にもつながりかねない。医師自身の健康を守り、患者が安心して診療を受けるためにも、すべての病院が労働基準法を順守する必要がある。

2002/10/02